拾ってつないで4年後の大舞台へ シッティングバレー

野村ホールディングスは日本パラバレーボール協会の協力を得て、シッティングバレーの体験会を開いた(東京・渋谷の東京体育館)
野村ホールディングスは日本パラバレーボール協会の協力を得て、シッティングバレーの体験会を開いた(東京・渋谷の東京体育館)

東京パラリンピックの22競技のひとつにシッティングバレーボールがある。下肢に障害を持つアスリートが座ったままプレーするのが特徴で、サーブやブロック、スパイクの時でも床からお尻が離れるのはルールで禁じられている。小柄な選手が多い日本代表が世界の強豪に対抗するには、座ったまま、すばやく動き、粘り強くラリーを続ける戦い方が有効。一般の人も参加しやすい競技で、拾って、つなげるシッティングバレーを知れば、4年後の楽しみが増えそうだ。

1チームは6人。ネットの高さは男子が1メートル15センチ、女子は1メートル5センチで、相手チームのサーブをネット際でブロックすることができる。サーブ権の有無にかかわらずポイントが加算され、25ポイントを先取した方が1セットを獲得。3セットを先取したチームが勝つ。

シッティングバレーは1980年にパラリンピックの正式種目になった。日本では92年に初めてシッティングバレーのチームが結成され、男子が2000年のシドニー大会に出場。女子は08年北京大会で初出場を果たした。ただ、世界の壁は高く、リオデジャネイロ大会では男女共に出場機会を逃した。

絶対的なエース不在

4年後を見据えて日本代表が飛躍するための鍵は何か。日本パラバレーボール協会の真野嘉久代表理事は日本代表チームの特徴について「体が小さい分、よく動き、正確にボールを上げるのが得意」と指摘する。さらに女子日本代表監督でもある真野氏は「泥くさくてもボールを拾えれば、それでいい。そのために最近は筋トレなどによってフィジカルを鍛え、個人の技術力を高めることを練習の柱にしている」と語る。

シッティングバレーの魅力を語る日本パラバレーボール協会の真野嘉久代表理事

課題となっているのが絶対的なエースの不在という。リオ大会でシッティングバレー男子金メダルを獲得したイランには、身長246センチのメヘルザドセラクジャニ選手がいた。決勝で26本のスパイクを決めて、ボスニア・ヘルツェゴビナを3-1で破る原動力になった。低い視線の球技だが、やはりブロックやスパイクでは身長の高さが武器になる。

現在、日本代表チームには女子12人、男子20人の代表候補がいて、2020年の代表メンバー枠を競っている。女子日本代表の注目選手は49歳のベテランでキャプテンの西家道代選手だ。ロンドン大会で攻撃の要として活躍したエース、小方心緒吏選手も産休から復帰して、大きな期待がかかる。

男子日本代表では、186センチの長身をいかし、シドニー、アテネ、北京大会に出場した田中浩二選手がチームを引っ張る。若手の注目株なら田沢隼選手。「高校時代に『春高バレー』に出場した経験を持つ大学4年生で、バレーボールをよく知っており、20年に向けて期待できる選手」(真野氏)との評価を得ている。

垣根なく楽しめる魅力

日本パラバレーボール協会は学校や自治体、企業などで出張シッティングバレーボール教室や体験会を1年間に20~40回ほど実施している。真野氏は「シッティングバレーは障害者と健常者が垣根なく楽しめるスポーツ。1度失敗しても、2タッチ目、3タッチ目で挽回できて、助け合うことを体験できる」と説明する。

体験会はトスやレシーブの基本などを学んだ後、試合形式に

野村ホールディングスは今夏、真野氏から指導を受けて社内の体験会を開催。「障害の有無に関係なく一緒に楽しめる」「社内で一体的に取り組むならシッティングバレーが数ある障害者スポーツの中で最適」といった感想も聞かれた。シッティングバレーの魅力は車いすなどの特別な道具を必要としない手軽さ。アスリートの応援だけでなく、体験会などに参加し、自らプレーして汗を流してみることもできる。

障害者バレーではシッティングのほか、義足や義手を装着し、立ってプレーするスタンディングバレーや砂浜でプレーするビーチバレーもある。ただ、パラ競技にも採用されていないうえ、国内での知名度もまだ低い。聴覚障害者によるデフバレーもあり、日本デフバレーボール協会が選手の強化や競技の普及に力を入れており、デフリンピックという国際大会で力を競っている。

シッティングバレーは障害者がプレーするバレーボールの中では最もポピュラーといえる。健常者を交えて競技の輪が広がれば、障害者スポーツの普及活動にも弾みがつきそうだ。

(ライター 広川淳哉)

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