車いすを指さす子ども 親の対応に文化・風習の違いマセソン美季さんのパラフレーズ

2016/12/8

マセソンさんのパラフレーズ

12月3日は国連が定めた「国際障害者デー」であった。日本では、12月3~9日を「障害者週間」と定め、国、地方公共団体、関係団体などが、障害や障害者に関する国民の理解を促す活動、意識啓発に取り組んでいるそうだ。

人々を啓発し、理解を深めてもらうにはどんな方法が有効なのだろうか。国によって文化や風習が違うため、難しい問いだ。

子どもたちが車いす姿の私を見た時のことを例に取りたい。リアクションは万国共通だ。大抵、「あれは何?」と、指をさしながら一緒にいる大人に子どもは尋ねる。でもその後、「指なんかさしちゃダメ。ほら、早く行きましょう」とそそくさとその場を後にする人が多い国がある。逆に私のところに近づいてきて、「すみません、この子にとって車いすを見るのは初めてなんです。もしよかったら、この子の質問に答えていただけませんか」と言ってくる人がいる国もある。

学校で講演をした後、質疑応答の時間を設けると、私が「いい質問だったな」と思っていた生徒の発言に対して、後から先生が「失礼な質問をして申し訳ありませんでした」と謝ってくる国があれば、どんな質問でも児童の手が挙がる限り、質疑応答の時間を延長してもよいか、と教師が求めてくる国もある。

このように様々な文化、風習の違いを乗り越えるユニバーサルな方法こそがスポーツなのではないか。10月にローマ法王庁文化評議会が主催した、スポーツと信仰に関する世界会議「人類に貢献するスポーツ」に出席し、改めてそう思った。この会議は国連、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)が協力した。

分科会では、スポーツには公正な社会を構築する力がある点にもフォーカスがあてられた。簡単に言えば、スポーツを通してなら、国や文化にかかわらず、障害を正しく理解し、偏見を払拭できるというものだ。パラリンピックが社会に与える影響については、拙稿でも取り上げているが、改めて、スポーツを介した障害者理解の促進に大いに期待したいと思った。

ませそん・みき 1973年生まれ。大学1年時に交通事故で車いす生活に。98年長野パラリンピックのアイススレッジスピードレースで金メダル3個、銀メダル1個を獲得。カナダのアイススレッジホッケー選手と結婚し、カナダ在住。今年1月から日本財団パラリンピックサポートセンター勤務。

[日本経済新聞2016年12月8日付朝刊]