動物が凶暴化、人を襲う『ZOO』 衝撃映像でヒット
2016年11月 海外ドラマ月間レンタルランキング
『ウォーキング・デッド』『ザ・ラストシップ』など大量感染による人類存亡の危機を描く世紀末ドラマが大人気だが、そこに動物の感染という新ジャンルが登場。次々と凶暴化する動物たちが人間を襲う『ZOO(ズー)-暴走地区-』が、TSUTAYAの海外ドラマ月間レンタルランキングで7位に入るヒット作となっている。
『ZOO-暴走地区-』は、突然変異で凶暴化した猛獣たちと人間の壮絶な戦いを描くパニック大作。アフリカ・ボツワナと米国・ロサンゼルスでライオンが突然人間を襲った事件を始まりとして、様々な動物が人間を襲う異常事態が、世界各地に広がる。事態究明のために世界から集められた5人がチームを組んで、動物たちに戦いを挑む。
全米では2015年夏にCBSで放送されて、その年の夏の新作ドラマシリーズの中でトップの視聴者数を獲得。16年にはシーズン2が放送され、シーズン3の製作も決定しているヒット作だ。
動物が人間を襲うパニック大作といえば『ジョーズ』(75年)が有名だが、それが大ヒットしたのを受けて、1970年代の後半には類似の映画が次々と公開された。熊の『グリズリー』(76年)、シャチの『オルカ』(77年)、タコの『テンタクルズ』(77年)といった巨大動物ものがブームとなり、スティーブン・キング原作で狂犬病の犬が登場する『クジョー』(83年)といった作品も作られた。いずれも動物が人間を襲うショッキングな描写が売りだった。だが、一部を除いては低予算のB級感はぬぐえず、すぐにブームは去るが、往年の洋画ファンにとっては懐かしいジャンルである。
そのエッセンスがテレビドラマでよみがえった感もあるのが『ZOO-暴走地区-』とあって、映画ファンからの支持が高いようだ。TSUTAYA MD販促部映像ユニット レンタルチーム 海外ドラマ担当の中山知美氏によると、「洋画好きと思われる40代男性に一番見られています。ジャケットのデザインも、動物と人間の壮絶な戦いという内容が一目でわかるようにして、40代以上の男性に刺さる絵柄にしたのが功を奏しています」。
オープニングテーマを『ハロウィン』『遊星からの物体X』などで知られる映画監督ジョン・カーペーターが担当しているのも、映画ファンには嬉しい要素だ。
バイオ企業の陰謀を巡るサスペンスも
一方、現代的な要素もふんだんに取り込んでいる。かつての動物パニック映画が単体の動物を扱っていたのに対し、『ZOO -暴走地区-』ではジャングルのライオンからペットの犬猫まで、世界中のあらゆる動物が次々と凶暴化。回を増すごとに動物の脅威はエスカレートして、人間に襲いかかる衝撃映像が見る者の度肝を抜く。その背後には世界的バイオ企業の陰謀が隠れているという設定で、そのあたりは今日的な味付けだ。
5人の主要キャストも、世界から集められたエキスパートという設定に基づいて米国、英国、フランスの出身俳優がそろい、国際色も豊か。
また、全米地上波のCBSネットワークで放送された夏季の大作シリーズだけに、B級感はなく、陰謀の謎解きを巡るサスペンス色を強めているのがテレビシリーズらしい演出だ。
ゾンビがはこびる『ウォーキング・デッド』やウイルス感染で人類が滅亡の危機にひんする『ザ・ラストシップ』など、パンデミック(世界規模の感染流行)をテーマとする世紀末ドラマが流行しているが、本作はその対象を動物に広げた新種のジャンルといえる。
往年の人気ジャンルである動物パニックものに、近年人気のパンデミックの要素をうまく取り入れて、現代性に富んだサスペンスドラマに仕立てた『ZOO-暴走地区-』。その企画の妙が、世界的なヒットを呼び込んだようだ。
(日経エンタテインメント!小川仁志)
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