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トランプ相場、逆張りで挑む個人 信用取引活用

2016/12/18

 「トランプ相場」で個人投資家が逆張り姿勢を強めている。相場に逆らうように、株価が上昇すると利益確定売りを出し、相場の下落局面では買いを入れる手法だ。巧みな戦術を支えるのが「信用取引」。日経平均株価は9日に年初来高値(1万8996円)を付け、先高期待も膨らむ。一方、信用売り残は約7年ぶりの高水準にある。着実な収益とリスク回避に向けた活用法を探った。

 「むしろ個人はトランプ相場の過熱感を意識し始めている」。楽天証券経済研究所の土信田雅之氏は、足元の投資家心理をこう分析する。日経平均株価はトランプ米次期大統領が決まって以降、1万6100円台から12月9日に一時1万9000円台まで急騰。「年度末にかけ2万円乗せ」の声も出始めた。

 個人投資家は「安値買い・高値売り」の逆張り姿勢が多い。短期間で急騰した相場ほど反動安の谷は深い。相場をリードしてきたトヨタ自動車や三菱UFJフィナンシャル・グループなど主力株に個人の売りが膨らめば、日本株全般に下げ圧力がかかりやすい。

 波乱相場で注目の投資手法が信用取引だ。手持ちの資金で株式を売買する現物取引に対し、信用取引は資金や株式を外部から借りて売買する。お金を借りて現物株を買うのが「信用買い」、借りた株式を空売りして後日買い戻すのを「信用売り」という。

■跳ね上がる逆日歩

 中でも信用売りは相場の下げ局面でも利益を狙いやすい。東京証券取引所によると、12月2日時点の信用売り残高は9332億円と、約7年ぶりの水準まで積み上がっている。個人は米大統領選後の1カ月間で信用取引を通じて日本株を1270億円売り越した。それ以前は年初から6620億円の買い越しで、ここにきて先安観から売り姿勢を強めている様子を裏付ける。日本株を1兆6000億円強買い越した外国人とは対照的な動きだ。

 信用売りの機運が高まると、投資家が株式を借りる際の手数料(逆日歩)も跳ね上がる。日本証券金融によると、逆日歩が付いた銘柄は12月7日時点で647と、過去最高の09年3月の776に迫る。

 もっとも、信用取引にはリスクも潜む。信用取引は「てこ」の効果を併せ持ち、投資額の約3倍のお金を運用できるのが特徴だ。投資チャンスが広がる半面、身の丈を超えると損失が投資元本を割り込むどころか、無限大に広がる恐れがある。その危うさは、相場格言が「売りは命まで」と説くほど。「投資初心者は信用取引を避けた方が賢明」との意見は根強い。

■追い証にも注意

 「追い証」にも注意が必要だ。信用取引で買った株式の含み損益(信用評価損益率)は足元でマイナス7.26%。約1年4カ月ぶりの水準まで回復したとはいえ、油断は禁物だ。

 信用取引では含み損が生じた場合、担保として預けている委託証拠金から含み損相当を差し引く。証拠金が一定の水準を下回ると、証券会社などから担保の追加差し入れ(追い証)を迫られる。特定の銘柄に集中投資したり、持ち高を買い一方向に傾け過ぎると、株安と追い証のダブルパンチを受けかねない。

 トランプ相場は上昇ピッチが速かったため、多くの銘柄で信用の売り方が損失覚悟で買い戻しを迫られた。信用取引が株高に拍車を掛けた格好で、当面大きく振れる相場が続く可能性がある。

 SBI証券の藤本誠之氏は「信用取引は『切れる包丁』。特徴をきちんと押さえれば、リスクを回避する道具にもなる」と話す。

 投資経験の豊富な個人の中には信用取引で上場投資信託(ETF)を手掛ける向きも多い。日経平均株価連動型ETFを現物で買うと同時に、TOPIX連動型を信用取引で売りたてるのが一例だ。日経平均とTOPIXはほぼ同じ値動きをたどる傾向がある。持ち高を均等にしておけば、大きな利益は見込めないが、損失を帳消しにしやすい。

 信用取引を熟知し、自分なりの相場観を持てば波乱相場でも投資機会を見いだせそうだ。(溝呂木拓也)

[日本経済新聞朝刊2016年12月10日付]

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