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書店員がおすすめ 年末年始に読んでおくべき8冊

2016/12/23

リブロ汐留シオサイト店店長、大城優樹さんおすすめの2冊

 ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今週はいつもと趣向を変えて定点観測している東京都心の3書店の書店員の方に年末年始に読んでおきたいビジネス・経済書をおすすめしてもらった。今年刊行された本の中から選んでもらったので、読み逃した本があったらこの機会に読んで仕事始めに備えよう。

パンク精神で語る経営哲学

 八重洲ブックセンター本店副店長の木内恒人さんがまずあげたのがジェームズ・ワット『ビジネス・フォー・パンクス』(高取芳彦訳、日経BP社)。急成長するクラフトビール「ブリュードッグ」の創業者が自らの経営哲学、ブランド哲学を披露した本だ。ワット氏は1970年代、ロックミュージックに起こったパンクムーブメントを信奉する。既成概念を破壊し、破壊の中に創造の可能性を見いだすのがパンク精神だから、本書も一筋縄ではいかない。「人の話は聞くな」「事業計画なんて時間の無駄だ」「人脈づくりに精を出すのは間抜けのすることだ」……およそビジネス書とは思えない言葉が次々飛び出す文字通りパンクなビジネス書なのだ。

八重洲ブックセンター本店副店長の木内恒人さんのイチオシは『ビジネス・フォー・パンクス』

 「徹底して自分にこだわる姿勢に強くひきつけられる。破天荒でとんがったことばかり言っているので、とにかく刺激的に読める」とは木内さんの推薦の弁。9月の刊行で、強力な新刊が相次いだ中、爆発的な売れ行きとはいかなかったが、それでも若い人たちを中心にコンスタントに売れているようだ。

 あとの2冊はアンジェラ・ダックワース『やり抜く力』(神崎朗子訳、ダイヤモンド社)と梅田悟司『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版社)。同店の今年の売り上げのワンツーだそうで、そこがおすすめの理由だ。人生の成功を決める究極の能力は「やり抜く力(グリット)」だと説き、これを身につける方法まで細かく言及した『やり抜く力』は成長したいビジネスパースンにはまたとない1冊だろう。電通のトップコピーライターの梅田氏が教えてくれるのは、自分の内側の言葉を鍛えようということ。コミュニケーションツール、スキルとしての言葉ではなく、その背後に奥行きをつくる思考を深めるにはどうすればよいか。そのプロセスを自らの実践に即してつづっている。

年間売り上げ1、2位の2冊

 リブロ汐留シオサイト店店長の大城優樹さんのおすすめは2冊。こちらも年間売り上げ1位と2位の本を上げてくれた。1位の本は小西利行『すごいメモ。』(かんき出版)サントリーの緑茶「伊右衛門」のコピーなどを手がけた売れっ子コピーライターによる仕事術の本だ。自身のパフォーマンスを支えるのはメモと言い、メモを使った仕事術を「人生を変える14のメソッド」として紹介している。1月の刊行で今もなおコンスタントに売れており、「企画やマーケティングを仕事にする人たちには一番心に刺さった本。この店らしい売れ筋」と大城さんは言う。

 2位の本は加藤希尊『Customer Journey』(宣伝会議)。デジタル時代に実現すべき顧客起点のマーケティングの実践論、方法論を解説した1冊だ。カスタマージャーニーとは顧客がどのように商品やブランドと出合い、関心を持ち、購入や登録に至るのかを旅に例えた言葉。これを可視化して分析する手法が最近マーケティングの世界で盛んに使われている。ANA、ネスレ、レクサスといった大型ブランドの実例が豊富に掲載され、「大企業のブランド戦略を知るというだけでもおもしろく読める」と大城さんはすすめる。

ビジネスに通じる羽生3冠の言葉

紀伊国屋書店大手町ビル店の広瀬哲太さんのおすすめの一つ『ブロックチェーン・レボリューション』

 紀伊国屋書店大手町ビル店の広瀬哲太さんがあげてくれたのは3冊。「自分も今読んでいるところ」と取り出してきたのが羽生善治『羽生善治 戦う頭脳』(文春文庫)。棋士の羽生善治3冠が初めて7冠制覇に挑んだ1995年以降に雑誌に発表された対談を中心に語りおろしの対談やインタビュー、ノンフィクション作家や他の棋士による羽生論などを集めた1冊だ。ムックとして2015年に刊行されたものが今年3月文庫化された。

 思考力、勝負力、発想力、人間力、持続力という5つの章に分けて様々な文章を掲載しており、「ビジネスにも通じる考え方がちりばめられているのが読みどころ」と広瀬さんは言う。1人じっくり勉強するときは、課題があって解決するというより、「すごく大きなジグソーパズルがあってその中に一つピースを置いてみる感じ」「『考える』というより『捉える』」などといった発想の秘密がそこここで明かされている。「くつろぎながら自分の発想を磨くのにいいのではないか」と広瀬さんはすすめる。

 もう1冊は岡本裕一朗『いま世界の哲学者が考えていること』(ダイヤモンド社)。「哲学=人生論」というとらえ方ではなく、哲学がいかに現代社会が直面する課題に向き合っているのかをわかりやすく解説した本だ。9月30日の本欄でも紹介しているので参考にしてほしい。「バイオテクノロジーやIT(情報技術)、さらには資本主義や地球環境問題といった大きな課題について考えるヒントになる。正月に読むのにふさわしいのでは」と広瀬さん。

 3冊目にあげたのはドン・タプスコット、アレックス・タプスコット『ブロックチェーン・レボリューション』(高橋璃子訳、ダイヤモンド社)。今月初めに出たばかりの新刊でビットコインの中核技術、ブロックチェーンがこれから世の中にどんなインパクトを与えるのかを詳細に論じている。「ビットコイン、フィンテックといった狭い金融情報技術としてみるのではなく、会計や企業への広がり、さらには政治、文化への影響まで幅広く論じているのがすごい。読みごたえのある1冊」と広瀬さんは話す。

(水柿武志)

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