東京五輪の新3種目、若者に人気 用品や施設に賑わいスケートボード/スポーツクライミング/サーフィン

サーフボードが入る車を購入した池田紀行さん
サーフボードが入る車を購入した池田紀行さん

2020年東京五輪で新種目に決まった「スケートボード」「スポーツクライミング」「サーフィン」が今、熱い。若者らの人気を集め、専門の学校や専用の住宅まで登場。もともと個人が遊び感覚で始められるスポーツで、ファッションと親和性が高いだけに流行にも直結しやすい。五輪で注目度もアップ、新種目が消費に新風を吹き込む。

「プロのスケートボーダーになって海外で活動したいから、この学校を選んだ」。そう話すのは中学3年生の加藤好真さん。彼が入学を決めた学校とは、日本初のスケートボードの高校だ。

専門学校運営のバンタン(東京・渋谷)が4月に開校する「スケートボード&デザイン専攻」は世界で活躍するプロスケーターを育成。通信制高校と提携し、高校卒業資格も取得できる。

閉店後、スケボーコートになるセレクトショップ「MORTAR」(東京都渋谷区)
東京・渋谷のスケーターファッションのセレクトショップ「MORTAR」。月2回、スケボーを滑れるコートに様変わりする。

国内のスケボー人口は2万人とみられ、1400万人以上の米国とは雲泥の差だが、「その分ポテンシャルがある。特に10代に人気があるのが開校の決め手」と細井信宏部長は話す。

映像編集、デザイン教育、イベント企画――。特徴はトレーニング以外も学べるところだ。実際、プロスケーターでウェブやファッションのデザイナーとして活躍している人は多く、スポーツのなかでも「カルチャー性が強い」。

11月下旬の午後9時すぎ、スケーターファッションのセレクトショップ「MORTAR」(東京・渋谷)。閉店後の店内では陳列していた洋服が片付けられ、スケボーができるスペースが突如として現れた。

「海外の好きなスケーターのファッションを参考にしている。格好いいんだよな……」。華麗にジャンプをしていた都内在住の男子(16)は話す。Tシャツに細身のパンツ、白のキャップがアクセントになった今どきのスタイル。今、ファッションにも熱視線が注がれている。

3月に開業した同店は40~50ブランドを扱い、どれも街中で着ても格好いいものばかり。スケーターブランドは「ニューヨークやロンドンでは、ハイブランドと並んで紹介されている」と野尻幹哉ディレクターは話す。客層は中学生から40代と幅広く、最近は女性も増えている。

商業施設も注目する。11月、名古屋パルコ(名古屋市)にオープンしたのが、東京と大阪に続いて国内で3店目となる米国のスケーターブランド「HUF」。「ファッションブランドとして育成できる」(パルコ)と導入を決めた。かつては不良の遊びといったイメージもあったスケボーだが、今やどこ吹く風だ。

スポーツクライミングは、老若男女問わず幅広く人気を集める。日本山岳協会によると、国内の愛好者数は約60万人、ジムの数も435(15年)と前年比約3割増えた。

ボルダリングは婚活イベントにも採用されている(東京・吉祥寺のエナジークライミングジム)

東京五輪では到達できた高さを争う「リード」、ロープを使わず複数のコースを登る「ボルダリング」、速さを競う「スピード」の3つを組み合わせた複合種目となる。とくにボルダリングは誰でも気軽に始められ、全身運動になることから身近なスポーツとして定着。最近は意外なイベントにも採用されている。

「左足をもう少し伸ばして」「あー、そこそこー!」。11月19日、東京・吉祥寺のジム。男女約30人が参加した婚活イベント「ゼクシィ縁結びパーティー」の一幕だ。

グループに分かれ、1人ずつ色とりどりの無数の突起物(ホールド)が取り付けられた壁を登る。見ている人が自然にアドバイスをかけ、仲良くなる男女も。初めてボルダリングに挑戦した30代の女性は「1人でやるのはちょっとと思ったけど、皆で教え合って楽しい体験になりました」。

担当者は「他のスポーツに比べてもコミュニケーションが生まれやすい」と指摘する。首都圏で同イベントを毎月複数回開催し、毎回、ほぼ満員となる盛況ぶりだ。

千葉・西船橋では分譲マンションでボルダリングができる住宅(3LDK)が登場した。高さ約4.6メートルあるリビングに専用の壁を設置。難易度は自由に変えられ、街中にあるジムと比べても大きな遜色はない。価格は約3780万円。

中古マンションを改修して作ったカンシン(船橋市)の田中浩一さんは「天井の高さを何とか生かしたいと思っていた時に、昨今、人気が高まっているボルダリングがひらめいた」と説明する。仕事帰りに自宅でちょっとボルダリングした後に夕ご飯――。こんな人が出てくるのも近そうだ。

12月3日朝、神奈川県・七里ガ浜。薄めのグリーンと白の車体がかわいらしいフォルクスワーゲンのワーゲンバスの横で、サーフボードを抱えた池田紀行さん(43)がたたずむ。サーファーの象徴として米国西海岸などで走っている車で、約300万円の中古車を買った。

2年前からサーフィンにハマり、ボードがすっぽり入る現在の車に白羽の矢を立てた。「海と自宅の行き来がアトラクションに乗っているみたいに楽しいんです」。偶然にも前回の東京五輪が開かれた1964年製だ。

最近は同・稲村ガ崎に土地も購入。外から直接シャワールームに入れる家を建て、6月には東京から引っ越す。いい波を待つなど忍耐も必要なスポーツだが、「上達した瞬間にすごい達成感を感じられる」。

日本サーフィン連盟によると、国内のサーフィン人口は約200万人にのぼる。「東京五輪での採用決定を機に注目度が高まり、プレーヤーの裾野が一層広がってくれれば」と期待する。

サーフィンの導入として注目されているのが、スタンドアップパドル・サーフィン、略して「SUP(サップ)」。ボードに立って、パドルでこぐ水上スポーツだ。

サーフィンよりは比較的簡単で波のない時も楽しめる。体験人口は10万人超とみられ、「この5~6年で急速に増えた」(日本SUP振興会)。

「(物件の)内見に行った日に浜まで行ったらサップをやっている人がいっぱいいて。引っ越しと同時に始めました」

外資系のIT(情報技術)企業で働く原田豪さん(41)は、ダイビングなどもともとウオータースポーツ好きだったこともあり、昨年7月、東京・港から鎌倉市に引っ越した。

妻と子どもと3人で住むのは海まで徒歩5分のマンション。夏はほぼ毎日、出勤前に早朝に沖まで出る。「富士山や江ノ島を見ながら、アイフォーンで音楽を聴いてぼーっとするのが最高」と原田さん。最近は「小学生の頃父とやっていていい思い出がなかったサーフィンも、再び始めた」。

五輪新種目は誰もが楽しめるスポーツとして広がり、ライフスタイルも変える力を秘めている。