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有森裕子 中上級ランナーにインターバルトレーニング

日経Gooday

2016/12/23

マラソン中上級者がぜひ取り入れたいインターバルトレーニングとは?(c) ammentorp-123rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

五輪マラソンメダリストの有森裕子さんが、トップアスリートならではの深いランニング知識を基に、楽しく長く走り続けるためのコツをお届け。中上級ランナーがレベルアップするための練習について解説します。

早いもので2016年も残すところあとわずかとなりました。マラソンシーズンは今が本番。ケガをしないようにしっかりと体を温めて準備をし、練習後のメンテナンスも忘れずに行ってレースや練習に挑んでください。

今回は、記録を狙いたい、サブスリー(フルマラソンで3時間を切るランナー)、サブフォー(フルマラソンで4時間を切るランナー)といった中上級者向けのトレーニングのお話をしたいと思います。

■タイムを縮めたいなら心肺機能を高める練習は必須

ランニングクリニックなどでお話をしていると、「どんな練習をしたらタイムが上がりますか?」というご質問を多くいただきます。もちろん、あらゆる要素の強化が必要ですが、そのうちの1つとして、「心肺機能を高める練習は必須だ」とお答えしています。その練習がしっかりできていれば、レース本番では楽に走れますし、苦しくなった時に、自分の能力の“もう一段階上の力”を出しきる練習でもあるので、フルマラソンの35km以降の最も苦しい状況を乗り越えられ、ラストスパートができる。それが自己ベストの更新につながります。

心肺機能を高めるために最も効果的な練習は、「インターバルトレーニング」です。

インターバルトレーニングとは、速いスピードのランとゆっくりのスピードのジョグを数セット繰り返すトレーニングです。一定の速い速度で走った後、同じぐらいの距離をジョギングで息を整え、再び速いスピードで走ります。走る距離は違えども、陸上競技では、短距離ランナーも中長距離ランナーも必ず行うトレーニングです。

短いインターバルトレーニングなら、200m×10本×2セットくらいでしょうか。400mトラックの半分の200mを8~9割の力、もしくは全力で、タイムを計測しながら走り、残りの200mはジョギングしながら息を整え(もしくは1分間の休憩を入れるなど)、スタート地点に戻って再び200m走り、200mはジョギング。これを10本行って、5~10分ほど休憩を挟んだ後に再び、10本走ります。文字にするだけで息があがりそうなトレーニングです(笑)。

インターバルトレーニングを行えば、心肺機能が鍛えられるだけでなく、脚力が強化され、苦しいと感じた後の力の出し方が分かってきます。何よりも、「もうひと頑張り!」という勝負どころでの精神力が鍛えられるでしょう。そして、やりきった後の達成感は、レースへの自信につながります。日常生活でも、つらい仕事を乗り切るための体力作りにもつながるかもしれません。いずれにしろ、ランナーとして成長するにはぜひとも取り入れたい練習です。

とはいえ、初心者がインターバルトレーニングを行うと、身体への負担が大きいため、ケガをしやすい側面もあります。体力も消耗しますので、翌日の仕事に支障を来すかもしれません。マラソン練習を開始し、ある程度の体力や脚力がついてからチャレンジしていただきたいです。疲労もたまりますから、レースの本番直前で行う練習でもありません。しっかり走り込みたい冬の時期に、多くて週2回ほど行うことをお勧めします。

インターバルトレーニングは脚がしっかりできてから挑戦しよう。レース直前は避けて。(c)lzflzf-123rf

■ラストスパートを想定し、「苦しい練習」で自分を追い込む

私の現役時代は、インターバルトレーニングは、心肺機能を高めることはもちろんですが、“心身ともに自分をとことん追い込む”ことを目的に取り組んでいたように思います。シーズンオフを迎え、今期の反省から来期の目標を立て、ウオーキングや階段の上り下り、トレイルランなどの脚作りなどを行った後に、強化トレーニングの一環として、このインターバルトレーニングを取り入れていました。

ポイントとしては、「マラソンレースのラストスパートを想定して、自分を追い込む」こと。「もうひと頑張り!の切り替え力」をつけるイメージでしょうか。ですから、長距離練習を終えた疲れた体で、速い動きの練習を行うことが大事なのです。

例えば、私の場合は50kmのロングランニングを終えた翌日に1000mのインターバルを20本行っていました。50kmのロングランを終えた体はかなり疲れていますから、インターバルトレーニングの時は、足はしっかり動けていません。もうパタパタと地に足がついていない状態(笑)。それでいいんです。そんな中でも気力を振り絞って走るという練習がしっかりできていれば、レース終盤の勝負に強くなります。

記録を狙いたいと思っている中上級者のランナーに特に言いたいことは、「練習では苦しんでください」ということです。気持ちいい練習など、練習ではありません!本番のレースでどれだけ楽に気持ちよく走れるかということを目的に、トレーニングを積んでほしいと思います。…ちょっと厳しいことを言いすぎたでしょうか(笑)。

