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「ああ、めっちゃムズい」 有安杏果、心が折れそう ももクロVS伝統工芸/有安杏果、「笠間焼」に挑戦(3)

2016/12/16

ももクロの小さな巨人、有安杏果さんが初めての陶芸に挑戦中

 ろくろの土と格闘し、「負けないっ!」と声を上げる有安杏果さん。いったい何に負けないのか――茨城県立笠間陶芸大学校に一日入学したさんは、ろくろの前に座って、お椀の中の空洞を作る作業のやり直し。何度かトライを繰り返すうちに集中力が高まっていく有安さん。次第に完成が近づいてきます。今回は成型を終えたあとの、釉(ゆう)がけまでを体験しました。「うわ! もっとマットになった。乾くのハヤッ!」(有安)。【第2回はこちらから】

■「指に力を入れて。でも手は動かさずに」「めっちゃムズい」

 前回から引き続き、粘土を飯わんの形にしていく「成形」に挑戦している有安さん。笠間陶芸大学校で学ぶ大和田友香さん、弓野しおりさん、石川晃平くんが手取り足取り教えてくれてなんとか形になったものの、あと一歩のところで崩れてしまい、やり直しとなってしまいました。

同世代の学生たちに、陶器作りの説明を受ける有安さん

 気持ちも新たに、有安さんがろくろの前に座ります。

 まずは底となる部分をおおまかに作る「底を取る」からスタート。親指で上から土を押し下げて、真ん中に空洞を作っていきます。ここまでは順調です。

弓野さん 次は粗(あら)延ばしです。親指とほかの指の腹でつまむように上に上げて、だいたいの形を作ります。

「粗延ばし」もスムーズ

 スムーズに粗延ばしをしていく有安さん。コツをつかんできたようで、余裕の発言も……。

有安さん 土の感触が気持ちいい~。

弓野さん 粗延ばしができたら、手をキツネの形にして、土をつまんで上にあげていきます。

有安さん それだ。それが難しいんだよなぁ。えっと……こう?

粗延ばしが終わったら、手をキツネの形にして土を上に伸ばす作業ですが……

弓野さん もっと指に力を入れて。でも、手は動かさずに。

有安さん ああ、めっちゃムズい……。

 心が折れそうになる有安さん。そこで生徒の大和田さんが手を添えて、アシストしてくれることになりました。

大和田さん 挟んだ指の力で、上に引っ張る感じです。杏果ちゃんの指は土の回転に負けそうになるので、負けないように。

有安さん 負けないっ。うー、負けないっ!

■油断大敵。完成直前に「助けてー!」

 何度かトライしてはやり直し、そのたびに集中力が上がっていく有安さん。徐々にろくろの回る音だけが響くようになっていきます。

大和田さん うまくなってますよ。

 その言葉通り、だんだん飯わんの形になってきました。笠間陶芸大学校の尾形尚子先生も「うん、すごくいい感じ」と太鼓判。

尾形先生 じゃあ、このくらいで作品にしましょう!

 形ができたところで、ろくろから切り離します。使うのはシッピキと呼ばれる糸。前回はここで失敗し、やり直しになってしまいました。

 今回は慎重に、でも勢いよく糸を引っ張る有安さん。見事、切り離しに成功したようです。しかし持ち上げようとしたとき、せっかく作った飯わんが粘土の上から転げ落ちそうに。

有安さん うああ~! 助けてー!

 すんでのところで、弓野さんが飯わんをキャッチ!

危うくろくろから落ちそうになった作品を弓野さんがナイスキャッチ

 型崩れも避けられたようで、これをもって「成形」がコンプリートとなりました。有安さんにも生徒さんたちも笑顔がこぼれ、拍手が湧き起こります。

大和田さん 初のろくろ体験、いかがでしたか?

有安さん 難しかった~。私は子どもの頃、あまり土いじりとかしなかったタイプなんですよ。でも今日、土を触っていて気持ちいいなと思いました。クセになりそうです(笑)。

できあがった有安さんの陶器3点。これに大和田さん、弓野さん、石川くんの3人が色をつけて完成させます。できあがりは最終回で紹介します

 ここでもう一度、陶器を作る工程を再確認しましょう。

1 土練り(粘土を作る)
2 成形(ろくろなどで形を作る)
3 乾燥させて素焼き(焼いて粘土を軽く焼き固める)
4 釉(ゆう)がけ(焼くとガラス質の皮膜になる釉薬<ゆうやく>を付ける)
5 本焼き~完成

 今は2の「成形」が終わったところです。作った陶器は乾燥させてから素焼きを行い、その後で色を塗ります。本当は有安さんが自分で先ほど作った作品に色をつけたいところですが、乾燥と素焼きには時間がかかるため、すぐにはできません。そこで有安さんの作品には、大和田さん、弓野さん、石川くんがそれぞれ色をつけて完成することにします。

有安さん よろしくお願いします! 晃平くんも頼んだよ(笑)。

■「釉薬で、こんなに色が変わるんだ~」

尾形先生 せっかくなので陶器に釉薬をつける「施釉(せゆう)」(釉がけ)も体験してみませんか?

有安さん やってみたい! でも釉薬って?

