広瀬すず、有村架純… 「ポスト黄金世代」女優が台頭
これまで女優の世界をけん引してきたのは、「黄金世代」とも呼ばれる85年~88年生まれ。綾瀬はるか、上戸彩、杏、北川景子、石原さとみ、長澤まさみ、新垣結衣、堀北真希……。そのほとんどが10代の頃から芸能活動をしており、長くドラマや映画で主役やヒロインの座を占めている。若者からシニア層まで厚い支持を得ており、強さは相変わらずだが、16年は"異変"が起こった。
脇役から注目 有村、牙城崩す
上の表は、アーキテクト(東京・港)が発表している「タレントパワー」の女優部門ランキング。タレントパワーは、タレントの「認知度(顔と名前を知っている)」と、「関心度(見たい・聴きたい・知りたい)」についての調査を基に、この2つのデータを掛け合わせて算出される。つまり、名前を知っているだけでなく、出演作品を見たいと思わせる、女優としての"力"を持っているかどうかが分かる指標だ。
このランキングの16年5月調査の結果で、1993年生まれで現在23歳の有村架純と、同じく18歳の広瀬すずが躍進した。有村架純は、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で話題を集めた翌年の14年5月調査で35位、15年5月調査では6位、そして16年はついに黄金世代の牙城を崩し、トップ5入りを果たした。一方の広瀬すずは、14年5月調査で260位。15年5月調査で30位まで順位を上げ、16年にトップ20入りした。
表にはないが20位以下に目を向けると、黄金世代より年下の女優が100位以内に19人もランクインしている。武井咲、本田翼、志田未来ら数年前からランクインしている女優もいるが、今回目立ったのは、朝ドラに出演したヒロインが大きく順位を上げたことだ。「とと姉ちゃん」(16年)の高畑充希は15年の143位から16年は36位へ、「まれ」(15年)の土屋太鳳は147位から47位へ、そして「あさが来た」(15年)の波瑠は178位から49位へランクアップした。
加えて近年は、脇役として朝ドラに出演した女優も順位を上げるようになっている。20代前半女優のトップランナーである有村架純のブレイクのきっかけは、「あまちゃん」(13年)への出演。15年の124位から61位となった黒木華は、「花子とアン」(14年)の妹役で高い評価を受け、16年4月期のドラマ「重版出来!」で連ドラ初主演を果たした。朝ドラのヒロイン役だけでなく、脇役を演じた女優も注目されるようになったことで、黄金世代以下の女優たちが、名を上げるチャンスが増えたといっていい。
ランキングでは黄金世代がここ数年、トップ20の半数近くを占め続けている。だが彼女たちは次々と30代に突入し、大人の女性や母親役を演じるようにもなっている。今後20代前半の女優たちが、彼女らと主役の座を争っていくことになりそうだ。
CMで知名度 10代も層厚く
ランキングで広瀬すずがトップ20に入ったことは、別の視点からも興味深い。彼女は朝ドラへの出演経験がなく、CMを皮切りにドラマ、映画へと進出して知名度を上げ、主演女優の座に上りつめた。学業と両立させるため、撮影スケジュールの兼ね合いで朝ドラのヒロイン役やレギュラー出演が難しい10代の女優にとって、広瀬の成功はモデルケースとなる。
広瀬を筆頭に、10代女優の層は着実に厚くなっている。橋本環奈や永野芽郁らが、映画やドラマで主役を務め、また16年上半期に7社のCMに出演した平祐奈など、複数のCMに起用される10代も増えている。
知名度と実力を伸ばす20代前半と、その後を追う10代の女優たち。今、若手女優の世界は充実期を迎えており、映画やドラマがさらに面白くなりそうだ。
(「日経エンタテインメント!女優Special 2017」から再構成。文・羽田健治、表中の有村・広瀬・高畑の写真は辺見真也)
[日本経済新聞夕刊2016年12月24日付]
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