五輪控えAIで不審者検出 三菱電機、高齢者ら支援も

三菱電機は人工知能(AI)のひとつで画像の特徴を自ら学ぶディープラーニング(深層学習)を使い、商業施設にいる不審者や社会的弱者を監視カメラでとらえるシステムを開発した。防犯や来店者支援の用途を見込んでいる。観光客の急増が見込まれる2020年の東京五輪・パラリンピックを見越して実用化する。

開発したシステムは、あらかじめ設定した属性の人を自動で見つける。ポリタンクのような危険物を持っているのか、ベビーカーを押しているのか、足元がおぼつかない様子なのかなど、人の動きの属性を設定できる。

実際に三菱電機にデモ映像を見せてもらった。モニターに複数の人が歩いている動画が流れている。ポリタンクを持った人が現れると、すかさずその人を白い枠で囲んだ。人が歩いていくと、枠も一緒に動いてとらえ続けた。

三菱電機セキュリティシステム部の神田英伸部長は「深層学習を使えば、属性を定義するプログラミングが簡単になる」と説明する。

ベビーカーの場合、正面や斜め、側面などの画像データをAIが学べば、自動でベビーカーを押している人を見つける。事例を重ねるごとに精度が高まっていく。

AIを使わず従来の画像認識技術で見つけようとすると、システムがとらえたい人や物を詳しく覚える必要がある。例えば人間について「横幅2に対し、高さが8の比率の物体」「移動速度は速くても時速20キロ」といった複数の項目を設定し、そのうえベビーカーの情報も入力しなければならない。プログラムが複雑になってしまう。

監視カメラ映像から社会的弱者や不審者をリアルタイムに抽出できるようにすることで、商業施設やイベント会場の管理者は、従業員がサポートに動いたり、警備員が駆けつけたりするなど状況に応じて対応しやすくなる。

既存技術との組み合わせも視野に入っている。例えば未来予測だ。

三菱電機は東京大学と共同で、イベント会場と最寄り駅を結ぶ経路の混雑状況を予測する画像解析システムを開発している。深層学習で抽出した人物データなどと組み合わせれば、きめ細かいサービスにつなげられる。

東京五輪・パラリンピックでの実用化を目指しているが、課題が残っている。

実際の需要に見合った精度のあんばいは課題のひとつ。施設側は、特定の個人の入退室などのセキュリティーには高い精度を求める。一方で、あやしい人を見つけるような用途となると、施設によって要求水準は異なる。どのような精度で商品化するかによって、価格も違ってくる。

AIが学習する素材となるデータが多いほど深層学習の精度は高まるが、製品コストは上昇する。神田氏は、データに必要な画像枚数として「100~1千枚単位で十分とする意見があれば、1万枚単位で必要との見解もある」と語り、実用化に向けた絞り込みはこれからとなっている。

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