 釉薬とは、焼くとガラス質の膜を作り、器に光沢や防水・防汚の機能をもたせてくれる「うわぐすり」のこと。釉薬にはいくつもの種類があり、その調合や焼き方を変えることで、作品にさまざまな色を付けることができるそうです。

 その仕組みを勉強するために、有安さんが訪ねたのが「釉薬研究室」でした。

釉薬研究室にやってきました

大和田さん 釉薬は絵の具みたいな液体なのですが、それのもとになるのは粉です。何種類かの粉を調合することでいろいろな色を作ります。少し変えるだけで全然違う色になるんです。

弓野さん 色は焼き方でも変わってきます。大きく分けると「酸化」と「還元」という2種類があるんですが、同じ釉薬を塗った陶器でも、酸化で焼くか還元で焼くかで、完成したときの色は全然違うんです。

 「酸化」と「還元」の大きな違いは、窯の中の酸素量。酸化は窯に十分な酸素を送り込んで完全燃焼させますが、還元は酸素量を少なくし、あえて不完全燃焼させます。それにより、同じ釉薬や粘土でも、色を大きく変えることができるそうです。

 尾形先生が見せてくれたのが「テストピース」と呼ばれる1枚のボード。同じ粘土と釉薬を使った陶器を、「酸化」で焼いた場合と「還元」で焼いた場合の違いを記録したものです。

左が酸化で焼いたもの、右が還元で焼いたもの。同じ土、同じ釉薬でも焼き方が変えるだけで、緑になったり赤になったり変わってくるのです

有安さん 同じモノなのに焼き方を変えるだけで、緑になったり、赤になったりするんですね。

 どんな調合をし、どんな焼き方をすれば、どんな色で焼き上がるのか。釉薬研究室では、それらの実験を繰り返し、データとして保存しています。そのデータを参考にすれば、まだ経験の浅い学生たちでもイメージに近い色が出せるようになります。

研究室にあるテストピースは、陶器を作るときに貴重な資料になります

尾形先生 プロとして活躍している卒業生も、作品づくりの参考にやってくることがあるんですよ。では実際に施釉を体験してみましょう!

■単純なようで意外と難しい「施釉」を体験

 そしてやってきたのは「施釉室」。液体になった釉薬がたっぷり入ったバケツと、釉バサミと呼ばれる道具が用意されています。

ここが施釉室です

 バケツの横に座った大和田さんが、自分の作品を釉バサミでつかむと、釉薬の中に沈めます。3秒ほどつけ込んで引き揚げると、器にまんべんなく釉薬がついています。その釉薬が色を変えながらあっという間に乾いていきます。

有安さん うわ! もうマットになった。乾くの、ハヤッ!

あっという間に乾いていく釉薬にびっくり

有安さん 施釉って、ハケとかで塗っていくのかと思ってしました。

大和田さん ハケを使う方法もありますが、それだとムラができやすいので、今回はこの方法で挑戦しましょう。

 有安さんが釉バサミを持ちました。器を持ち、おそるおそる釉薬に沈めて引き揚げると……。

おそるおそる陶器を釉薬の中に沈めていきます

 なんと内側に釉薬がついていません。

よくみると陶器の内側に釉薬がついていない部分が……

有安さん うわー、タイヘン!

 このままの状態で焼くと、釉薬がついていない部分だけ茶色っぽくなってしまうそうです。

一部分だけ釉薬が塗れていません

大和田さん もう一度、別の器でやってみましょう。思い切って、ドブンとつけちゃって大丈夫です。

 言われた通り、ドブンと沈める有安さん。引き揚げると、今度は内側にもうまく釉薬がついています。しかしよく見ると、1カ所、あやしいところが……。

有安さん ああっ。穴が開いてる!

今度は「穴が開いている!」

 釉薬が固まる前に、角度を変えてピンチを切り抜けようとする有安さん。

有安さん おっ? うまくごまかせたかな(笑)。

 どんどん慣れてうまくなる有安さんに、生徒さんたちから「おお~」と感嘆の声が上がります。有安さんも、得意げな表情を隠せません。

 こうして施釉したものを、高温の窯で「本焼き」して完成です。さて今回、有安さんが施釉した陶器は本焼き後、どんな色になるのか。そして有安さんがろくろで作り、大和田さん、弓野さん、石川くんが色をつけて焼いた陶器はどんな作品に仕上がるのでしょうか。実は笠間陶芸大学校の教師も「いいですね」とうなる作品に仕上がったのです。完成品は最終回で紹介します。

これらが本焼きを終えるとどんな色になるのでしょうか
「OF」は「酸化」の略語です

次回「詞やメロディーを考えるときは本当に苦しい」はコチラ

ももいろクローバーZ
百田夏菜子、玉井詩織、高城れに、有安杏果、佐々木彩夏で構成されるアイドルグループ。2008年5月に結成(当時のグループ名は「ももいろクローバー」)。観客数十人の路上ライブからスタートし、わずか6年で国立競技場ライブを実現。大会場のコンサートと並行して、小さな会場でのライブやユニークなイベントなども積極的に企画、ファンを驚かせ、楽しませている。12月23日、24日は恒例の『ももいろクリスマス2016 ~真冬のサンサンサマータイム~』を幕張メッセ(千葉市)で開催する。

有安杏果
1995年3月15日生まれ。埼玉県出身。幼少期から子どもタレント、キッズダンサーとして活躍。2008年、中学1年生のときにスターダストプロモーションにスカウトされる。09年に、ももいろクローバーへ加入し、現在に至る。イメージカラーは緑。16年には横浜アリーナで1万人規模のソロ・コンサートを成功させ、楽曲制作にも携わったミニアルバムも発表した。来年の6月から7月には東名阪3会場で初のソロツアーを行う予定。
ももいろトラディショナル
デビュー当時のコンセプトが実は「和をモチーフにしたアイドル」だった彼女たちが、日本の伝統工芸を学ぶ連載。メンバーが伝統工芸の仕事現場を訪れ、作る過程を勉強し、実際にもの作りを体験。さらにその道で頑張っている同世代の若者と夢や目標を語り合うという詰め込みすぎな企画です。

(文 泊貴洋/写真 中川真理子/ヘアメイク 谷川一志=kind/企画協力 佐々木健二=ジェイクランプ)

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