非合理な「毎月分配型」 あえて選ぶ人へ(窪田真之)楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

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「毎月分配型ファンドは非合理だが、老後の生活資金として人気が高い」

投資家に毎月分配金を支払う「毎月分配型」の投資信託で、分配金の引き下げが増えています。超低金利による運用難が直接の原因ですが、こうしたファンドはもともと利益というより、元本を払い戻すことで、高水準の分配金を保ってきたケースがほとんどです。いずれ限界が来るのはわかっていましたから、分配金の下げは当然の流れといえます。

元本を分配金として払い戻し続けてきたファンドには、基準価額が4000円台と設定時(1万円)の半値以下に下がっているものもあります。投信を保有してきた個人投資家は大きな評価損を抱える結果になっています。たくさんの分配金を受け取れたとしても評価損を考慮すると、もうけはないことになります。

個人はなぜ毎月分配型のファンドを好むのでしょうか? これには2つの説があります。

まず第1に、分配金利回りを「運用の成果」と勘違いしている投資家が多いと考えられます。分配金に元本払戻金がたくさん含まれているにもかかわらず、それを運用によるもうけと思い込んでいるわけです。元本払戻金は、自分の預金を引き出すのと実質的には同じです。一見高い利回りに見えるので、有利な運用と思って投資している可能性があります。

ところが、今日では高水準の分配金に元本払戻金が含まれていることがあちこちのメディアで報道されているので、かなり広く知られるようになってきました。そうした事実を知った上で、それでも毎月分配型ファンドに好んで投資する人もいます。

筆者には定年退職して年金暮らしになり、毎月分配型ファンドを保有している知人がいます。彼は保有理由を以下のように語っていました。「毎月の収入の範囲内で生活してきたから、毎月の収入が少ないと寂しいんだよ」。つまり第2の理由は人間心理によるところが大きく、あまり合理的には説明できないのです。

私は過去25年間、日本株のファンドマネジャーをやってきました。1999年から2013年まで15年間は、投信の運用にも携わりました。運用する立場でいつも不思議に思ってきたことが、毎月分配型ファンドの異常な人気です。

私が担当していた投信は毎月分配型ファンドではなく、東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用成績を上げていても、あまり新規の資金流入はありませんでした。一方、毎月分配型ファンドは大変な人気で、どんどん運用資産が増えていくのをうらやましく思っていました。投信を運用するファンドマネジャーとしては複雑な感情でした。

お断りしておきますと、私は毎月分配型ファンドのすべてが問題というつもりはありません。中には長期的な運用利回りが良好なファンドもあります。そういうファンドに投資して、毎月支払われる分配金を生活費に充てているのならば、それでいいと思います。

ところが、毎月分配型ファンドでも不思議なことに、毎月支払われる分配金を受け取らずに、再投資に回している投資家がたくさんいます。分配金を生活費に充てるわけではなく、ただ機械的に同じファンドに再投資し続けているわけです。これはかなり非合理です。

なぜなら、分配金の原資が利益から出ている場合は原則として税金が取られるからです。今の税制で分離課税方式を選択していれば20%の源泉税が取られます。これでは毎月税金を払うために分配金を受け取っているようなものではないでしょうか(分配金の原資が元本払戻金の場合は源泉税はかかりませんが、毎月分配金を受け取れるというファンドの趣旨からして何のために再投資するのか、私は理解に苦しみます)。

私のファンドも運用成績が良ければ、利益から分配金を出していました。かつて、投資家の方と話をする機会がありました。その方は設定来、私のファンドを保有していました。その方の言葉で驚いたことがあります。私のファンドから「分配金を受け取ったことがない」というのです。ご本人は忘れてしまったようですが、最初に投資したときに「分配金再投資型」を選択していたのでした。その方には分配するたびに、税金を払わせていたことになります。これはファンドマネジャーとしては悲しいことです。

毎月分配型ファンドでも、本人が忘れて気付かないまま分配金を再投資に回しているケースがあるかもしれません。分配金を機械的に再投資するのはまったく意味のないことです。あえて毎月分配型ファンドを選ぶ際には分配金は再投資しないようにしましょう。

さらにいえば、長期的に運用する資金は毎月分配型ファンドは適していません。やはり「分配金をほとんど支払わない」「信託報酬(手数料)の低い」「ゆえに複利効果が期待できる」ファンドに投資した方が合理的です。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏とレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が交代で執筆します。
窪田 真之(くぼた・まさゆき) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行、91年ニューヨーク駐在。92年住銀投資顧問(当時)日本株ファンドマネジャー、99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年から所長兼務。大和住銀投信投資顧問では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。著書に「投資脳を鍛える!株の実戦トレーニング」(日本経済新聞出版社)など多数。
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