孫正義氏 トランプ氏と電撃会談 握手の狙いは?

ソフトバンクグループの孫正義社長が再び電撃作戦を断行した。6日午後(日本時間7日未明)、米ニューヨークの「トランプタワー」でトランプ次期米大統領と約45分間会談した。総額500億ドル(約5兆7000億円)を米国でIT(情報技術)分野を中心にした新興企業に投資し、5万人の雇用を生みだすとトランプ氏に約束したという。「人たらし」として知られる孫さん、世界のVIPと次々会っているが、トランプ氏と握手した狙いは何なのか。

民主党系の人脈は広げていたが

「トランプさんは知らないね。ヒラリーさんなら(米携帯電話4位のスプリント最高経営責任者の)マルセロが結構親しいみたいだけど」。11月7日の決算会見後に目前に控えた米大統領選について聞くと、孫氏は笑ってこう答えた。その頃は、ヒラリー優位が伝えられていた。孫氏は米西海岸にも豪邸を構え、米国でIT人脈を広げてきたが、当然、シリコンバレーはヒラリー氏の民主党支持層だ。民主党系の政治家や経済人とは親しいが、トランプ氏はおろか共和党系の人脈が強いとは言えなかった。

孫氏はわずか1カ月弱の間にトランプ氏と会談のための「アポ取り」を成功したわけだ。「次期大統領が普通の政治家だったら、難しかったかもしれないが、トランプは『不動産王』と呼ばれた実業家。世界的な投資家と有名になった孫に興味がわいたのでしょう」(ソフトバンク幹部)という。500億ドル投資というお土産を持って行った孫氏だが、トランプ氏と会談した本当の目的は何なのだろうか。

「今後は僕の時間の45%は(英半導体設計大手の)アーム、そして45%は米スプリントにあてる」。7月に孫氏は3兆3000億円で英半導体設計大手アーム・ホールディングスの買収を決めた後の会見でこう語った。孫氏があらゆるものがネットでつながるIoTの源流企業とも言えるアーム買収に踏み切ったとき、携帯電話会社(キャリア)による世界市場制覇の目標は大きく修正されたという見方が大勢を占めた。「まだスプリントに45%の時間を割くのですか」と尋ねると、「当然そうだ」と孫氏は返答したが、「当面の株価対策ではないか、チャンスを見てスプリントを売却するのだろう」と市場関係者はみていた。

スプリント再編が再スタート?

ソフトバンクグループの孫正義社長

しかし、トランプ氏との電撃会談の直前から「スプリントと(米携帯電話3位の)TモバイルUSとの統合が再びスタートするのでは」(通信アナリスト)という観測が市場関係者の間で浮上していたのだ。2014年、孫氏はスプリントとTモバイルUSとの統合を画策したが、同年夏に統合交渉が頓挫した。背景には米連邦通信委員会(FCC)が再編を阻止しようとしたためとされる。

「今回は参ったよ」。数々の買収に失敗しても決して弱気な顔を見せない孫氏だったが、あれほど青ざめた表情を見たことはなかった。

孫氏にはコリン・パウエル元米国務長官など米政界にも強力な人脈網がある。14年春、スプリント会長としてワシントンのイベントでオバマ大統領と接触したが、1対1の会談ではなく、軽くあいさつした程度。FCCに圧倒的な影響力を持つ大統領とのパイプは築けなかった。

しかし、実業家出身のトランプ次期大統領は孫氏に新たなチャンスをもたらすと考えたのかもしれない。孫氏は外国人のVIPと会うと、必ずこう言う。「コール ミー 『マサ』 ソン」。「正義(まさよし)」が発音しづらいためだが、今回、トランプ氏に「マサ」と親友のように呼ばれた孫氏。米国での逆襲が始まるかもしれない。

(代慶達也)

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