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海辺の別荘、古民家…暮らす旅で過ごすとびきりの日常

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NIKKEI STYLE

「暮らすような旅」を楽しむ人が増えている。ホテルや旅館に泊まるのではなく別荘や古民家を借りて、観光を主な目的とするのではなく、その場所の住人になったつもりでゆったりとした時間を過ごす――。そこには普通の休暇とは違う、どんな暮らしがあるのだろうか。

◆      ◆      ◆

調べてみると、STAYCATION(ステイケーション)という社名の会社が東京・渋谷にあった。「STAYCATION」は、「留まる」「滞在する」という意味の「STAY」と「休暇」の意味をもつ「VACATION」を組み合わせた造語だという。自社物件の貸し出しのほか、個人が持つ別荘の短期賃貸を手がけている会社で、ホームページには、葉山や鎌倉、江の島など首都圏に近い場所を中心に北海道、石垣島など21の物件が並んでいる(2016年12月現在)。「暮らすような旅」が見つかるのではないか。興味をひかれて、早速出かけてみた。

オーナーのこだわりが凝縮した別荘が「我が家」に

リビングがガラスの壁に囲まれた、窓の外に青い海と空が広がる海辺の別荘、トルコの奇観「カッパドキア」の洞窟の家よろしく白い壁に開いた"穴"がベッドになった別荘……。STAYCATIONの別荘はどの物件も、すこぶる個性的だ。「なるべくその物件ならではの印象的な暮らしが体験できる施設を選んでご紹介しています」と同社広報の清水絢子(あやこ)さんは言う。

別荘というのは、それを建てる人にとっては大抵、2軒目の家で、1軒目には実現できなかった思いを詰め込む。だから、個性が際立つ建物が多いのだという。「その人が何を大切にしているのかが、前面に出るんです。例えば、箱根にある別荘はオーナーが音響に非常にこだわられる方で、リビングはスピーカーの性能を最大限に引き出す天井高をはじめ、ソファの位置まで最高の音を楽しめるように考えられています。北鎌倉の古民家の別荘は、オーナーの方が古い建具などがお好きで細部までこだわり抜いた作り込みをされていて、『規格が合わなくてもこの建具を使いたい』と、江戸間の規格で建てられた別荘に、少しはみ出してしまう京間規格の扉を使用されています」。なるほど、別荘に滞在するだけで、オーナーの「日常」がほんの少しのぞけるわけだ。

最初にイメージしたのは、すてきな別荘で本を読んだり、周りを散歩したり、地元のお店で買い物をしたり。格別普段と変わらないことをしながらゆったりとした時間を過ごす旅だった。一生、こんな家には住めないだろうという、味わいがあったり、おしゃれだったりする別荘に滞在すれば、それだけで楽しいひとときが過ごせそう――。ところがだ。利用者に話を聞いてみると、施設を利用する、もっとずっと豊かな理由がみえてきた。

バーベキューや満天の星空を家族水入らずで満喫

話をしてくれたのは、安田綾香さん。1級建築士としてデザイン会社の役員の仕事をしながら、1歳から7歳まで3人の子育てに奮闘中の女性だ。「大家族なので、普通のホテルではムリ」と、この夏、STAYCATIONの石垣島の貸別荘「サウス シー 石垣」を利用した。

「3人も小さい子がいると、旅行中、夫と2人だけで面倒はみられないので、子守をしてもらうために両親に一緒に行こうと声をかけることになる。すると、じゃあ、妹家族も呼ぼうとなり、いつも大人数になって……。昨夏は沖縄のホテルを利用したのですが、ホテルだと子供たちはワーッと走り回れないし、続き部屋を取るのだって、家族みんなで部屋に集まるのだって難しい。『サウス シー 石垣』は広くて部屋数も多く、お風呂やトイレがたくさんあったことが決め手になりました」(安田さん)

石垣島の別荘には100坪(330平方メートル)はあろうかという大きな芝生の庭がある。到着するなり子供たちは、歓声を上げて庭へと駆け出した。

「ホテルにはホテルの良さがある」と安田さんは言う。レストランに行けば労せずしておいしい食事にありつけるし、タオルだって毎日変えてもらえ、すべての労働はお任せ。「箱」を借りるだけの別荘では、食事は自分で作らなくてはいけないし、掃除も洗濯も自分たちの仕事になる。「でも、着いた瞬間から、『今日からここが自分の家だ』と思える。快適に暮らすために、自分たちで守っていかなきゃいけない場所になって、愛着もわきます。プライベードな空間で、誰にも気をつかうことなく過ごせるのもありがたい」(安田さん)。子どもたちはつかの間の「我が家」を拠点に、海へプールへと毎日繰り出し、心ゆくまで島の暮らしを楽しんだ。

安田さんの別荘での暮らしのハイライトは、食事だった。「私の中では、暮らすイコール食卓なんです。だから、家族みんなで食事をする時間を大切にしたかった」。「今晩は何を食べようか」と毎日考え、石垣島の住人になったつもりで地元でしか手に入らない材料を探しに行く。有名な石垣牛をがっつり食べたいと、何軒も店をまわり冷凍庫の奥からブロック肉を出してもらったり、市場で大きな魚を一匹買いアクアパッツァ(イタリア料理の水煮)を作ったり。「石垣牛のハンバーグがお薦めだと聞いたので、空港で売っていたものを買って、着いたその日に庭でバーベキューしたんですよ」と笑う。

