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高い? 飽きる? いやスーパーマリオランは傑作だ

日経トレンディネット

2016/12/19

スーパーマリオラン (C)2016 Nintendo
日経トレンディネット

 任天堂が配信したスマホゲーム『スーパーマリオ ラン』は今までのマリオと何が違い、どこが面白いのか? 早速ゲームをやり込んだベテランゲームライターが分析する。

■「ただのジャンプ」が面白い

 2016年12月16日未明に配信が開始された、iPhoneおよびiPad用ゲームアプリ『スーパーマリオ ラン』。「片手でプレーできるマリオ」というキャッチコピーを見て、そんな操作方法で『マリオ』シリーズの楽しさが再現できるのかなぁ……と不安に感じていた方も多かったことでしょう。

 でも、ご安心ください。いざプレーしてみれば分かりますが、ほんと、よくできたゲームです。「まぎれもなく『マリオ』の最新作だよ!」と心から納得できる完成度なのです。

 操作はシンプル。『スーパーマリオ ラン』には、マリオを移動させるための操作はなく、マリオはオートで右に走ります。これまでの『マリオ』シリーズでも、画面が強制的にスクロールしていくステージがありましたが、あれが全編にわたって続くようなものだと考えてください。最後まで走破すればステージクリアとなります。

 プレーヤーが行うのは「画面をタッチ」し、的確なタイミングで、マリオをジャンプさせることだけ。あまりにシンプルな操作方法ですが、これが任天堂の手にかかると、「ただのジャンプがこんなにも面白くなるのか! 繊細なアクションが可能になるのか!」と舌を巻くほどの、抜群の面白さを見せてきます。

 昨今の家庭用ゲーム機のアクションゲームは、たくさんのボタンを押すことを要求するものが主流になっていますが、そんな風潮に挑戦状を叩きつけるかのように、任天堂が「たったひとつの操作方法(画面へのタッチ)だけで、こんなにも面白いアクションゲームは作れるんだぜ!」と宣言するかのようなゲームといっていいでしょう。

マリオはオートで右に走っていく。敵キャラを避けてゴールを目指そう。(C)2016 Nintendo
もちろん地下ステージもあり。高い位置へ一気にジャンプ!(C)2016 Nintendo

ワールドの最後にはクッパが待っている。クッパの背後にある斧に触れるとクリアとなる。(C)2016 Nintendo

■「初代」へ原点回帰

 どうして、ただジャンプするだけのゲームが、こんなに面白いのでしょう?

 そのポイントは、画面をタッチする時間によって、マリオの滞空時間が変わることにあります。ちょん、と短くタッチすれば滞空時間の短い「ちょっとジャンプ」になり、長くタッチすれば滞空時間の長い「ロングジャンプ」になるのです。

 そしてジャンプ中に「目測を誤った! 足場に届かない」「もっと跳びたい」と思ったら、すかさずもう一度タッチすればOK。ジャンプの滞空時間を延ばせる「空中スピン」ができます。逆に「やばい! 跳び過ぎた!」と思ったら、画面にタッチした指を左にスライドさせれば「空中ブレーキ」がかかります。言葉で説明すると複雑ですが、直感的に理解できる操作方法なので、すぐに習得できるでしょう。

 この2つを使いこなせるようになると、ゲームは俄然、面白くなります。画面をタッチするだけのシンプルな操作方法にもかかわらず、ジャンプの微妙な距離感が調整できるようになり、「ぴたりと敵を踏めたぞ!」「ギリギリ足場に届いたぜ!」「おお。これぞアスレチックゲームの醍醐味!」と感じられるようになってくるのです。

 さらには「カベキック」「ウマとびジャンプ」「受け身ジャンプ」「がけのぼりジャンプ」などなど、マリオが置かれている状況によって、「ジャンプ」というアクションは変化します。ただ画面をタッチするだけなのに、多彩なジャンプが使えるようになり、それが攻略のためのテクニックとして活用できるようになっていくのです。その職人芸ともいえるゲームデザインの妙は、ぜひご自身の手で確認してください。