■20~30kmのロングジョグの後に150~200mを5~10本

では、実際にどれほどの距離を走ればいいのでしょうか。ランナーの実力や目的によって、トレーニングの距離はさまざまであり、一概に言えませんが、例えば、20~30kmのロングジョグを行った後に、150~200mの適度な直線コースを5~10本繰り返し走ればいいと思います。全力で走り、ジョギングで息を整えながら戻って来る。その際、腰をぐっと上に引き上げるように意識し、しっかり腕を振って全力で走りましょう。「150~200m先がゴールだ!」とイメージして走ってみるといいでしょう。隣にライバルがいると思って走ってみてもいいですね。自分の能力を引き上げるようなイメージで取り組むことが大事です。また、走るコースをなだらかな坂道にすれば、さらに息は上がり、心肺機能や足腰に負荷がかかります。

最初にも言いましたが、この練習は体に相当負荷がかかるので、膝周りの筋肉の強化など、このトレーニングに耐えられるだけの脚作りの準備期間が必要です。トレーニングの強度を上げる時には、体力や脚力を鍛え、トレーニングに耐えられるだけの“準備トレーニング”を行いましょう。負荷の高いトレーニングに挑むには、しっかりと睡眠を取り、バランスよくしっかり食べて体調を整えることも必須です。

■複数のレースは合理的かつ戦略的に使い分けよう

さらに本気でタイムを上げたいのなら、“タイムを狙うためのレース”を絞って挑戦してください。申し込んで当選したレースはすべて全力で挑む、といった、ある意味、無謀でオーバーワーク気味の挑み方をされているランナーが、とにかく多いように感じます。

もちろん、参加が抽選の場合、どのレースに当選するのか、直前まで分からず、練習のスケジュールを組みにくいという悩みもあると思います。当選して参加費を支払うからには、すべてのレースに全力で臨みたい気持ちも分かります。でも、それでは絶対に記録は狙えません。

プロのマラソンランナーでも、立て続けにレースに出ることはできません。全力でマラソンに挑めば相当な疲労が残りますし、記録が出ないことが分かっているからです。何よりもケガにつながりやすいという怖さがあります。マラソンは過酷です。“数打てば当たる”ような甘いスポーツではありません。

昨今、一般のマラソンランナーの数は本当に増え、「あれ、この人、実業団選手?」と思うようなハイレベルのランナーも目にするようになってきました。仕事以外で、目標を持ってチャレンジできるもの、自己成長ができるものがあるということは、とても素敵なことであり、結果が出れば自信にもつながります。だからこそ、闇雲にレースに出場しまくるのではなく、複数参加したとしても、「このレースは、ビルドアップトレーニングとして活用しよう」「あのレースは前半をスピード練習にして、後半をクールダウンにしよう」「この高速コースでは自己ベストを狙おう」といった具合に、レースを合理的かつ戦略的に活用するようなランニング文化が、そろそろ根づいてもいいのではないかとも思うのです。

普段の練習は1人で行っている方も多いと思うので、多くの人と一緒に走るレースは絶好のトレーニング機会と捉えられます。隣に走っている人をライバルやペースメーカーにすることもできます。そうした意味で、レースは自分の限界を超えるための練習がしやすい機会だとも思います。

長くランニングを続けていくためには、体のメンテナンスを心がけて、ケガだけは気をつけてほしいです。それと同時に、マラソンを通じて、目標を達成できる喜び、自己成長できる喜びが感じられるような機会を、1人でも多くのランナーが得られればいいなあと思っています。

【中上級ランナーが自己ベストを出すための3つのポイント】

ポイント1:強化期間に心肺機能を高めるトレーニングを取り入れる
インターバルトレーニングを取り入れ、心肺機能を高める。例えば、20~30kmのロングジョグを行った後、150~200mぐらいの直線を全力で走り、ジョグで戻ってくる(これを5~10本)など。内容はそれぞれの走力に応じて設定する。
全力で走る際、レースのラストスパートをイメージしながら取り組むことが大事。疲労がたまるので、脚がつりやすい人は、ジョグで戻る時にふくらはぎを伸ばすようなストレッチなどを取り入れてもいい。
ポイント2:厳しい練習をこなせるような準備をしっかり行う
高い負荷がかかる練習はケガと隣り合わせ。せっかく成長しようと思って取り組んでも、ケガをすれば本末転倒になる。厳しい練習をこなすことができる体力や脚力をしっかりつけてから挑むようにしよう。
また、十分な睡眠やバランスのいい食事をしっかり取ることも練習に挑むには大事。ストレッチや練習後のメンテナンスも忘れずに。
ポイント3:勝負どころのレースを1本に絞る
複数のレースに当選するなどして出場する場合、全てのレースで記録に挑むのではなく、本命を1本に絞る。記録を狙うレース以外は、自分なりの目的を設定し、トレーニングの一環として活用しよう。

(まとめ:高島三幸=ライター)

■この人に聞きました

有森裕子(ありもり ゆうこ)さん
元マラソンランナー。1966年岡山県生まれ。バルセロナ五輪(1992年)の女子マラソンで銀メダルを、アトランタ五輪(96年)でも銅メダルを獲得。2大会連続のメダル獲得という重圧や故障に打ち勝ち、レース後に残した「自分で自分をほめたい」という言葉は、その年の流行語大賞となった。市民マラソン「東京マラソン2007」でプロマラソンランナーを引退。2010年6月、国際オリンピック委員会(IOC)女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した。

[日経Gooday 2016年11月8日付記事を再構成]

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