服装選びは自己投資 自分ではなく「相手」を見よ大富豪が実践しているお金の哲学

日経マネー

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大富豪と呼ばれる人たちがいる。多額の富を保有する彼らのお金に対する考え方は、いったいどのようなものだろうか。かつて金融資産10億円を超える大手顧客を対象とした野村証券のプライベートバンク部門で辣腕をふるったZUU社長兼CEO(最高経営責任者)の冨田和成氏が、大富豪が実践する「お金の哲学」を解説する。

証券会社に入社した最初の年、大手企業の経営者に飛び込み営業をかけていた私は自分の見た目にかなり気を使っていました。スーツは紺かグレーの無地で、シャツは白シャツ一択。ネクタイは明るめの色のストライプを選んでいました。「明るくて若くて爽やかな青年」だと思ってもらうためです。

一方、現在ベンチャー企業を率いる私のファッションは専ら私服です。堅い業界の上の方と会食をする時は礼儀としてジャケットとネクタイはしますが、スーツを着ないこともあります。相手に礼は尽くしつつも、あくまでも「ベンチャー企業の経営者」として見られた方が、メリットが大きいと思っているためです。

このように、ビジネスシーンでのファッションは自分の好みを優先することより、相手に与えたい印象から逆算して決めることがとても大切です。

例えば、初対面の人と会話をする時、誠実な人だと思われたいなら終始丁寧な言葉遣いをするでしょう。逆に、距離を縮めたいならあえてフランクな話し方をするなど、目的に応じて言葉を使い分けているはずです。ファッションもコミュニケーションの手段の一つです。様々な引き出しを持っておいて、うまく使い分けることが肝心です。

相手と服装を思い合う

そういえば、先日ある地方銀行の頭取の方から興味深い逸話を聞きました。マイクロソフトのビル・ゲイツ氏が業務提携に当たってIBMを訪問した時のこと。マイクロソフトは当時バリバリのベンチャー企業でTシャツにジーンズの文化。一方のIBMは保守的な風土で「ビッグブルー」とも呼ばれるブルーのスーツが基本です。

そこでいざ両者が対面したところ、ビル・ゲイツ氏がスーツ姿で、IBM社員がTシャツにジーンズだったのです。お互いが譲り合いをしてしまったというわけですね。相手に合わせて服装を思い合うというのはこういった事例を指しています。

また、ビジネスファッションでは外見と中身が一致していることも大切です。優秀なのに安いヨレヨレのスーツばかり着て第一印象で損をしている人や、中身が伴っていないのに服装でごまかそうとする人。この両極の中間でうまくバランスを取っている人は多くない気がします。

ファッションは自己投資の一種ですし、背伸びは成長に必要です。ただ、他の投資と違ってやり過ぎはマイナスに作用しかねません。それにスーツの支出は大きいですから、若い人がいきなり無理をする必要はなく、スーツもシャツもネクタイも最低限見栄えのいいものを選んで、清潔感を保つところから始めるのがよいでしょう。

冨田和成(とみた・かずまさ)
ZUU社長兼CEO。一橋大学在学中にIT分野で起業。卒業後、野村証券プライベートバンク部門で活躍。退職後にZUUを設立し、国内最大規模の金融ポータルメディアZUU onlineなどフィンテック分野で事業を展開中。

[日経マネー2017年2月号の記事を再構成]

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