渡辺直美が語る 海外でウケた理由、2017年の抱負
動けるおデブキャラとしてダンスで魅了し、コントはもちろん、トークや歌マネもできる。2007年にデビューしてすぐに頭角を現し、必ず笑いを取れる女芸人として安定して人気を得てきた。そんな渡辺直美の変革期は14年。ダンスと語学を学ぶために3カ月間ニューヨークに留学し、芸に磨きをかけた。そして努力が実を結び、仕事の幅が広がったのが2016年だったと言える。
『NAOMIの部屋』(NHK総合)、『アカデミーナイトG』(TBS系)、『オタ恋』(BS朝日)と、3つの番組にMCとして起用されたほか、『AVALON』(J‐WAVE)の木曜ナビゲーターとして、初めてのラジオレギュラーを経験。加えて、インスタグラムのフォロワー数は16年に入って間もなく日本一になり、アフラックなど新規CMは5社に上った。10月にはワールドツアーを開催。チケットが4分で完売するなど、海外での引き合いの強さも示した。
節目となった16年を振り返り、17年の新たなチャレンジの抱負を本人が語ってくれた。
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16年は、今まで経験したことのない仕事がたくさん来て、日々夢中で走ってきた、という感じです。大きかったのは、4月からラジオのレギュラーが始まったこと。私はとにかく、面白い顔をして笑わせたり、コントをやりたくてこの世界に入ったんですよ。ところがラジオでは得意の変顔が使えない(笑)。10代、20代の若い子たちがリスナーの中心層なんですが、何が大変って、悩み相談です。「夢を取るべきですか、それとも今いる道を歩むべきですか?」と聞かれても、これまでは真剣な話題は曖昧にして生きてきたので。そんな芸人人生の10年間が変わって、自分の意見をしっかり伝えることに向き合うようになりました。
人見知りがMC業に災い?
『NAOMIの部屋』は音楽番組で、アーティストさんをゲストに迎えるのですが、超人見知りだからか、私のキャラが1組ずつコロコロと変わって、情緒不安定に見えてしまうという(笑)。「この人は上から言われたほうが楽しいタイプだろうな」と思ったらわざとそうしてみたり、「私をいじりたいタイプかな」というときは、いじりを受け止めたり。そうしているうちに、本当の自分が分からなくなるんです。はははは! でもそれが楽しいんですけどね。
特に印象に残っているのはSANABAGUN.(サナバガン)です。ジャズっぽい要素を取り入れたヒップホップチームで、曲はめちゃくちゃカッコいいんですよ。なのに、スタジオトークでは若手芸人ばりにボケてきて。私も変な汗かきましたが、そんなギャップにキュンとしました(笑)。その後ラジオでも「SANABAGUN.って知ってる?」ってドヤ顔で言ってたんですけど、みんなすでに知ってたみたい(笑)。
私はいつも逃げ腰というか、ビビりなんです。インスタも1日2回とか上げていたのに、巷(ちまた)で"女王"みたいに言われ始めてからハードルが上がっちゃって、週1回ぐらいのペースになるという(笑)。インスタが話題になったことで、私に興味のなかった人たちが「渡辺直美って誰?」って目覚めた時期があったんですが、そんなときに『ロンハー』で楽しいおデブ企画があって、改めて「コイツは芸人だったんだ」って知ってもらえたのはうれしかったです。
海外でウケた意外な演目
不安もありましたが、新しい1歩を踏み出せました。テンションはそれぞれの都市で微妙に違いますが、ビヨンセの『Crazy In Love』で登場するところから笑ってくれて、私が思っていた何十倍も盛り上がりました。なかでも、お客さんにマシュマロと大福と肉まんを投げてもらって口で受け止める「マシュマロキャッチ」がウケましたね。でも会議で提案したときは、スタッフさん全員に否定されて。「これだけお金をかけて行ってやることなの?」って。「任せてください。一口じゃないですよ、三口連続で食べますから」って説得しました。お客さんは大爆笑で、初日が終わってから「疑ってごめん」って(笑)。
実は、私が『ロンハー』でやったマシュマロキャッチの動画が台湾で拡散していたり、海外に住んでいる友達から「ヨーロッパでも直美の動画が流行してるよ」って聞いていたので、自信があったんです。他には、日本でビヨンセをやるときは、「この歌は知らない人が多いだろうな」とか意識するんですが、アメリカや台湾ではまた違うので、私の動画に寄せてくれた海外からのコメントも、選曲などの参考にしました。例えば、『Say My Name』がこのタイミングで流れたら、絶対に「フーッ!」ってなるな、とか。「ここは顔が見えなくても盛り上がるんで、後ろからの照明だけで大丈夫です」とか、私もちょっと演出しちゃって(笑)。思った通り、大合唱になったんですよ。日本のライブとはまた違った楽しみ方ができました。
16年に新しくチャレンジさせてもらったことに肉付けできるように頑張りたいです。14年に3カ月間ニューヨークに留学したのも、今回ワールドツアーをやったのも、日本で仕事を増やすために、人とは違う経験を得たかったというのが一番の理由なんです。
17年の抱負は、「バラエティー番組でガンガンにかます」です。ワールドツアーだけでなく、スカパー!の「UEFAチャンピオンズリーグ決勝」のPRキャラクターでミラノに行かせてもらったりと、海外の仕事に恵まれた分、バラエティーのオファーを泣く泣くお断りすることも多かったんです。16年は自分の挑戦を優先させてもらったので、17年はお茶の間を楽しませられるように攻めていきます。
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2017年1月号の記事を再構成]
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