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運賃割引、金利優遇…高齢者、免許自主返納で特典 高齢者と車の運転(上)

2016/12/28

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 実家の父親の自動車の運転が心配です。70歳を過ぎて判断能力が鈍ってきたことに加え、高齢のドライバーが起こす事故が世間を騒がせているからです。運転免許証を返納すると様々な特典が受けられると聞きました。どんな制度か教えてください。

 交通事故は減っているが、高齢ドライバーの事故は増加傾向にある。警察庁がまとめた「交通事故統計」によると、2016年1~11月までに発生した交通事故は約45万件、死者数は約3500人でともに前年同期に比べて減少した。だが、死亡事故の加害者(原付き以上、第1当事者)を年齢別にみると65歳以上が800件を大きく超えて推移しており、75歳以上に絞ると415件と微増だった。

 登校する小学生の列に突っ込んだり、病院の敷地内で暴走して歩行者をはねたりといった重大事故が頻発したためクローズアップされたが、以前から高齢者の運転は社会問題になっていた。加齢とともに運動能力や判断能力は衰える。その一方で高齢の運転免許保有者は増えており、65歳以上の保有者は1710万人と全体の2割を占める(15年末時点)。

運転経歴証明書

 運転免許の有効期限内に自ら免許を返納し、運転を引退する「自主返納」は1998年に導入された。返納者は年々増えており、15年は28万5514件と前年を37%上回った。

 大半が65歳以上で東京や大阪、埼玉などで多い。返納すると「運転経歴証明書」を申請できる(手数料1000円、自治体によって無償)。同証明書は2012年に身分証明機能が強化されて、今では金融機関の口座開設などで本人確認書類として無期限に使える。

 主に65歳以上を対象に、証明書を提示すると様々な特典や優待を受けることができる支援策を各自治体で導入している。市区町村が独自に支援しているところもあれば、警察の呼び掛けで企業や団体が協力しているところもある。その代表がバスやタクシー、鉄道の利用券の交付や運賃などの割引・優待。返納した人にマイカーに代わる移動手段を提供するのが目的だ。

 金融機関では定期預金金利の優遇が目玉だ。東京都内では東京シティ信用金庫が09年4月から「免許証返納定期預金」を販売している。「出すからにはインパクトのある金利で」(同金庫)と、現在は店頭表示(年0.01%)に0.15%上乗せしている。昨年2月から取り扱いを始めた徳島県の阿波銀行のように0.3%プラスするなど、地域によってはさらに上乗せ幅が大きいところもある。

 店頭で購入した商品を自宅まで無料で配送してくれる百貨店もある。高島屋は都内の4店舗で実施しており、「利用者は増えてきている」という。イオンも商品を自宅に当日配達するサービスの送料を全国約300店舗で優遇する。また、東京や神奈川の店舗では返納者に対して電子マネーのWAONカード(65歳以上には「ゆうゆうワオン」カード)を無料で進呈している(通常は発行手数料300円)。

 警察庁では「返納しやすい環境づくりを進めたい。各種の特典はその一環で、これからも拡充を働きかけたい」としている。

[2016年12月21日付日本経済新聞朝刊]

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