育児しやすい職場へ一歩 待機児童など課題残る
2016年・働き方改革元年(上)
「保育園落ちた日本死ね」――。2月、匿名のブログが話題を呼んだ。国は一億総活躍と銘打つのに、保育園に子どもを預けられず自分は働くことができない。そんな不満をぶつける内容だ。同ブログは国会でも議題に上がった。
妊娠や出産を理由に不公平な扱いや嫌がらせをする「マタニティーハラスメント(マタハラ)」の相談件数は昨年度、過去最多となった。3月には企業へマタハラ対策を義務付ける改正男女雇用機会均等法が成立。17年1月の施行を前に、企業では就業規則などを見直す動きが広がる。
出産後も働き続ける女性は増えており待機児童やマタハラ対策は急務。国立社会保障・人口問題研究所の昨年の調査では、第1子出産後も働く女性は53.1%にのぼった。5割を超えたのは初めてだ。
企業でも働き方改革が進む。セブン―イレブン・ジャパンは10月、社員向けに祝日限定の保育サービス「スポット保育」を始めた。流通小売業にとって繁忙期の祝日は保育園が休みである場合がほとんど。社内の声やダイバーシティ(多様性)推進の考えから導入した。
実際に利用した社員からは「祝日勤務はだらだらと過ごしていたが、子どもの迎えの時間があるため、効率よくこなせた」という声も。同社取締役の藤本圭子ダイバーシティ推進部長は「来店客に占める女性の割合も増えているため、女性社員が活躍する場は増えている。中途で辞めることなく、就業を継続させたい」と話す。
一方、今後に向けての課題はなお山積する。
配偶者控除の廃止見送りが12月、正式に決まった。パートで働く妻などの年収が103万円以下の場合、税の負担を軽減する配偶者控除の見直しは働き方改革の目玉だった。しかし、逆に年収要件が103万円以下から150万円以下に拡大。女性の就労が進むかは不透明だ。
男性の育児休業取得率は昨年度、過去最高の2.65%となったが、女性の81.5%と比べ差はなお大きい。アイデム「人と仕事研究所」(東京・新宿)の岸川宏所長は「男性は育休によるキャリアへの影響を強く意識している。『育休を取ることがキャリア形成につながる』という発想の転換が必要だ」と話す。
岸川所長は「仕事と並行して子育てができる環境づくりが大切だ。在宅勤務が浸透すれば女性だけでなく、男性も家庭に振り向くことができる」と強調する。
[日本経済新聞夕刊2016年12月26日付]
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