マネー研究所

もうかる家計のつくり方

教育費も老後資金も足りない 無計画貧乏 家計再生コンサルタント 横山光昭

2016/12/14

 「大学に入学するときに払う100万円ぐらい夫のボーナスが入ればなんとかなると思っていたんです」。こう話すのは、大学進学を控えた高校3年生の息子がいるパート主婦のRさん(51)。ボーナスと貯蓄を合わせれば初年度納入金の前期分くらいは払えると思っていたし、その後の学費や生活は、奨学金に頼れば何とかなると思っていたそうです。

 春に公立高校で奨学金の説明会があり、私立大学に入学するときは入学金のほか、前期分の授業料や設備費、教科書代などで100万円以上必要になることや、奨学金の仕組みや利用の仕方についての説明を受けました。

 奨学金の申し込みを済ませ安心していましたが、息子がAO入試を受けることになり、受験時期が早まったため冬のボーナス前に前期の納入金を支払わなくてはいけなくなったのです。

 「貯蓄から約50万円、冬のボーナスから約50万円。これで100万円ぐらいの学費の支払いは大丈夫だと思っていたのですが、どう工面したらよいでしょうか?」

 Rさんのご家庭は、会社員のご主人(55)の収入が手取り約30万円、奥さんもパートで約5万円の収入があります。3人暮らしなのでそれなりに貯蓄もできそうですが、家計表を見ると収入はすべて使い切っています。現在の貯蓄は80万円ほどと、ご主人が会社で積み立てている財形年金貯蓄のみです。

 貯蓄ができない理由はすぐにわかりました。塾代が毎月6万円弱もかかっています。「受験のため塾や夏冬の講習会にお金がかかりましたが仕方がないです」とRさん。「高等学校等就学支援金」が支給され、授業料は無料になっているのに、その恩恵を全く感じられない金額を塾に費やしていました。

 「受験が終わると塾代がなくなるので楽になる」とRさんは言いますが、それは間違いです。これから4年間、子どもの大学の学費を払い続けるのです。

 いまから少しでも、そのためのお金をつくっていかなくてはいけません。しかし、Rさんは学費について「奨学金を毎月10万円ほど借りて、それでも足りない分は子どもがバイトしたり、私たちが出したりすれば大丈夫です」と簡単に話します。

 しかし、それでいいはずはありません。4年間で貸与される奨学金の額は合計480万円。相談時の利息は約0.5%だったので、返済総額は505万円を超えます。息子は20年間にわたって毎月約2万円を返済し続けなくてはいけません。

 契約者は子どもです。もし、卒業後就職できなかったら? 体を壊してしまったら? フリーターのような非正規職員になったら? 心配なことが多々あります。

 子どもが返済できなければ親に請求がくるでしょう。借入額が大きすぎて、私はお勧めできませんでした。さらに、Rさんご夫婦はもう50代なのに貯蓄がほぼないのです。ご主人の財形年金貯蓄だけでは老後生活のプランにも不安を感じます。

 「お子さんの将来のことはわかりませんから、借りすぎは禁物です。老後資金も心配ですから、家計を見直しつつ、学費の工面と老後資金づくりをしていきましょう」と提案しました。

 家計改善の前に、まず、不足する大学入学手続きのお金をどうするか。結果的には、国の教育ローンに50万円の借り入れを申し込みました。金利は2%ほど。審査結果が出るには2週間ほどかかるため、合格発表後の申し込みでは遅すぎます。返済計画を立て、試験前に申し込みました。

 返済額は利息や保証金も含めて毎月1万1000円です。卒業時に返済が終わるように返済期間を4年間としたので利息は総額約2万円、保証金は1万円弱です。少々もったいないのですが、いたしかたありません。

 ご主人の財形年金貯蓄は解約しませんでした。財形年金貯蓄は利息に20.315%の税金がかからず、積み立てたお金は60歳を過ぎると5年以上20年以内の期間で、年金形式で受け取ることができます。ご主人が年金の上乗せにと、長年コツコツと積み立ててきたというので、これをなくしてしまうのは問題だと思ったからです。

 極端に削れる支出はありませんでしたが、まだ格安スマホを導入していなかったので変更しました。日用品代やお酒代を減らして何とか2万円支出を減らし、いずれ不要になる塾代の分については今後の学費の積み立てに4万円、ローン返済に1万1000円充てることにしました。息子さんの小遣いは「アルバイトをするというのでいらない」ということで、なくしました。

 支出は3万2000円削減でき、余剰金1000円と合わせ、毎月3万3000円を貯蓄できるようになりました。ご夫婦はもう50代ですから、ボーナスはできるだけ貯蓄に回すことにしました。年間80万~90万円ほど支給されるそうですから、そこから60万円ほどを蓄えると、60歳までにあと350万円ほど貯蓄を増やせます。

 教育費にお金を使い、なかなか貯蓄ができず、肝心な進学費用が出せないご家庭や、定年も近いのに教育費にお金をかけすぎて老後資金がつくれていないご家庭が最近増えているように感じます。

 「気が付いたときにはすでにとき遅し」という場合が多いのでしょうが、将来に向け我が家は教育費をかけすぎていないか、今後いくら必要になるかを考えてほしいものです。

 いま、奨学金を利用する学生は40%以上となり、およそ2人に1人は利用しているといわれます。「利息あり」の貸与の場合、月の貸付額は3万~12万円の幅で選べます。低金利のため負担は小さいように感じますが、大学卒業時に背負う借金額としては大きなものになります。

 利用は可能な限り必要最小限にして、社会人のスタート時はできるだけ身軽な状態にしてあげたいものです。子どものお金と、自分たちの老後のお金、バランスを見ながら、どちらも困らないようにためていけるのがベストです。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は12月28日付の予定です。
横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで1万人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計180万部。近著は「『老後貧乏』はイヤ!」(日本経済新聞出版社)。

「老後貧乏」はイヤ! 貯められない家計の治し方

著者 : 横山 光昭
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,512円 (税込み)

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL