保活と復職の板挟み 企業と自治体、連携を
男女 ギャップを斬る(池田心豪)
今年の新語・流行語大賞は「保育園落ちた日本死ね」がトップテンに選ばれた。「保活」も広く知られる言葉となった。一昨年は保育園拡大を求める母親たちのデモが注目を集めた。それよりずっと前、1990年代から待機児童対策は行われているが、保育園不足は解消していない。
今月7日まで厚生労働省は子が2歳まで育児休業の延長を可能にする改正育児・介護休業法案を審議してきた。待機児童問題に悩む自治体からの要請を受けての改正だという。
最近の企業では出産・育児期のキャリアロスを小さくするため、産後はなるべく早く復職することが奨励されつつある。その観点に立てば、改正法は女性活躍の流れに逆行するように見える。だが、保育園を増やしても増やしても待機児童がゼロにならない自治体の苦悩にも耳を傾ける必要がある。
働く母親の増加にともなって保育需要は拡大し続けている。国立社会保障・人口問題研究所が昨年実施した「第15回出生動向基本調査」によれば2005~09年に第1子を出産した女性の就業継続率は40.4%であったが、直近の2010年~14年は53.1%に上昇している。この割合を60%、70%、80%と伸ばしていくことは女性活躍の観点から望ましいことだが、受け皿となる保育の整備は追いつくだろうか。現状でも財政的制約は大きく、保育士不足も深刻であるのに。
女性の就業継続率が高い米国では、日本よりずっと高い保育料を払って民間の保育サービスを利用することが一般的である。スウェーデンも女性の就業継続率は高いが、こちらは公的保育が充実している。低額で保育を利用することができ、待機児童もいない。だが、税金が日本より高いことでも有名である。
保育にはお金がかかる。この現実とどう向き合いながら女性活躍を推進していくかを考えないといけない。一つの方向性として保育需要緩和は今後も検討課題になるだろう。
現状は育休も保育も皆が利用できるようにはなっていない。会社からは「早く復職を」と言われ育休を取得できず、地域では「育休を」と言われ保育園に入れない、という板挟みに女性が悩むことがないよう、企業と自治体の連携が求められる。
〔日本経済新聞朝刊2016年12月17日付〕
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