特定の動画・音楽視聴が安く 格安SIMの新トレンド
格安SIM最前線
格安SIMで特定のアプリやサービスを利用した時の通信が無料になる「カウントフリー」機能。従来はLINEやTwitter、FacebookなどSNSが主な対象だったが、最近、動画や音楽配信サービスを対象としたカウントフリーオプションも登場し、利用者を伸ばしているという。
BIGLOBE SIMからカウントフリーオプションが登場
2016年12月1日、BIGLOBEは同社が提供する格安SIM「BIGLOBE SIM」の「エンタメフリー・オプション」にインターネットTVの「AbemaTV」を追加した。「エンタメフリー・オプション」は11月1日から始まったサービスで、これまで動画共有サービスの「YouTube」、音楽配信サービスの「Google Play Music」「Apple Music」が対象だったが、さらに範囲を広げた形だ。
「エンタメフリー・オプション」は、オプション料金を払うことで特定のアプリやサービスを利用したときの通信が無料になる、「カウントフリー」と呼ばれる機能を提供する。
動画配信や音楽配信サービスはデータをダウンロードしながら再生する「オンデマンド配信方式」が採用されている。再生に伴って頻繁に通信が行われるため、視聴時間が長くなるほど通信容量の消費も増える。
エンタメフリー・オプションを契約すれば、対象のサービスを利用した際の通信量がカウントされず、本来消費するはずだった通信容量を節約できる仕組みだ。
BIGLOBE SIMでは通信容量別に4つの料金プランを提供しているが、エンタメフリー・オプションを契約できるのは、このうち通信容量が毎月6ギガバイトまで・12ギガバイトまでの2つのプラン。利用する場合のオプション料金はSIMカードの種類によって異なり、音声通話とデータ通信ができるSIMでは月額518円(税込み、以下同)、データ通信だけのSIMでは月額1058円となる。
容量の消費が激しい動画・音楽配信にフォーカス
カウントフリー機能のある格安SIMは、BIGLOBE SIMが初めてではない。
2016年9月にサービスを開始した「LINEモバイル」のカウントフリーはコミュニケーションに特化しており、「LINE」「Twitter」「Facebook」「Instagram」を利用した時の通信が無料だ(ライブ動画の視聴など、一部の通信は対象外。「点検 LINE格安SIM、データ残量確認もトークで」参照)。
プラスワン・マーケティングの「FREETEL SIM」もカウントフリーを採用しており、「LINE」などのメッセージングアプリに加え、人気ゲームの「ポケモンGO」、iPhoneやiPadのアプリストア「App Store」を利用した時の通信が対象。2016年12月20日からは「Twitter」「Facebook」「Instagram」も対象に加わった(※ただし、追加サービスがカウントフリーになるのは、「FREETEL SIM 定額プラン」のうち、毎月3ギガバイト以上の料金プラン)。
このように、従来はSNSや一部の人気アプリを対象としてきたカウントフリーだが、BIGLOBEの場合は動画・音楽配信サービスが対象となる。「SNSやゲームよりも急速かつ大量に通信容量を消費する動画・音楽配信サービスを、手ごろな価格で使い放題にできるオプションとして、エンタメフリー・オプションを企画した」(BIGLOBE担当者)という。
格安SIM | 対象サービス |
---|---|
LINEモバイル | LINE、Twitter、Facebook、Instagram(※1) |
FREETEL SIM | LINE、ポケモンGO、AppStore(iOSのみ)、Twitter、Facebook、Instagramなど(※2) |
BIGLOBE SIM | YouTube、Google Play Music、Apple Music、AbemaTV |
大容量プランより安上がりな場合も
「手ごろな価格」を意識したこともあり、エンタメフリー・オプションはコストの面でも優位だ。
以前、「月1万円超でも『格安SIM』 動画見放題に照準の新潮流」でも紹介したように、格安SIMでも毎月の通信容量が20ギガバイトを超えるような大容量プランが提供されるようになってきた。大容量プランは動画・音楽配信サービスの普及によって高まったユーザーのニーズを反映しており、映画や音楽をスマホでどこでも楽しむための選択肢となっている。
しかし、大容量プランの月額料金は、格安SIMとしては割高だ。
大容量プランを提供する格安SIMにおいて、毎月20ギガバイトまで使える音声通話SIMの月額料金を見てみると、「FREETEL SIM」では6015円、「イオンモバイル」では5378円、「楽天モバイル」では5130円だ。FREETEL SIMやイオンモバイルで契約できる毎月50ギガバイトまでのプランは1万円を超える。
一方、BIGLOBE SIMの音声通話SIMで通信容量が毎月6ギガバイトまでのプラン(月額2322円)にエンタメフリー・オプションを追加しても、毎月のコストは2840円にとどまる。この価格は、上記の3社における毎月10ギガバイト前後の料金プランと同程度。AbemaTVやYouTubeを視聴するために20ギガバイト以上の大容量プランを契約するよりも、BIGLOBE SIMでエンタメフリー・オプションを契約したほうが安上がりなのだ。
追加希望のリクエストも受け付け
ただ、エンタメフリー・オプションも万能ではない。対象となる動画・音楽配信サービスが限られているため、それ以外のサービスを愛用するユーザーにとっての選択肢にはならないからだ。
そこでBIGLOBEでは、エンタメフリー・オプションの対象に加えてほしいサービスのリクエストを募っている。「音楽配信サービスのSpotifyや、サイマルラジオのradiko.jpを追加してほしいというリクエストが多く、早期に実現したい」(BIGLOBE担当者)。ニーズがあればSNSやゲームにも対応したいとする。
担当者によれば「エンタメフリー・オプションをきっかけに、BIGLOBE SIMを契約するユーザーが増えている」という。動画・音楽配信サービスを対象としたカウントフリーは、一定の評価を得ているようだ。
今後、どんなサービスが追加されるのか。そして追随する他社が出てくるのか。格安SIMの新たな付加価値として登場したカウントフリーの進化から、しばらく目が離せない。
(ライター 松村武宏)
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