 ゲームに詳しい人は、これって十字ボタンとジャンプボタンだけで楽しめた、初代『スーパーマリオブラザーズ』に原点回帰したようなゲームだなぁ……と、感じるかもしれません。シンプルだからこそ、誰でも遊べて、しかも奥が深い。そんなゲームになっています。

ジャンプして天井に達すると、こうした「うんてい」での移動も可能。(C)2016 Nintendo
遠い足場に向かってジャンプ。もし届きそうになかったら、すかさず空中スピンで危機回避しよう。(C)2016 Nintendo

カラクリだらけのステージは多彩なジャンプで突破できる。(C)2016 Nintendo

■ボリュームはどれだけある?

 最後に、ゲームのボリュームについて説明します。本編となる「ワールドツアー」に用意されているのは6ワールド。計24ステージです。

 クリアすることだけを目指すならば、アクションゲームに慣れている人にとっては、2~3時間もあれば十分でしょう。「あれ、そのていどのボリュームしかないの?」「それで1200円の買い取り方式(冒頭の3ステージまで無料)は高すぎないか?」と怪訝(けげん)に思う方もいるかもしれません。

 でも、舐めてはいけません。このゲーム、いったんクリアしてからが本番といっていい。いずれ使用できるプレーヤーキャラクターが増え、最終的には6キャラが選べるようになります。キャラによって基本的な能力が違うため、同じステージであっても、攻略のためのテクニックがガラリと変わってくるのです。

 さらには、各ステージにはピンクコインと呼ばれる特殊なコインが5つずつ配置されていて、1回のプレーですべてのコインの獲得を狙うと、一気に歯ごたえのあるゲームへと変貌します。

 すべてのピンクコイン獲得に成功すると、次はさらに難易度の高い場所に5つのパープルコインが配置されたコースがオープン。それもクリアすると、今度は超絶難易度の場所に5つのブラックコインが配置されるようになります。「スマホアプリだからって舐めてもらっちゃ困る!」とばかりに、腕自慢のプレーヤーに挑戦状を叩き付けてきますので、ぜひ挑戦してみてください。

ルイージでのプレー。マリオよりもジャンプ力があり、高い場所まで到達できる。(C)2016 Nintendo
ヨッシーでのプレー。「ふんばりジャンプ」によって滞空時間を稼げるキャラクターだ。(C)2016 Nintendo

本編以外にも、多彩なモードあり。こちらは他のプレーヤーと「格好良さ」を競う「キノピオラリー」モード。(C)2016 Nintendo
「キノピオラリー」をプレーして集めたキノピオの人数によって、荒廃した王国を再建していく「王国づくり」もある。(C)2016 Nintendo

 これは、昨今のスマホゲームの潮流に対する、任天堂からの強烈な挑戦状と考えていいかもしれません。

 いまのスマホゲームは、用意したものにプレーヤーが飽きたら、新しい要素を追加し、その追加要素に課金してもらって利益を得るというビジネスになっているものが多いのですが、『スーパーマリオ ラン』はその逆に挑戦してきました。「後から要素を追加しないから、同じステージを何度も何度も攻略してね!」という家庭用ゲーム機用ソフトの文法を、スマホに持ち込んできたのです。これが今のスマホユーザーに受け入れられるかどうか、興味深いところです。

 以上、基本的には絶賛の言葉を並べてきましたが、難点をあげるとすると、これ、あまりに本格的すぎるゲームであることが欠点でしょうか。プレーに集中力が必要なため、電車の中などで気軽に楽しむというプレースタイルには不向き。ちゃんと腰を落ち着けた場所でのプレーを推奨します。

(ライター 野安ゆきお)

[日経トレンディネット 2016年12月16日付の記事を再構成]

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