DC専用投信を徹底調査 リターンは平均年3%超QUICK資産運用研究所 高瀬 浩

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来年1月から加入対象者が大幅に広がる個人型確定拠出年金(DC、愛称iDeCo=イデコ)。投資信託で運用すると実際のリターンはどんな状況になるのか。

 約350本のDC専用投信について、11月末まで10年間毎月積み立てを継続した時のリターンを調べたところ、平均で年率3%超になった。DCでは最長40年あまりの長期積み立て投資が可能となるが、長い年月の間には予期せぬ市場の急変がつきものだ。思わぬ痛手を負わないためにも資産分散が肝心になる。

基本は長期積立投資

 DCでは毎月一定額の拠出金(掛け金)を投資に回すので、投資スタイルの基本形は「ドル・コスト平均法」とも呼ばれ、投信を少額でコツコツ買っていく積み立て投資となる。そのうえで、毎月の掛け金を分割して複数の投信を買う分散投資や、積み立てた投信を解約して入った資金をまとめて別の投信の一括購入に充てるスイッチングも可能だ。

 DCでの投信は一般の投信と異なり、販売会社ではなく運営管理機関(販社との兼業も少なくない)を通じて売買する。そのため、購入時の販売手数料は一切かからず、その代わり運営管理機関や国民年金基金連合会などに毎月、口座管理手数料を払う仕組みだ。ただ口座管理手数料を払っても、課税所得のない専業主婦などを除き、掛け金は全額所得控除されるので、通常は節税額の方が手数料よりもずっと大きい。

 DCは自らの投資判断、自己責任による年金運用になるが、DCで投資可能なのは投信や元本確保型の定期預金など運営管理機関が選定した商品に限られる。

「複利効果」を生かす

 DCの資産運用の成果は積み立てた累計の拠出額を基にして、投資資産全体の時価がどれだけ増えたかで決まるので、積み立てのリターンは累計拠出額に対する資産時価の比率になる。例えば、毎月1万円の掛け金を40年間、A投信の購入に充てて最終的な積み立てリターンが10%になった場合、掛け金額計480万円に対し、48万円の収益が得られたことを意味する。

 年ごとのリターンは小さくても、長期で累積するとリターンが年を追うごとに雪だるま式に膨らんでいく。この「複利効果」を理解し、長期の積み立て投資に臨むのが肝心だ。

 例えば、年率1.8%のリターンが20年間継続すると累積リターンは43%に達するが、投資期間が40年間と2倍に延びると累積リターンは倍以上の100%、つまり、資産の時価が投資額の2倍になる。同様に、年率3%だと20年の累積リターンは81%、40年累積リターンは226%といった具合だ。

 DCのみで売買可能な専用投信の多くは分配金を出していないが、たとえ分配金が出る投信であっても、現金で受け取る選択肢はなく、分配金は非課税で自動再投資される。

ハイリスク投信の方が妙味

 具体的にDC加入者が投信で資産運用をした場合、どんな成績になったか、DC専用投信を10年積み立て投資した場合と5年積み立て投資した場合のリターンを測ってみた。現在、5年以上運用実績があるDC専用投信は約350本あり、純資産総額(残高)は合計3.8兆円近くに上る(2016年11月末時点)。

 このうち、主な投資先を国内株式、海外債券など投資対象と地域に分けて、残高の大きな専用投信をピックアップした(表A)。対象投信全体の積み立てリターンの平均・最大・最小も併せて集計した。リターンは信託報酬など投信運用にかかるコストは控除後だが、口座管理手数料などの諸費用は控除していない。

 10年間の積み立てリターンの平均は年率3.2%、最小では年率0.1%とかろうじてプラスを維持し、元本割れを免れている。リターンが最小となったのはリスク階級が「1」の低リスクファンドであり、全般に運用成績は堅調だ。リスクをとった投資家は今のところ報われており、「成功体験」を実感し始めているかもしれない。

 中でも、ハイリスクの株式や不動産投資信託(REIT)に投資するタイプの投信のリターンが高い。ハイリスク投信は基準価格の上下へのブレが大きいので、「投資タイミングを計らない機械的な継続投資により、基準価格が下落して安くなった時に多く買い、将来の反発上昇を待つ」という積み立て投資の特性が生かせるためだ。

 実際、10年積み立てリターンが100%と対象投信中で最大となった国内REIT型残高1位の「野村J-REITファンド(確定拠出年金向け)」を例にとると、金融危機直後の08年10月末には基準価格が大幅下落して積み立てリターンがマイナス40%超まで拡大した過去がある。それから現在まで8年の間に基準価格はV字型の回復をたどった。

分散とリバランスが肝心

 ただ、運用期間が長期化すればするほど、予期せぬ市場の混乱に備えておくことが重要になる。

 過去40年間の日経平均株価とダウ工業株30種平均(NYダウ)の円換算値の値動きを比較し(グラフB)、日経平均、NYダウ・円換算に40年前から毎月末積み立て投資したと仮定した場合のリターンの推移を示した(グラフC)。

 日経平均の場合、バブル期の1989年末には4倍超(325%)まで積み立てリターンが膨らんだが、40年たった現在の積み立てリターンは53%(年率1.1%)にとどまる。バブル期に日経平均を高値で購入し続けた結果、40年経っても平均購入単価が高止まりしているためだ。40年間の年金運用成果としては少し物足りない。

 これに対し、NYダウ・円換算の40年積み立てリターンは371%(年率約4%)。さらに、日経平均とNYダウ・円換算に毎月半額ずつ拠出した場合の40年積み立てリターンは212%(年率2.9%)で、今に至るまで、積み立てリターンがマイナスに陥ることはほとんどなかった。

 なお、両指数とも実際に投資できたとすると、指数組み入れ銘柄の配当金から運用コストを差し引いた分がリターンに上乗せになり、そのうえで複利効果も働くので、実際のリターンはこれよりも大きくなる。

 40年前は日経平均が4500円台、NYダウは940ドル台、1ドル=約300円であり、当時と今では金融市場を取り巻く情勢が相当異なっている。今から40年後にNYダウ・円換算が日経平均よりも有利かどうかを想定するのは不可能に近い。

 不確実性が渦巻く資産運用では「過去の延長線上で、将来はこうなるはず」という決め付けは禁物だ。リスクの高い単一投信に長期投資すると、大きくもうかる可能性がある半面、多額の含み損を出したり、最終的に物足りなさを覚えたりする可能性とも裏腹だ。

 DCでの資産運用では元本割れリスクがつきまとうが、リスクをとらなければ年金資産は増えない。常にベストを追い求めるのは不可能と割り切り、運用コストにも目配りした資産分散が欠かせない。半年や1年ごとなど定期的なリバランス(資産配分の再調整)も心掛けたい。

 自ら投信を選択し、その組み合わせ配分を決めることが難しいなら、複数の資産に分散投資するバランス型ファンドも選択肢になる。例えば表Aに示したように、世界の株式と債券に分散投資するバランス型の「三菱UFJプライムバランス(確定拠出年金)」の安定成長型や成長型は、10年積み立てリターンが年率3%台とまずまずの成績を残している。

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