旅行保険、割安に 補償見直しやカード活用

成田空港の出発ロビー
成田空港の出発ロビー

年末年始や卒業シーズンを控え、海外旅行を計画している人も多いだろう。旅行中の病気やけが、盗難に備える旅行保険に入れば心配は減らせるが、最近は高齢化に伴う事故率の上昇や円安傾向で保険会社の採算が悪化。このため保険料をじわり引き上げている。旅行保険は「保険料が高い」と敬遠しなくても、補償の範囲を絞るなどの対応をすれば、お得に旅行を楽しめるかもしれない。

海外旅行保険は旅行中にけがや病気になった際の治療費を補償する損害保険。入院先に家族が駆けつけた際の渡航費のほか、携行品の盗難や破損、航空機の欠航などで生じた負担を肩代わりするなど補償の範囲は幅広い。

8~16%値上げ

最近は旅行者の高齢化で事故率が上がったほか、外国為替市場での円安傾向で、保険会社が海外の医療機関に支払う費用が膨らんでいる。ジェイアイ傷害火災保険の調べでは、保険の加入者に保険金が支払われた割合を示す「事故発生率」は2004年度を底に上昇。15年度は前の年度から0.07ポイント悪化の3.60%となり、調査を始めた02年度以降で3番目に高かった。

このような状況を受け、東京海上日動火災保険や損害保険ジャパン日本興亜などの大手が昨年10月以降に保険料を平均8~16%程度上げた。7日以内の短期間の保険料は同水準か安くなったが、長期の観光や留学では上げ幅が大きい。

たとえば保険会社A社の場合。旅行会社や空港内のカウンターで加入手続きする旅行保険は3日間の契約では4640円と改定前と変わらないのに対し、30日間では2万1680円となり、1万8640円から16%高くなった。

少しでも保険料を抑えるため、最近では代理店に支払う手数料がかからない分、保険料を割安にできるインターネット経由での保険加入が人気を集めている。出発の当日でも自宅や移動中の車内で簡単に手続きできるという利点もある。補償の内容が多少異なるため単純には比べられないが、保険会社B社で7日間の保険に入る場合、店頭では4800円程度なのに対し、ネット経由では2600円前後で済む。

保険に入らなくても万が一のときには、クレジットカードに付帯されている傷害保険でカバーできる場合もある。カードを持っていれば補償が受けられるタイプと、旅行費をカードで決済した場合にだけ補償されるタイプがあるため、旅行前にチェックが必要だ。

カードに付帯されている保険には落とし穴もある。海外で治療を受けても、日本の公的な健康保険で費用を軽減できる「海外療養費制度」で一部を払い戻してもらえるが、海外では治療費が大幅に膨らみやすい。いざというときにカードだけでは必要な補償額に届かないこともありうる。

三井住友海上火災保険は10月、インターネットでの加入者を対象に「クレカ上乗せプラン」を新設。けがや病気による治療の補償額を追加できる。たとえば欧州に7日間旅行する場合、けがや病気による補償額を300万円から2000万円に引き上げても、必要な保険料は1810円と手ごろだ。

年齢・行き先で

多数の補償をパッケージで提供する従来型では保険料が高くなりやすい。損保ジャパン日本興亜の「off!」は必要に応じて補償を選べるオーダーメード型。ハワイに5日間の旅行へ出かける場合、死亡補償を外し、治療費1000万円、携行品の損害20万円などに補償を絞れば1500円に抑えられる。このような旅行保険はネット経由であれば東京海上日動やあいおいニッセイ同和損害保険でも取り扱っている。

ジェイアイ保険の「t@biho」(たびほ)は7月に加入者を10歳未満、10~49歳、50代、60代、70代、80歳以上の6つに細分化。行き先も北米や欧州、韓国・台湾、中南米・アフリカなどに分け、リスクに見合った保険料とするなどの工夫を凝らしている。

ファイナンシャルプランナー(FP)の平野敦之さんは「提携先の病院で保険会社が治療費を直接支払ってくれたり、病院側に症状を伝えてくれたりするサービスが充実している」と保険加入を勧める。

テロの頻発など国際情勢は不安定で、海外旅行には危険もつきまとう。旅行保険の費用ばかりにとらわれず、各社のサービスを見比べて、自分に合ったプランを探してみるのもいいだろう。(渡辺淳)

[日本経済新聞朝刊2016年12月24日付]

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