「子育てをしていると、普段はゆっくり座って食事なんてできないんです。子供の世話が優先だから、温かいご飯を食べる時間がない。しかも、子供は食べ散らかすのでイラッとする。でも、石垣の別荘では家の外で食事をしたので、どんどん散らかしていいよ、ってストレスフリー。ゆっくり座っておいしい食事ができるなんて、すごくぜいたくな数日間でした」。別荘での時間は、安田さんが普段は得られない"日常の暮らし"を与えてくれた貴重な日々だったのだ。

そして、1日の最後に現れたのは、頭上に広がる満天の星。ジャングルの中にあるような別荘なので周囲は真っ暗、天の川まではっきり見えたという。"自分の家"から、星で埋め尽くされた漆黒の空を家族みんなで眺めた、「あの体験は何にも代えがたい」と安田さんは振り返る。

ハウスウエディング、展示会……"家"から紡がれる物語

葉山の御用邸の"お隣さん"となる、「Nowhere but Hayama(ノーウェア バット ハヤマ)」もよく利用される施設のひとつ。築90年の古民家をリノベーションした施設で、松林の向こうに一色海岸を望む。玄関を入るとハンモックが出迎えてくれて、2階のテラスにはジャグジーも備える。別荘の近くには、住人が利用する店や市場があり、そうした場所に足を運ぶことで、滞在者たちはその土地での暮らしに自然と溶け込んでいく。

実は、STAYCATIONの別荘や一軒家は旅の拠点となるだけはない。プチ移住体験や企業研修・合宿のほか、ウエディングパーティーの会場や、展覧会、展示会の会場などとしても利用されている。ここでは、和紙製品の企画・デザインを手がけるWACCA JAPAN(ワッカ・ジャパン)が、2015年、展示会を開催した。都内のギャラリーなどではなく、わざわざ葉山の古民家で展示会を開いたのは、「従来のイメージから飛び出し、和紙がもっとさまざまな用途に発展する可能性を感じてもらえる企画展がしたかったから」と同社社長の森崎真弓さん。「会場の居心地の良さから、来場者の方々の滞在時間がとても長かった」。展示会後は、同社に興味を持つ人々の輪が広がったそうだ。

都内から比較的交通の便がいいこともあり、最近この施設では、ウエディングパーティー会場としての利用も増えている。ハウスウエディングでここを利用した宮島(みやしま)信太郎さん・舞さん夫婦は、「海辺で式を挙げ、古民家でアットホームなパーティーがしたかった」と、門を出ればすぐ浜辺が迫るこの施設を選んだ。常日ごろ、古民家での生活とはどんな感じなのだろうと気になっていたので良い体験になったと、20代の舞さんは言う。賃貸契約は1週間だったため、パーティー後、施設にそのまま滞在したが、おしゃれな祖母の家を借りて住んでいるような気持ちになったそうだ。

「新婚のご夫婦の祖父母の方から『昔ながらの日本家屋でパーティーをしたことで、ちゃんと"家"からお嫁に出してあげられたという感じがする』とおっしゃっていただくこともあります」と清水さんは言う。

一方、ペット連れで利用できるこの施設で愛犬を伴いウエディングパーティーを開いた中嶋(なかじま)淳さん・恵真(めぐみ)さん夫婦は、その後同じ葉山にある別のSTAYCATIONの別荘も利用。「愛犬も楽しかった場所は覚えているので、まるで自分の家のようにくつろいでくれた」と喜ぶ。ホテルや旅館ではなく"家"であるということで、さまざまなストーリーが生まれていく。

こうした旅のスタイルを後押しするのは、「バケーションレンタル」と呼ばれる別荘やコンドミニアムの貸し出しが増えていることだ。STAYCATIONの施設の利用者は、16年に前年比35%増加。同社は17年に更に20施設のオープンを予定している。10年ほど前に軽井沢でバケーションレンタル事業を始めたARICA(ありか)は、スタート時2件だった物件が現在は80件(16年12月半ば時点)に拡大。軽井沢以外の場所の別荘も扱うようになった。同社では別荘購入を検討している人のお試し滞在が多いというが、この数年、旅の拠点としての利用者も増加し、現在では半数を占めるようになったという。

一方、高級宿泊施設の予約サイト一休.comは16年11月1日から、「暮らすように泊まる旅」をうたい、バケーションレンタル専用予約サイト「一休.com バケーションレンタル」を開始。同社は主に宿泊施設として開発された別荘やコンドミニアムなど扱い、施設数を急ピッチで伸ばしている。

前身となる会社でSTAYCATIONが08年に貸別荘の事業をスタートした時には、利用者は家族連れの30~40代が多かったというが、最近では20代後半から30代半ばの若い世代も増えているという。この世代は友人同士で利用する人が多く、海で遊んだり、バーベキューしたり。STAYCATIONの別荘は賃貸物件として貸し出されるため、ホテルや旅館のような厳密な定員がなく、1週間ほどの滞在の間に、別の友人を招く利用者も少なくない。旅のようでありながら、どこか自分の日常と近い毎日――。スマートフォンを片手に友人に電話をかけるとき、口にするのはきっと、こんな言葉だ。

「うちの別荘に来ない?」

(ライター 大塚 千春)

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