27歳・宮原健斗が君臨 色とりどりの全日本プロレス
2014年に秋山準選手が社長になってから初の全日本プロレスリング両国国技館大会が11月27日に開催されました。午後3時試合開始でメインイベント終了が午後8時半ごろ。5時間半のロング興行となりました。
第4試合、ザ・ファンクスのおなじみのテーマ曲「スピニング・トー・ホールド」が鳴り響くとざわめきだす場内。テンガロンハットをかぶり、ブルロープをしっかり握ったドリー・ファンク・ジュニア選手が一歩一歩あゆみを確かめるように入場してきます。ゆっくりとリングのまわりを一周するドリー選手めがけて、最前列にワーッと押し寄せるお兄さんやおじさんたち。大企業で役職を務めていそうなちゃんとした身なりのおじいさん世代のファンも子供のようなはしゃぎぶりです。後ろの方のマス席でその光景を見ていて、ドリー選手が長いキャリアでどれだけの少年たちを熱狂させてきたかが伝わってくるようでした。
75歳のドリーさんが68歳のザ・グレート・カブキ選手と殴り合って喝采(かっさい)を浴びた試合もあれば、全日本の新人レスラー野村直矢選手が同い年のライバル、デビュー半年余りの野村卓矢選手(大日本プロレス所属)と熱い闘いを見せたオープニングマッチもありました。全日本ひとすじの選手、戻ってきた選手、かつて所属した選手。過去から現在、未来へと続く全日本の歴史の「タテ軸」がひとつの大会に詰まっていました。
今の全日本にはタテだけではなく「ヨコ軸」方向の広がりもあります。この日は全日本を中心として、勢いのあるDDTや大日本プロレス、KAIENTAI-DOJO、広島を拠点とするローカル団体ダブプロレスまで、大小さまざまな団体のレスラーをいちどに見られる楽しみもありました。WRESTLE-1からはプロレス界で話題をさらう黒潮"イケメン"二郎選手も登場し、両国の空気を我が物のように大暴れしていました。
新日本プロレスリングのビッグマッチのように、所属選手や提携する海外団体のプロレスラーで固めた純度の高いハイレベルな攻防ももちろん見応えがありますが、全日本の「次は何が出てくるんだろう」という福袋のようなわくわく感、おおらかさも魅力的です。日本に大小合わせて何十団体もあるなかで、現状ではなかなかすべての情報を追いきれません。そんな各団体のトップ戦線で闘うプロレスラーが全日本のリングに集まるぜいたく感。そこから各選手の所属団体を深掘りしていくファンも多いのではないでしょうか。
そんな色とりどりでボリュームたっぷりの両国大会のメインを締めたのは、チャンピオンの宮原健斗選手に諏訪魔選手が挑んだ三冠ヘビー級王座戦です。27歳の若き王者、宮原選手は佐々木健介選手(引退)の団体、健介オフィスでデビュー。現在、プロレスリングNOAHでGHCヘビー級王座に君臨する中嶋勝彦選手とともに切磋琢磨(せっさたくま)し、3年前に全日本プロレスに闘いの場を移しました。
諏訪魔選手の負傷欠場により、今年2月、三冠ヘビー級王座を歴代最年少で戴冠。この日までに5度の防衛戦を乗り越えた手ごたえからか、入場時から自信に満ち満ちたまばゆいオーラを放っていました。中盤は諏訪魔選手の攻め手が勝っていた印象でしたが、追い込まれているというよりは宮原選手の「すべて受けきったうえで勝つ!」という気迫が伝わってくる攻防でした。終盤は宮原選手があらゆるバリエーションのブラックアウト(膝蹴り)を繰り出し、最後は切り札のシャットダウンスープレックスで決着。5時間を経てのメインイベントを完勝で締めくくりました。
6度目の王座防衛に成功した宮原選手は、すでに連続防衛記録更新というさらなる野望を見据えているようです。今回敗れた諏訪魔選手も、年明けに盟友ジョー・ドーリング選手の復帰もありこれからさらに勢いを増していくことと思います。全日本プロレスは来年8月の次の両国大会開催も発表しています。2017年は飛躍の一年になるはずです。
今回のイラストは宮原選手のフィニッシュ技、シャットダウンスープレックスです。相手の腕を封じて放つ強烈な2段階式のジャーマン・スープレックス・ホールドは説得力抜群です。周りの植物は冬に葉が赤くなるヒイラギナンテン。つやつやしてトゲトゲして華やかな宮原選手をイメージしました。花言葉は「激しい感情」「激情」など。
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