手ぶら観光スムーズに JTB、訪日客情報を統合管理

2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、JTBなどは、訪日外国人客が手ぶらで観光できるようにするサービスを始める。16年度中の事業化をめざしている。このサービスを支えるのはパナソニックと共同で開発した情報システムだ。訪日客の旅行日程などの情報を統合管理できる。訪日客に幅広いサービスを展開する上で事業基盤となる仕組みにする。

9月上旬、東京都大田区の羽田空港のカウンター。旅行客を装った外国人が端末を操作すると伝票を手渡された。伝票は手荷物をホテルなど宿泊先に宅配便で送るためのものだ。通常は客が手で書く必要があるところ、配送先を端末で確認するなど簡単に済んだ。

昨年9月上旬、羽田空港内で手ぶら観光の実証実験のデモを公開した。

JTBがパナソニック、ヤマトホールディングスと組んで手掛ける実証実験のデモンストレーションの一風景だが、実際には手書きの場合、30分かかることもあるという手続きを1~2分に短縮できるという。JTBの古野浩樹執行役員は「大きな荷物を持ってくる訪日客は、不便さを感じている。ホテルや旅館でも荷物の預かりは負担になっている」とし、多方面の課題を解決できるサービスと期待する。

9月から2カ月間をかけて実証実験を実施。羽田空港や、ホテル6軒に端末を置いて取り組んだ。実証実験では、都内ホテルで午後4時までに受け付けを済ませれば、翌日に箱根や京都、大阪のホテルなどに送り届けるようにした。

これを実現できるようにしたのが、JTBがパナソニックと共同で開発したシステム「トラベラー・リレーションシップ・マネジメント(TRM)」だ。このシステムは手ぶら観光のケースではインターネットを通じてJTBの予約システムと連携し、訪日客の旅行日程といった配送に必要な情報を引き出して使えるようにしたのだ。

訪日客がJTBの海外店舗などであらかじめ申し込んだ情報をもとに日本で配送伝票を発行することで、伝票を手書きする手間を省ける。ホテルや旅館に限らず観光施設では多言語に対応できる人材をそろえるのが難しい中、外国人とのやり取りで時間のかかる申し込み手続きを簡単にできる利点がある。

JTBとパナソニックはTRMと端末を使って、多言語翻訳技術を生かした観光案内のサービスも今年度内をめどに始める。端末では4カ国語で観光情報を表示。多言語翻訳機能も駆使してホテルや旅館などが訪日客との意思疎通を円滑にできるよう支援する。訪日客に人気の体験型レジャーも今後、予約できるようにする。20年に取引先の宿泊施設を含めて5千施設に導入をめざす。

JTBの訪日旅行売上高は16年3月期に668億円と前の期比25%伸びた。海外の37カ国・地域に400を超える拠点があるが、現地旅行会社に需要を囲い込まれているのが実情だ。高橋広行社長は訪日需要の開拓で「日本の企業や自治体は外国人との接点を増やすことが課題だ」と語るが、国内の旅行最大手であるJTBでさえ、多分に漏れず接点を増やすことが急務だ。

今回の取り組みでは日本全国に端末を置き、手ぶら観光など訪日客にとり便利なサービスを提供することで、端末を導入した拠点を「JTBにとって訪日客との新たな接点にできる」(古野執行役員)との深謀遠慮がある。20年の東京五輪に向けて異業種のタッグによる事業創出を進め、強固なプラットフォーム(基盤)を築きたい考えだ。

(新沼大)

[日経産業新聞2016年12月9日付]

今こそ始める学び特集