スウェーデンの男女平等、税制きっかけ 残念な日本
女男 ギャップを斬る(水無田気流)
スウェーデン議会の労働市場委員会議長、ライモ・ペルシネン氏の来日にあわせて開催された、日本人の働き方に関する意見交換会に出席した。男女平等政策に関しては優等生のような国だが、果たしてどのようにして可能となったのか。日本人女性の無償労働負担の重さや、世帯単位の税制とそれに伴う「夫に許可の要る」働き方……等について説明したところ、ペルシネン氏は「スウェーデンの1960年代のようですね」とおっしゃった。
だが、現在は全く異なるとすれば変化のきっかけがあるはずだ。男女平等推進の皮切りとなったのは、どのような改革でしょうか?と尋ねると、「夫婦共同課税の廃止(72年)」だと即答。やはり税制改革の影響は大きいのか……。
育休制度に関しても先進的であったスウェーデンだが、夫婦共同課税の廃止からたった2年後の74年には、産休にかえて両親双方が取得できる育児休業を世界で初めて導入している。
56年生まれのペルシネンさん自身も、娘が産まれたとき、警官で出張の多い妻に代わり5カ月程度の育休を経験。だがこれはもはや、短すぎるとのこと。最近、労働市場委員会所属の男性議員が育休取得を願い出たところ、他の委員全員から「(厳しい顔と声色で)よろしい。だが分かってるんだろうね?ちゃんと6カ月は取るんだろうね? それより短いなんて、中途半端な取得は許さない!」と、くぎを刺されたそうである。ふきだしてしまった後、彼我の差に悲しくなったが、「超」少子化の進む日本こそ、今、まさにこれくらいの「イクボス」「イク同僚」が必要なのではないか。
翻って、先日決定された2017年度与党税制改正大綱。所得税の配偶者控除の廃止は今回も見送られ、代わって配偶者(実質的には妻)の年収上限が103万円から150万円に拡大された。このように旧来の「内助の功」型専業主婦優遇政策が維持される一方、厚生労働省などが要望していた認可外保育所やベビーシッターなど託児サービス利用料の控除は見送られ、共働き世帯には厳しい内容となった。今後若年層ほど共働きが増え、待機児童問題も深刻化する一方の現状に鑑みれば、極めて残念な内容と言わざるを得ない。
〔日本経済新聞朝刊2016年12月24日付〕
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