寂しくて…留学中の彼にあたってしまいます
作家、石田衣良
初めてできた彼氏との遠距離恋愛に悩んでいます。彼は1年の海外留学中。自分は応援できると思っていましたが、寂しくて彼に当たってしまいます。彼も寂しいと言いますが、現地生活を頑張っている様子。私だけが彼を好きで依存しているのかと卑屈になり、気持ちをコントロールできません。(東京都・10代・女性)
遠距離恋愛ね、それはなかなかたいへんだ、と思って相談のメールを読んでいると、愕然としてしまう。彼の海外留学はたったの1年間。彼女の年齢はまだ10代! 別になにも問題なんてないじゃないかとつい口走りたくなる。
はっきりいって1年など、そうやって痴話喧嘩をしているうちに過ぎてしまう。彼も寂しいといっているなんてくだりは、ただのおのろけにしかきこえないしね。気持ちをコントロールできないというのは、恋愛自体にもともとそういう暴れ馬のような性質があるのだから、ある意味あたりまえです。
まだ学生で恋愛初心者のあなたは、すべてを大事のようにいっていますが、大人はみんなそうした恋愛のトラブルを乗り越えて、結婚したり子育てをしたりしている。誰でもとおる成長過程の最初の一歩です。もうすこし落ち着いて自分の状況を考えてみよう。
今はスカイプとかもあるので、顔を見ながらの電話だってできる。それは確かに毎週のようにリアルなデートをしていたときのようにはいくはずがない。けれど留学というからには、彼だって身につけるべき目標があるのでしょう? 自分だけとり残された気になって、卑屈になったり怒ってみたりというのは、異国でがんばる彼にはただのお荷物にすぎません。
あなたはまだ子どもなのだから、遠距離恋愛なんてあきらめて、さっさと他の身近な男子を探してみたらどうですか。あなたの存在が彼のためになるとは到底思えないし、別れたほうがおたがい楽になれる。正直10代の失恋の傷なんて絆創膏(ばんそうこう)を張って1週間もすれば治ってしまうものです。
すこしは悔しくなりましたか。彼が素晴らしいから、別れたくないと思いますか。それなら、あなたが成長してください。自分の感情を観察し、コントロールするすべを学び、寂しさや怒りを抑制し、留学を応援できるガールフレンドへとステップアップしてください。彼はがんばって勉強しているのだから、あなたも自分のやるべきことに一生懸命とり組みましょう。
恋愛は劇薬です。人を活かしもすれば、殺しもします。古今、恋のために滅んだ人も、国もあまたあるのです。この恋愛があなたと彼の今後にどんな影響をおよぼすか。そこを真剣に考えてみましょう。彼とこれからもつきあいたいのなら、それくらいの覚悟で自分を鍛え直してください。
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[NIKKEIプラス1 2016年12月24日付]
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