「iPhone 7のカメラ」で写真をうまく撮る方法
iPhoneの最新機種、iPhone 7/7 Plusが登場して数カ月が経過した。Suicaが使えるようになったり、iPhone 7 Plusのデュアルカメラ搭載に心を動かされ、AndroidやフィーチャーフォンからiPhone 7に乗り換えた人も多いと聞く。
そのiPhone 7/7 Plusの特徴といえば「カメラ」だ。iPhone は簡単に美しい写真を撮影でき、数多くの優秀なアプリで加工やシェアが楽しめる。最近はカメラメーカーのライカと協業したAndroidスマホ「HUAWEI P9」などの人気機種もあるが、カメラとして世界で一番使われているのはiPhoneと言ってもいいだろう。
世界最大級の写真共有サイト「Flickr」でシェアされている写真を調べるとそれが分かる。FlickrのCamera Finderというページで、一般的なデジタルカメラやスマートフォン(スマホ)を含む使用された全カメラが分かるのだが、アップロード数ナンバーワンはアップルのiPhoneシリーズなのである。
iPhoneとPhotography(写真)を組み合わせ、iPhoneで撮影・加工することを表す「iPhoneography」という造語も生まれるほど、世界中の人がiPhoneで写真を楽しむことに夢中なのだ。
さて今回は、iPhone 7/7 PlusからiPhoneographyの世界に入ってきた人たちに向けて、撮影のコツを簡単にお伝えする。要領を得ると、さまざまなシーンでもiPhoneだけで撮影できるようになるはずだ。
【1】iPhoneの構え方のコツ
スマホでは、つい簡単に片手で写真を撮ってしまいがちだ。写真の失敗は手ブレとピンぼけが大半といわれるが、iPhoneで撮った写真がシャープでない場合はだいたい手ブレが影響している。手ブレを防ぐためには両手で優しくホールドすることが必要だ。
また、iPhone 7/7 Plusには光学手ブレ補正機能が搭載されている。これによってカメラが光をとらえるISO感度を上げずに、スローシャッターを切り描写を良好にするという傾向がある。
ただ、iPhoneで撮影した写真の撮影条件を確認すると、驚くようなスローシャッターの場合もある。薄暗い場所での撮影はシャッタースピードが遅くなりブレやすくなるため、必ず両手でiPhoneを構えよう。
シャッターはスクリーン上のボタンで切るのがいい。シャッターはボディーにあるボリュームボタンでも切れるが、物理的に動くので暗いシーンでは手ブレの原因になる。
【2】「無意識の傾き」を修正するには
撮影時に気をつけたいのは「傾かないように撮る」ということだ。意図して傾けた写真はいいが、意図せずに傾いている写真は良くない。これは誰でもクセがあって、どんなカメラを使ってもだいたいどちらかに傾いてしまうため、意識して克服することが必要だ。
iPhoneで写真を傾かないようにするためには、カメラアプリの画面上に「グリッド線」を表示するように設定する。撮影時には垂直もしくは水平なものをグリッド線に合わせて、傾いていない状態にしてからシャッターを切ろう。このグリッド線の表示は「設定」→「写真とカメラ」内の「グリッド」でオンにできる。忘れないように表示させておきたい。
【3】明るさを固定する方法
あとは露出だ。これは「明るさ」と言い換えてもいいだろう。iPhoneは優秀なのでピントも露出もほとんどのシーンで正確だが、「自分はもっと明るく撮りたい」などと思うこともあるはずだ。
その場合は画面上のピントを合わせたい部分をタップしてみよう。すると四角いピントエリアが表示される。その横に太陽のアイコンがないだろうか? その状態で指先を上方向に動かしてみよう。するとググッと露出が明るくなるだろう。暗くしたい場合は逆に下方向に動かせばいい。この「露出コントロール」を使って自分のイメージ通りの明るさにしてからシャッターを切ればいいのだ。このように直感的に露出をコントロールできるのがiPhoneなのである。
iPhoneになじんでくると「ピントも露出も固定してバンバン撮りたい」と思うシーンも出てくると思う。例えばモデルと同じ距離を保ちながら歩いて撮影する場合などだ。
こういったシーンではiPhone任せにしてしまうと、ときおりピントが背景に合ってしまったり、露出がカットごとに変化して、望んだ明るさにならなかったりする。
こういった場面では「AE/AFロック」が役に立つ。使い方は簡単。モデルの顔部分(要はピントと露出を合わせたい部分だ)を長押しし画面に「AE/AFロック」という表示が出ればOKだ。そして前述の「露出コントロール」と同様に指先を画面上で上下させて好みの明るさにすればいい。
もう1回画面をタップしない限り、このピントと露出がロックされるので、あとはシャッターチャンスに専念すればいい。この機能はさまざまなシーンで役に立つので覚えておくといいだろう。
