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DC・NISA… 投資の優遇税制、広がる選択肢

2016/12/24

 確定拠出年金(DC)、少額投資非課税制度(NISA)といった投資優遇税制の選択肢が来年以降広がる。うまく使えばリターンを高めることを見込めるが、節税効果は利用する人の働き方や年齢などに左右される。お金をどう振り向けるのか自分なりの優先順位を決めておこう。

 「よく考えたら、税金がもったいない」。オリックスに勤務するA子さん(49)は昨年、企業型DCの一種である「選択制」で月約2万円を会社負担の掛け金にした。それまでは掛け金にしないで給与に上乗せしてもらっていたが、社内セミナーの説明を聞いて切り替えた。

 企業型DCは通常、会社が対象者全員の掛け金を拠出するが、選択制は従業員が掛け金を出してもらうか、掛け金を出してもらわない代わりに、その分を給与などとして受け取るかを選ぶ仕組みだ。

 例えばA子さんが月2万円を給与としてもらうと、所得税や社会保険料がかかる。これを会社負担の掛け金に変更すると税務上はA子さんの収入ではなくなる。年間24万円の掛け金に所得税、住民税の税率をかけた分だけ節税できる。A子さんは掛け金をすべて定期預金で運用しているが、年間10万円近いメリットが出ているという。

■納税額の確認を

 ファイナンシャルプランナー(FP)の古川るり氏は「投資を始めるなら、まずDCを使うといい」と助言する。一般に証券会社や銀行で金融商品を売り買いして利益が出たり、配当金をもらったりすると税率20.315%で課税されるが、DCなら非課税になるためだ。

 ただしDCの掛け金を増やせばメリットがその分だけ大きくなるとは限らない。FPの福島えみ子氏は「もともと住宅ローンの税額控除を引き切れていない場合は、DC掛け金での節税効果が少ない」と指摘する。このほか扶養控除、医療費控除などで所得税率が下がれば、掛け金の節税効果も下がる。DCの掛け金を決める際は、まず自分がどのくらい税金を納めているのか確認することが大切だ。

 大企業に勤める会社員はDCの資産を受け取るとき課税される可能性がある点にも注意しよう。一時金でもらうと退職金と合算し退職所得として課税されるからだ。勤続30年で1500万円、40年で2200万円の所得控除があるが、大企業では合算額がこれを超えることが少なくない。

 個人事業主らが加入できる個人型DCの節税メリットも会社員と同じように計算できる。個人事業主は退職金がないため、DCの一時金がすべて所得控除になる可能性も高そうだ。ただしDCでリスクを取らず定期預金で運用するつもりなら、中小企業基盤整備機構が運営する小規模企業共済と比較するのが一案だ。掛け金がDCと同じく所得控除になるからだ。

 この共済は従業員が原則20人(商業、サービス業は原則5人)以下の個人事業主や会社役員などが対象。掛け金を毎月払い、廃業や事業譲渡などのタイミングであらかじめ決められた共済金を受け取る。例えば月1万円の掛け金を30年間、計360万円を納めてから廃業すると、共済金は434万円余りで、利回りは年1.2%ほどになる。DCと併用することもできる。

■主婦も加入可能に

 来年1月から主婦も個人型DCに加入できる。もともと所得税を払っていない専業主婦は掛け金で節税できないため、投資信託で積極運用しなければメリットがない。運用リスクを取るなら60歳まで引き出せないDCよりも投資枠が大きく、株式の個別銘柄などにも投資できるNISAが向いているかもしれない。

 パートで働く主婦はどうだろうか。2018年に配偶者控除の上限が年収150万円になり、現行の年収103万円を超えて働く人が増えそうだ。パート本人に課税所得が発生するが、FPの高橋忠寛氏は「103万円を超えた分をDC掛け金にすれば課税所得を減らせる。定期預金で運用しても年間数千円の手数料を差し引いて収支をプラスにできる場合がある」という。

 60歳以上の高齢者は原則DCを利用できないため、投資優遇税制はNISAが選択肢になる。節税メリットが出るのは株式や投資信託の運用で利益が出た場合だ。高橋氏は「孫にお金を贈与してジュニアNISA口座で運用してもらうのも一案」という。配偶者や子どもなど相続人への贈与は、贈与した人が3年以内に死亡すると相続財産として扱われて節税メリットがなくなるが、相続人でない孫はこのルールの対象外だ。

 17年度の税制改正大綱は新たに「積立型NISA」を盛り込んだ。投資の優遇税制が広がる中で、よりメリットが大きいところにお金をどう優先的に振り向けるかが一段と重要になる。働き方や年齢、家族構成、投資のリスクの取り方、お金の用途などを整理して自分に合う方法を見つけておきたい。(表悟志)

■社内預金制度、金利0.5%以上
 勤務先に社内預金の制度があれば、優先して利用するといいだろう。法律で年0.5%以上の金利を付けることが決まっており、銀行預金や個人向け国債などに比べてかなり有利だからだ。厚生労働省によると、社内預金の制度がある事業所は全国に1万9000余り。約50万人が9276億円を預けている。
 社内預金は多くの場合、法律が定めるいくつかの保全措置のうち、従業員がかかわる預金保全委員会の設置によって管理している。ただし預金保険の対象ではないため、会社が倒産したりすると払い戻しができなくなる恐れがある。2015年に労働基準監督署が把握した払い戻し不能のケースは4件だった。

[日本経済新聞朝刊2016年12月21日付]

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