省電力で高画質 今が替え時、液晶ディスプレー
パソコン用の液晶ディスプレーの価格は近年下落しており、気軽に買いやすい。売れ筋の24型のディスプレーは1万円前半から、27型や30型といった大型のディスプレーは2万円台から購入できる。
とはいえ、今、パソコンのディスプレーの買い替えを検討している人は少ないかもしれない。「画面が映ればいい」と思っている人が多いからだ。確かに、10~15年ぐらい昔の古いディスプレーでも、映像入力の端子も同じものがついているため、最新パソコンの画面を表示できる。今使っているディスプレーが壊れない限り、買い替える必要を感じないのは分かる。だが、そういう人こそ、ディスプレーの買い替え・買い増しをお勧めしたい。
省電力でコンパクト、スマホにもつながる
買い替え・買い増しを勧める理由は3つある。
まず、最近の液晶ディスプレーは消費電力がかなり低いこと。節電が騒がれたここ5年ぐらいの間で、液晶のバックライトが蛍光管からLEDに変わり、消費電力が大幅に下がった。現在売られている液晶ディスプレーのほぼすべてが、バックライトにLEDを使っている。以前、バックライトが蛍光管のディスプレーと、バックライトがLEDのディスプレーの消費電力を比較したところ、LEDのディスプレーの消費電力は蛍光管ディスプレーの2/3程度だった。しかも、バックライトにLEDを採用したディスプレーは本体が薄い製品が多い。スリムでコンパクトなので、設置に場所をとらないという利点もある。
次に、高画質の映像コンテンツを見るのに適していること。最近の液晶ディスプレーは画面サイズが大きく、解像度が高いのもさることながら、HDCPという著作権保護技術に対応している。HDCPはパソコンからディスプレーにデジタル信号を送受信する経路を暗号化することで、ブルーレイディスクや地上デジタル放送などのコンテンツの不正コピーを防止する技術だ。
逆に言うと、5~10年ぐらい昔の液晶ディスプレーの中には、HDCPに対応しておらず、市販のブルーレイソフトや映像配信サイトなどが見られないものが多い。ブルーレイソフトなどを再生しようとすると、再生ソフトに「保護されたコンテンツの再生はサポートしていない」「HDCPに対応していない」といったエラーが表示される。サイバーリンクなどが提供するチェックツールで調べることもできる。
液晶ディスプレーの価格が安くなったことでマルチディスプレーにしやすくなったのも、買い替えや買い増しを勧める理由だ。ノートパソコンを使っている人は液晶ディスプレーは不要と思うだろうが、ノートパソコンに液晶ディスプレーを接続すれば、デスクトップ画面が2倍以上に広がる。1度に表示できる情報が増えるので、作業効率が上がる。また、液晶ディスプレーはノートパソコンよりも画面が大きいため、写真や動画など娯楽系のコンテンツをノートパソコンの液晶よりも楽しめる。
液晶ディスプレーにスマートフォンやタブレットをつなぐのもありだ。一部のスマホやタブレットはMHLという画面出力機能を備えており、専用のMHLケーブルで液晶ディスプレーに接続することで、スマホやタブレットの映像やゲームを大画面で楽しめる。
○5年以上前の液晶ディスプレーを使っている人
○ブルーレイや映像配信サービスでコンテンツを楽しみたい人
○ノートパソコンやスマホ、タブレットの画面サイズでは物足りないと思っている人
画質にこだわるなら解像度と駆動方式で絞る
液晶ディスプレーを選ぶときは、最初に画面の大きさに注目しよう。現在の売れ筋は24型や27型。画面比率は16:9のワイド型が中心だが、中には21:9の横長画面や正方形の液晶ディスプレーもある。
次に、表示できる最大解像度に注目する。最大解像度は画面にどれだけのピクセル数があるかを示すもので、この数値が高くなるほど、文字や写真をより精細に表示できる。多くのパソコン用ディスプレーの最大解像度はフルHD(1920×1080ドット)だが、最近は4K(3840×2160ドットなど)も増えてきた。ただし、4Kで表示するにはパソコンも対応していることが条件だ。また、4K対応液晶ディスプレーの価格はフルHD対応ディスプレーよりも高い。
液晶ディスプレーの映りにこだわるなら、液晶ディスプレーが搭載する液晶パネルの駆動方式も確認しよう。液晶パネルの駆動方式によって、映りは大きく変わる。現在の駆動方式は、IPS方式(In-Place-Switching)、VA方式(Virtical Alignment)、TN方式(Twisted Nematic)の3種類。いずれも長所と短所があり、用途によって適した方式を選ぶとよい。
画質を求めるならIPS方式が一番だ。IPS方式は視野角が広く、視点の位置が変わっても画面の色がが変わりにくいという特徴がある。ただし、VA方式やTN方式より応答速度が遅い。ゲームや動画など動きが激しい場面の切り替えが不得意で、残像が見えることもある。また、ほかの2方式より製品の価格がやや高いのも不利。ISP方式の派生として、AH-IPS(Advanced High Performance - IPS)方式やADS(Advanced super Dimension Switch)方式という技術あるが、基本的な仕組みはIPS方式と同じだ。
VA方式はIPS方式より画質は劣るものの、ほかの2方式よりもコントラストが高いため、黒色をはっきりと表示できる。応答速度はIPS方式よりも速く、動きが激しい場面に強い。また、価格はIPS方式より安い。ただし、IPS方式よりも視野角が狭いという弱点がある。視点の位置によって色の見え方が変わりやすい。VA方式の派生として、視野角の狭さを改善したMVA(Multi-domain Vertical Alignment)やAMVA/AMVA+(Advanced Multi domain Vertical Alignment)もあるが、基本的な仕組みは同じだ。
TN方式は製品の価格が安い。また、応答速度はこの3種類の中では最速だ。動きが激しい場面の描画に強いため、ゲーミングディスプレーでの採用が多い。ほかの方式より、バックライトの光をあまり必要としないため、消費電力が低いというメリットもある。ただし、視野角による色や輝度の変化がVA方式よりも大きい。画質はほかの2種類より劣る。
表面処理とスタンドが使い勝手を左右する
駆動方式とは別の意味で、画面の見やすさを左右するのが表面処理の違いだ。画面の表面処理には光沢(グレア)と半光沢(セミグレア)、非光沢(ノングレア)があり、非光沢は画面の映り込みが少ない、光沢は映り込みはするものの色が引き締まって見えるといった特性がある。半光沢はその中間だ。これは好みで選ぼう。
入力端子も要注意だ。ほとんどの液晶ディスプレーはDVI-D端子とHDMI端子、アナログRGB端子の3個を備えるが、中にはHDMI端子がなく、DisplayPort端子を実装している製品もある。併せて使うパソコンの端子やスマートフォン、タブレットとつないで使うのかなどを考慮して、必要な入力端子があるか、事前に確認しよう。
最後に、盲点になりがちなのがディスプレースタンド。安価な製品には、液晶の前後の傾きを調整する機能(チルト)しかないことが多い。だが、製品によっては、立派なスタンドが付いていて、画面の角度を左右に振れる機能(スイベル)、高さを垂直方向に調整できる機能、画面を縦向きに回転できる機能などがある。ディスプレーアームに取り付けて使うのなら、ディスプレーの背面などに取り付け用のねじ穴(VESAマウント)があるかも確認しておきたい。
(ライター 田代祥吾)
[日経トレンディネット 2016年11月30日付の記事を再構成]
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