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長時間労働問題で揺れる 電通のお膝元で売れる本 リブロ汐留シオサイト店

2016/12/9

ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測しているリブロ汐留シオサイト店を訪れた。11月初旬はここでも『住友銀行秘史』『LIFE SHIFT』『やり抜く力』といった秋の強力本が上位を占めていたが、ひと月たってその勢いはいくぶん落ち着きをみせ、日本人の働き方を再考する本が大きく売り上げを伸ばしてきた。中でも好調なのが組織と人材に焦点を当てたキャリア形成コンサルタントによる1冊の本だ。

ホワイトカラーの生産性問う

その本は伊賀泰代『生産性』(ダイヤモンド社)。伊賀氏は米系コンサルティングファームのマッキンゼー出身。コンサルタントとして5年、採用と人材育成の部門のマネジャーとして12年のマッキンゼー体験を持つ。その著者が本書で問うのは、ずばりホワイトカラーの生産性問題だ。著者は言う。「日本における(工場以外での)生産性に関する意識の低さが、世界と戦う日本企業にとって、大きな足かせになっている」。その最大の現場こそがホワイトカラー職場なのだ。

序章で著者はわかりやすい事例として新卒採用問題を取り上げる。生産性とは投入資源と成果物の比率だ。投入資源を減らせば生産性は上がるし、成果が大きくなれば同じく生産性は上がる。ところが、新卒採用では採用人数の何十倍、何百倍もの応募者を集めることがしばしば目標になる。しかし、それは生産性の観点からは逆の発想だ。それでも就活ランキング上位に行きたい経営者の見えや、量が質に転化するという思い込みによって、生産性向上の観点が忘れ去られていく。結果、人事担当者など現場の労働時間から様々な経費までが多大な資源が投入されることが繰り返される。

このようなことはホワイトカラー職場のあらゆる場面にあり、そこではトップパフォーマーでさえ高速成長が鈍化し、「社内選抜に漏れた中高年社員グループ」は放置され、アベレージパフォーマーの成長もゆっくりしか進まない。

職場の意識改革促す

では、どうすればよいのか。著者はアベレージパフォーマーの成長を促す管理職の向き合い方や研修方法、社内選抜に漏れた中高年社員のモーチベーションを上げるフィードバックの方法、トップパフォーマーを高速成長させる人事の仕組みなど、具体的な方策を経験や事例に基づきながら記述していく。ベースにあるのは常に「どうすれば生産性を上げられるか」というたった一つの視点だ。生産性への認識が変われば職場も日本も変わりうる。そう著者は確信する。「発売されたのは2週間ほど前だが、今でも売れ行きが落ちていない。『住友銀行秘史』や『LIFE SHIFT』『やり抜く力』に続く強力な新刊」と店長の大城優樹さんは話す。

2位にも働き方・生き方の本

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)生産性伊賀泰代著(ダイヤモンド社)
(2)自分の時間を取り戻そうちきりん著(ダイヤモンド社)
(3)やり抜く力アンジェラ・ダックワース著(ダイヤモンド社)
(4)住友銀行秘史国重敦史著(講談社)
(5)会社四季報業界地図〈2017年版〉東洋経済新報社編(東洋経済新報社)

(リブロ汐留シオサイト店、2016年11月27日~12月3日)

堂々の1位が『生産性』。2位にも同じダイヤモンド社の働き方、生き方を考える本が入った。著者のちきりん氏は社会派ブログ「chikirinの日記」などで多くの読者を持つ覆面カリスマブロガーだが、正体は伊賀泰代氏ともいわれる。こちらでも別の形で日本の生産性の問題を論じている。とすれば、一人でワンツーを決めるという事態だ。長時間労働問題で揺れる電通の足もとにある書店という立地が大きく影響しているのかもしれない。

(水柿武志)

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