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キャリア女子ラブストーリー

結婚よりワーホリ 彼を残して憧れの国へ [黒田愛さん(仮名) 第3回]

2016/12/16

こんにちは。ライターの大宮です。ここは東京・阿佐ケ谷にある本格派のトルコ料理店。「異国の料理が食べたい」と希望を伝えてくれたウェブデザイナーの黒田愛さん(仮名、39歳)をご案内し、一緒に食事をしながら彼女の「ラブストーリー」を聞き取っています(前回の記事はこちら)。

愛さんは九州の出身で、短大を卒業してからは博多の百貨店で正社員として働いていました。20代のほぼ10年間をこの職場で過ごしたことになりますね。

2年間付き合っていた先輩社員の康弘さん(仮名)とは、彼の転勤と同時に別れました。「結婚したい。ついて来てくれ」とプロポーズしてくれた彼のことは大好きだったものの、自分を好きになれなかった愛さんは幸せな家庭を築く自信がなかったのです。そんな自信を持って結婚する人などほとんどいないと思いますが、若い頃って考えてもしかたないことで悩んだりするものですよね。

和風美人の愛さんにはすぐに次の恋人ができました。3歳年下のアルバイトスタッフである恭介さん(仮名)です。話しやすくてわがままも言える相手である恭介さんとの相性は抜群で、愛さんは楽しい4年間を過ごしたのでした。

「彼は結婚をしたがっていました。実際、彼のお母さんに会ったこともあります。とても心が広い方で、私の携帯に直接電話をかけてもらうぐらいに仲良くしていたんです。でも、私は結婚自体に魅力を感じず、態度をあいまいにしていました。いったい何を考えていたのでしょうか。とんだバカでしたね……」

とんだバカというセリフを聞いたとき、僕は吹き出してしまうほどの面白さを感じました。自分のせつない過去を自虐的に振り返ることができる人に、僕はなぜか哀愁と情愛を覚えます。あまり暗くなってしまうのは避けたいですけど、しみじみと笑いながら「それでも明るく生きていかなくちゃね」みたいな気持ちでお酒を飲み交わしたいのです。

前回の記事でも書きましたが、20代の頃の愛さんには自信がなかったのだと思います。「もっといい人がいるのではないか」という気持ちではなく、「私は結婚生活をちゃんと築けるのだろうか。結婚しても、自分らしく暮らせるのだろうか」という不安ですね。僕も同じような20代を過ごしていたのでわかりますよ。

30代も後半になると良くも悪くも開き直ります。「どんな仕事でも活躍できるわけではないのと同じく、結婚にも相性がある。こんな自分でも愛してくれて、一緒に楽しく生活できるようなパートナーを見つければよい」ことに気づくのです。昔の恋人とよりを戻すのは難しいと思いますが、新しい出会いを求めればいいだけですよね。

「康弘さんも恭介さんもいまではいいパパになっています。本当にいい人たちだったなと今でも思いますよ。でも、別れたことを後悔はしていません。結婚しなかったからこそ経験できたこともいろいろあるからです」

■30歳前の最後のチャンス、仕事をやめてワーホリへ

29歳のとき、愛さんは結婚よりも「やりたい」ことがあったのです。それはワーホリ(ワーキングホリデー制度)でした。

「百貨店での仕事が嫌になったわけではありません。でも、ワーホリは基本的に30歳までしか利用できません。私は旅行が好きで、ある国にずっと住んでみたいと思っていました。仕事もやめて結婚のチャンスも捨てて行くなんて安易だったとは思います。でも、やっぱり行ってよかったです」

旅立つ前に、恭介さんとは何度も話し合いました。地元で地に足をつけて生きていくつもりの恭介さんとしては、すぐにでも愛さんと結婚したかったのでしょう。それをこらえて「ワーホリから帰ってくるのを待っていたら、結婚できるのか?」と聞いてくれたのです。真面目な愛さんはウソをつくことはできません。「それはわからない」と答えてしまい、彼との関係は冷めていきました。

「あの頃は自分のことしか考えられませんでした。とにかく憧れの国に行きたい、美術や建築を生で見たい、一生に一度しかない!という気持ちで頭がいっぱいだったんです」

実際に行動に移し、愛さんはかけがえのない経験をしました。ただし、人生には良いときもあれば悪いときもあります。帰国してから入社した東京の旅行会社では、恋愛をするゆとりもないほどの「地獄の終電生活」が始まったのでした。続きはまた来週。

大宮冬洋(おおみや・とうよう)
フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。電子書籍に『僕たちが結婚できない理由』(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京もしくは愛知で毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/

「キャリア女子ラブストーリー ~アラフォーからの恋愛論」バックナンバー

これまでの記事はこちらをご覧ください。

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