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高齢者、家は危険だらけ レンジ、ガスコンロ…… 長年使用の製品点検

2016/12/20 日本経済新聞 夕刊

ガスコンロを使うときは着衣のそでに着火する危険に注意する必要がある

 高齢者世帯の家庭内事故が後を絶たない。冬は石油ストーブと電気ストーブによる火災ややけどが多く、最近は温水洗浄便座での低温やけどの事例もある。体力や注意力が低下した高齢者に代わり、周囲の人が誤使用を防ぐよう気をつける必要がある。年末年始、実家に帰ったら、老親の暮らしに潜む事故の危険性をチェックしよう。

 昨年11月末、東京都練馬区で独り暮らしの85歳の女性宅の換気扇から煙がモクモクと上がった。近所の人が消防署に通報、消防隊が駆けつけた。原因は電子レンジで長く温め過ぎ、黒焦げになった肉まんだった。

 東京都の2年前の調査では、1012人のアンケート回答者のうち23人が電子レンジでの「発火・発煙」の経験があると回答。長時間の電子レンジ使用による火災も起きている。

 高齢者の身の回りは事故の危険でいっぱいだ。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が集めた過去5年間の事故発生件数をみると、60歳以上の人の事故は全体の約4割。ガスコンロやストーブなどの「燃焼」製品の事故は、年齢が上がるとともに増え、10~50代が1割強なのに対し、60代で2割、70代と80代以上ではいずれも3割だ。

 ガスコンロ事故は火が衣服に移り、やけどするものが多い。石油ストーブの場合は、灯油と間違えてガソリンを給油する、給油後にタンクのふたをきちんと閉めず、灯油がこぼれ引火した例が代表的だ。電気ストーブでは、就寝中に布団が発火し、周囲の可燃物に燃え広がったり、衣類を干していて、衣類に着火したりするケースが目立つ。

 「最近、増えてきたのが温水洗浄便座による低温やけど」(NITE製品安全センター)だ。昨年は4件発生。被害者はすべて80歳を超えている。温度調節を「高」や「中」にして、10分以上座っていると、低温やけどを負う恐れがあるという。皮膚が弱くなった高齢者は「温度を『低』にするか、直前まで温めて、使用中は切って」(NITE)と注意を呼びかける。

 事故を防ぐ第一歩は、事例から、どこに危険が潜んでいるか知ることだ。

 東京都は毎年、危うく事故になるところだった経験を集める「ヒヤリ・ハット調査」を実施している。特に高齢者では長く使っている製品での事故が目立つ。例えば、延長コードが傷つき、むき出しになった電線から火花が出てじゅうたんが焦げるなどだ。

 古くなると、部品の劣化などで火災や死亡事故を起こす恐れがある製品は「特定保守製品」とされている。製品は屋内式ガス瞬間湯沸かし器、石油給湯機、石油風呂釜など9品目。メーカーに所有者登録しておけば点検時期が来ると知らせがくるが、登録していない人が多い。

 東京都の調査でも上位のガスコンロから服への着火。都は「ガステーブル周りに物を置かない」「袖が火に接しないように」「燃えにくい防炎のエプロン、アームカバーを使う」などの対策を挙げる。ストーブ事故を防ぐには部屋を整理整頓し、火が出ても燃え広がらないようにする。

 都の宮永浩美・生活安全課長は「高齢者の場合、不注意や誤使用で事故に至る場合が多い。メーカーにも、高齢者がうっかりを起こすことを前提に商品開発を進めてほしい」と訴える。

 子世代は帰省したら、事例に照らし合わせて家を点検、長年使用している家電製品などのチェックをしたい。

■リコール製品の認識低く

 経済産業省は製品事故防止のための周知活動を始めている。今年は「おうちのチェックリスト」をポスターに掲載、ホームページでも紹介する。

 例えば、ガスコンロは「音・臭い、よごれ、点火不良」、ファンヒーター、ストーブは「音・臭い、周りに物がないか、製造年、登録の確認」、トイレは「便座の温度、コンセント周りのホコリ」のチェックを、と訴える。

 一方、消費者庁はリコール情報サイトを設けている。事業譲渡などで事業者名や連絡先が変わっても、情報を新しい連絡先などに更新。高齢者の事故が多い製品もまとめて掲載している。

 ただ、高齢者が一人でチェックするのは難しい。消費者庁は、2014年度、千葉県松戸市、長野県上田市など5つの自治体と一緒に、地域の民生委員や介護事業者が高齢者宅を訪問、リコール製品を使用しているかどうか確認するモデル事業を実施。「高齢者や要介護者は、リコール製品に対する認識が低いことが分かった」(同庁)

 全国電機商業組合連合会は「加盟する中小電器店は、年に1回程度、取引のある家庭を訪ね、家電製品の点検やリコール製品の回収に協力している」と話す。民生委員と一緒に高齢者の自宅を訪問している地域もある。

 介護事業者大手、SOMPOケアメッセージは「ケア中にヒヤリとした事故の危険性について、介護ヘルパー間で情報共有を心掛けている」という。

(相川浩之)

[日本経済新聞夕刊2016年12月20日付]

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