JOCの就活支援「アスナビ」 学生選手らと企業結ぶ

練習する宮坂楓選手(左)と平加有梨奈選手(横浜市保土ケ谷区)
練習する宮坂楓選手(左)と平加有梨奈選手(横浜市保土ケ谷区)

2020年東京五輪・パラリンピックの日本は過去最大の大選手団になるだろう。「4年に1度」に人生を懸けるアスリートにとっては、安心して競技に打ち込める環境を整えることが第一。就職支援や活動費など応援しようとする企業も増えている。

知名度と実力を兼ね備えた一握りの選手を除けば、多くの学生アスリートが頭を悩ませるのが「就活」だ。特に実業団の採用が少ない個人競技では、20年東京五輪を目指す選手ですら所属先探しは難題。そこで力となるのが、日本オリンピック委員会(JOC)が10年に立ち上げた就職支援活動「アスナビ」だ。

登録選手は勤務地などの希望条件を書いたエントリーシートを公開し、企業を集めた説明会の壇上で自己PRする。この出会いの場を通じて約130人が所属先を得た。

「アスナビがなければ、どうやって会社を探せばいいのかもわからなかった」と語るのは、陸上女子三段跳びで今年の日本選手権優勝の宮坂楓選手(23)。走り幅跳びの平加有梨奈選手(25)とともに自動車部品メーカーのニッパツに勤務しながら競技に励んでいる。

宮坂は横浜国立大在学中に実業団の監督らに採用を直談判したが「枠が空いていない」と断られ、昨年春の卒業からニッパツ入社までの半年はアルバイト生活だった。アスナビ担当者に登録を勧められたのはシーズン真っ最中だったが、「会社との間にJOCが入ってくれて、ストレスなく話が進んだ」と振り返る。

時短勤務を週2、3日こなす宮坂楓選手(左)と平加有梨奈選手=横浜市金沢区のニッパツで

平加選手は地元・北海道の実業団からの転職組。冬も練習に打ち込むため、アスナビ経由で今年9月に入社した。宮坂選手とともに時短勤務を週2、3日こなし、横浜国立大を拠点に練習している。「必要な個人トレーニングも今はしっかり積める」と、競技に集中できる環境に感謝する。

一方、出会いの場を必要とするのは企業側も同じ。東京五輪開催が決まってからは「五輪スポンサーは無理だが、何らかの形で支援したい」という中小企業による採用が増えている。

ニッパツでは2人が出場する各地の大会に周辺の支社から社員が応援に集まる。嘉戸広之代表取締役副社長は「一つの道を極める人材は(会社全体にも)好影響を与えてくれる。一体感醸成の効果は期待以上」という。

多様な人材を受け入れる過程で企業側も働き方改革が進む。JOCの目下の課題は、そんなアスリート雇用の効用を広く訴えること。五輪後は採用熱の冷え込みも予想されるだけに、八田茂ディレクターは「体験してくれた企業は後輩の採用にもつながる。『アフター2020』のためにも輪を広げたい」と、採用企業同士の情報交換会などを開催している。目標は20年時点で累計300人。大台達成はなるか。

(本池英人)

[日本経済新聞2016年12月8日付朝刊]

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