【4】アプリいらずのフィルター加工
「インスタグラムのフィルターのように写真を加工したい。でも有料アプリはイヤだ」というわがままな人は、純正カメラアプリにあるフィルターを使ってみてはどうだろうか。
画面右上にある円が3つ重なったアイコンをタップしてみよう。すると9分割された画面に早変わりし、8つのさまざまなフィルター効果がリアルタイムで確認できるだろう(真ん中はフィルター効果「なし」だ)。フィルター加工の具合が撮影前に分かるので仕上がりをイメージしやすいだろう。
好きなフィルターを選んでタップしてシャッターを切ればOK。iPhoneだけでもフィルター加工された写真を撮れるのだ。ここでも前に書いた「明るさコントロール」や「AE/AFロック」が使えるので試してみて欲しい。フィルター間をまたいでも設定が残るので、設定をし直す必要もない。
【5】動く子どもには「バーストモード」
元気よく遊ぶ子どもや走り回るペットの瞬間を撮りたい場合は「バーストモード」を使おう。使い方は超簡単でシャッターボタンを押しっぱなしにするだけ。これで秒間10コマの超高速連続撮影が可能になる。
動くものの一瞬を狙ってシャッターを切るのではなく、とりあえず撮影しておいて、後からいいカットをチョイスする、という考え方だ。
写真を撮影すると、iPhoneが推奨するカットがカメラロールに表示される。画面下部にある「選択」という部分をタップすると全カットが表示されるので、ここで気に入ったカットにチェックを付けて表示するカットに選んだり、選択後に他の不要カットを削除できる。動きものの撮影で迷ったら、とりあえずシャッターボタン押しっぱなしで全てのシーンを捉えておくのが良い。
【6】背景をぼかす「ポートレートモード」を使おう
レンズを2つ搭載しているiPhone 7 Plus 最大の売りが「ポートレートモード(被写界深度エフェクト)」だ。
これは簡単に言ってしまうと、背景をぼかせる効果が出せるということ。まるで一眼カメラに明るい単焦点レンズをつけて背景をぼかしたような仕上がりの写真が撮影できる。人物を撮るのにちょうどいいモードでもある。
ポートレートモードはiPhone 7 Plusの望遠側のレンズ、つまり35mm版換算で56mm相当の画角で、被写体との距離は約30cmから230cm程度で効果がオンになる。距離が近すぎたり遠すぎたりすると画面上にその旨が表示されるので安心だ。ぼけ具合はリアルタイムでiPhoneのスクリーン上で確認できる。
この機能、実はまだベータ版で、ぼけの部分が不自然だったり不明瞭だったりすることがあるが、ほとんどの場合美しいボケ味を楽しむことができるはずだ。境界が曖昧なもの、透明なものや動きのあるものはうまくぼけない場合があるので注意したい。より精度が高くなるに違いない正式版の登場を心待ちにしよう。
【7】シャッター音を消すには……
iPhone 7/7 Plusはカメラ機能が向上したのはうれしいが、ひとつ困ったことがある。それはシャッター音がとても大きくなってしまったことだ。静かなレストランでの撮影や子どもの寝顔を撮るときには、少しちゅうちょしてしまうくらいの音量なのである。
そこで役に立つのがマイクロソフトが作ったiPhoneアプリ「Microsoft Pix」だ。なんとこのアプリは設定で「消音」が選べるのである。2016年11月時点では7 Plusの望遠レンズやポートレートモードは使えないが、これでいつでも気兼ねなく写真を撮ることができるだろう。
このアプリはそもそもAIを使って写真をより美しく簡単に撮るカメラアプリで、シャッターを切るだけでアプリがシーンを解析してより良い写真に仕上げてくれる。動きのあるシーンは短いクリップ動画も同時に残せるのが面白い。無料なのでぜひトライしてみてほしい。
撮影のコツを駆け足でご紹介したが、iPhone 7シリーズは本当に素晴らしい「カメラ」だと思う。実力はそこらへんのデジカメを打ち負かすポテンシャルを秘めているので、ぜひ真剣に付き合ってもらい、いい写真をたくさん撮っていただきたいと思う。
(モデル:輿水りさ/エーライツ)
写真家。iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影している。2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。著書にはiPhoneで撮影した写真集「iPhonegrapher―写真を撮り、歩き続けるための80の言葉(雷鳥社)」、「iPhone フォトグラフィックメソッド(翔泳社)」がある。
[日経トレンディネット 2016年11月25日付の記事を再構成]
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