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世界の聖地を歩く女性写真家と「お伊勢参り」

写真家の稲田美織さん

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NIKKEI STYLE

一生に一度は「お伊勢参り」――。江戸時代、そんな言葉が広まるほど古くから日本人の憧れだった伊勢神宮(三重県伊勢市)。2016年5月に日本で開かれた主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)をきっかけに、世界からも注目を浴びている。その日本の聖地を10年以上にわたり、撮影し続けているのが写真家の稲田美織さんだ。稲田さんが16年に英文で書き下ろした「Ise Jingu and the Origins of Japan(伊勢神宮と日本の源流)」は、G7で伊勢神宮を訪れた各国首脳にも贈られた。今回、稲田さんに案内してもらいながら、記者が「お伊勢さん」の持つ力を感じる旅に出かけた。

内宮で早朝参拝

まだ夜も明けきらない薄暗い午前6時30分。稲田さんと、宿泊する神宮会館の職員の方に案内され、早朝の内宮(ないくう)に向かった。内宮は、皇室の祖先といわれる天照大御神(あまてらすおおみかみ)をまつるお社だ。

ピンと張り詰めた気持ちの良い空気を頬に感じる。あたりはひっそりと静まり、「静寂」という言葉の本来の意味を初めて知ったような気がした。内宮への入り口、五十鈴(いすず)川にかかる宇治橋は、神の世界と人の世界をつなぐ橋だ。川の底が見えるほど、水は透き通っている。

内宮の庭園、神苑(しんえん)をすぎ、御手洗場(みたらし)の五十鈴川、川べりに向かう。「川の水で、手を清めましょう」。稲田さんが声をかけてくれた。手をひたすと、水の冷たさが心地よい。五十鈴川を守る瀧祭神(たきまつりのかみ)を経て、天照大御神をまつる御正殿へ向かう。

今回、稲田さんに伴われ、伊勢神宮のなかでも最も神聖な場所、御垣内(みかきうち)での「正式参拝」を体験することができた。通常は外玉垣(とのたまがき)と呼ばれる垣根の外から参拝するのだが、なかに入り神様に近い場所でお参りできる。正式参拝をするには、内宮と外宮(げくう)の神楽殿で事前に申し込みが必要だ。また、少しでもカジュアルな服装では入ることができない。上下同じ色のスーツ、男性はネクタイの着用が必須となっている。女性で着物の場合は訪問着や黒留袖(くろとめそで)などの正装で参拝する。

※1月1~3日は神宮会館による早朝参拝ツアーは実施なし。

自然の力を感じる瀧原宮へ

伊勢神宮は、内宮と、衣食住の神様である豊受大御神(とようけのおおみかみ)をまつる外宮が有名だ。しかし、正式には外宮、内宮に加えて重要な神々をまつる125社すべてをふくめて神宮、という。今回は、内宮、外宮にくわえて稲田さんに伊勢神宮の持つ力をより感じられる「特別な場所」にも案内してもらった。

内宮から約40キロメートル離れた、最も遠い場所にある瀧原宮(たきはらのみや)は、伊勢神宮が体現する自然の恵みを強く感じられる場所だ。参道の両脇にすっくと伸びる木々からの木漏れ日を感じながら歩くと、御手洗場がある頓登川(とんどがわ)から水のせせらぎが聞こえてくる。参道の奥にひっそりとたたずむお社は、まさに鎮守の森に守られた日本の宝だ。

伊勢神宮の周りにある山々には、天然のクスノキやサカキなどの照葉樹、杉やモミの木などの針葉樹と、桜などの広葉樹が生えている。この山の二つの源流が五十鈴川に流れる。川の水は内宮の神域を流れて宇治橋をくぐり、下流に流れ、海にそそぎこむ。水が川を流れながら、栄養などを取り込んで、木や稲、塩など、神様への捧げ物、そして人間の生活に必要なものが生まれているのだ。稲田さんは、「伊勢神宮は水と生命の循環を感じる場所」と話す。

内宮から車で30分ほどの場所にある、二見興玉(ふたみおきたま)神社は、お伊勢参りの前に心身を清める場所といわれ今も人気が高い神社だ。2つの岩を縄でつないだ夫婦(めおと)岩は、初日の出のスポットとしても、縁結びの神様としても有名で、ここで初詣をする人たちも多い。

二見興玉神社近くには、今も昔と変わらない技法と素材で天然の塩を作る「岩戸館」がある。作業場に足を運べば、むっとするような暑さのなか、薪(たきぎ)の熱と鉄の釜で塩の結晶を力強くかきまぜる職人の技術を目の当たりにできる。

ニューヨークの同時多発テロ

稲田さんが伊勢神宮の撮影を始めたのは2005年。米ニューヨークに10年以上住み、ネーティブアメリカンの聖地であるセドナやイスラエルのエルサレムなど、聖地の写真を撮り続けていた。そのきっかけは、2001年の米同時テロを目撃したことだったという。

「目の前で巨大なツインタワーが崩れ落ちたのを見ました。ショックで立ち直れず、1年くらいは何もする気が起きなかった。でも、マンハッタンの本屋でたまたま見つけた写真集に、ネーティブアメリカンの聖地が掲載されていたのを見てこれだ、と思って。それから、聖地巡礼の旅に出かけました」

以来、稲田さんはセドナ、エルサレム、アンコールワットなど、世界中の聖地を訪ね歩き撮影し続けた。そんな折、展覧会を訪れた神道にゆかりのある教授に「日本の聖地、伊勢神宮の式年遷宮(しきねんせんぐう)も撮影されては」と声をかけられたことが伊勢神宮との出合いになった。それから、12年にわたり式年遷宮にかかわる祭りを撮影している。

「式年遷宮の『20年に1度、お宮を建て替えて新しくする』という仕組みはとてもユニークで合理的です。技術を次の世代に伝え、永遠に存続させるには、20年がちょうどいいんです。宮大工なら、20代で見習い、40代で一人前になって、60歳で棟梁(とうりょう)になるでしょう。伊勢神宮は最も古くて新しいものが常にある場所なんですよ」

伊勢神宮の類いまれな存在と、2000年以上変わらない祈りの姿勢にひかれるのは、日本人だけではない。去年5月に伊勢志摩サミットで伊勢神宮を訪れた各国の首脳たちも感銘を受け、伊勢神宮のファンになっている。オバマ米大統領は、伊勢神宮に参拝し「幾世にもわたり、癒やしと安寧をもたらしてきた神聖なこの地に訪れることができ、非常に光栄に思います」と記帳した。

今日は新しい一年のはじまりの日だ。伊勢神宮の由来に思いをはせながら、足を運んでみてはいかがだろうか。その静謐(ひつ)さと、自然と調和するあたたかい優しさにひたれば、自分のなかにある素直な祈りの気持ちに気がつくかもしれない。

稲田美織氏(いなた・みおり)写真家。多摩美術大学油絵科卒業。中学校の美術教師を経て、渡米。2001年、米同時テロを経験。著書に「水と森の聖地 伊勢神宮」、G7各国首脳陣に渡された「Ise Jingu and the Origins of Japan」(ともに小学館)など多数。1月7日から個展「伊勢神宮"式年遷宮"とサステナビリティ」を表参道・A-galleryで開催予定。公式サイト www.mioriinata.net

(松本千恵)

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