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バイオ燃料の聖火リレーが「持続可能性」の五輪を灯す 環境カウンセラーの崎田裕子さんに聞く

2016/12/9

バイオ燃料で灯した聖火リレーに期待する崎田裕子氏

2020年東京五輪・パラリンピックは資源のムダをなくし、持続可能性に配慮する大会を目指している。開催まで4年を切った今、開催国として環境負荷を抑える先進的な取り組みを世界に示すために何が必要なのか。大会組織委員会の有識者会議「街づくり・持続可能性委員会」のメンバーで、環境カウンセラーの崎田裕子氏に「エコ五輪」づくりのポイントを聞いた。

――東京と同様に環境配慮をうたったリオデジャネイロ大会やロンドン大会から学ぶことはありますか。

「リオでは、実際に見たパラリンピックが印象的でした。仮設の競技施設は質実剛健という印象を受けた。例えば、ゴールボール会場の『フューチャーアリーナ』は大会後に解体され、4つの小学校を建設するために木材などを再利用することになっていた。廃棄物を出さず、長い木材をそのまま再利用できるように外壁を囲むように配置されており、非常にシンプルだった」

リオデジャネイロ大会のオリンピックパークでは、資源とゴミの担当スタッフが活躍した(写真提供:SAKITA office)

「五輪は持続可能な都市のシステムを定着させることが期待されており、ロンドンの場合、その一番顕著な例は『ボリスバイク』だった。目的地の最寄りの駐輪場に返せばよいレンタル自転車の仕組みで、旗振り役を担った自転車好きのボリス・ジョンソン市長(当時)の名前から、そう呼ばれている。交通渋滞を回避できるうえ、排ガスも出ない自転車の利用が定着した。システムとして定着すれば、自転車が走りやすい道の整備も進む」

――東京都はFCV(燃料電池車)タイプのバスを導入するなど水素社会の先取りを意識しているようです。

「環境負荷が大きい自治体である東京都が東京五輪をきっかけに水素活用の努力をすると宣言したのは、大事なこと。舛添要一前知事が水素社会の旗を振っていたのは、良いきっかけになると思っていた。小池百合子知事も衆院議員時代に自民党の水素議連(FCVを中心とした水素社会実現を促進する研究会)の会長を務めていたので、水素を導入しようという方向は応援し続けてほしい。首長のリーダーシップがあれば可能だろう」

――街づくり・持続可能性委員会が提言していた「都市鉱山」から回収した金属を再利用するメダルづくりが具体化しつつあります。

「組織委員会は『都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト』の事業協力者を選定する作業に入った。使用済みの小型家電から回収した金属で金銀銅すべてのメダルをつくろうとしているのは、大変な決断だったと思っている。ただ、金属を集めるのは大変。小型家電リサイクル法は13年施行だが、今も回収率は低く、トレーサビリティー(生産履歴の追跡)の確保という課題もある。これらを踏まえたうえで、しっかりと社会を巻き込める企画が事業協力者から出てくることを期待している」

東京大会ではバイオ燃料の聖火リレーをめざす(8月3日、リオの聖火リレー=柏原敬樹撮影)

――社会を巻き込む「参加型」のプロジェクトは今後はどうなりますか。

「バイオ燃料で灯(とも)された聖火を使ったリレーができれば、ワクワクするし、皆で次の時代をつくっていく気持ちになれると思う。聖火が全国を巡るときに、バイオ燃料の供給拠点を各地につくって、参加型の仕組みにできるといい。大学の研究者に聞くと、技術的には不可能ではない。メダルと聖火の2つの取り組みによって、東京大会が持続可能性を重視している印象は明確になる」

――残る準備期間の課題は何でしょうか。

「大会の準備はたとえ目立たなくても、しっかりやらないといけない。例えば、大会運営に必要な物品の調達。組織委は『持続可能性に配慮した調達コード』を定め、選手村で使う家具などの材料がどこから採取され、何を使って作られているのかを重視するといった原則を決めた。詳細については、委員会のメンバーの中でも議論が続いている。運営計画の中で具体的な数値目標が決まるのは1年後でしょう」

――どんな数値目標が盛り込まれるのでしょうか。

「個人的には、ゼロエミッション(排出ゼロ)の宣言をした方がよいと考えている。そういう数値を掲げることで『やる気だな』ということが世界に伝わりやすい。パリ協定の発効で世界は『脱炭素』に向かっている。それに加えて『脱廃棄物』を示すことが、東京大会らしさになる。ゼロエミッションという目標を掲げようと皆が決心して、それを具体化する流れをつくるだけでも、1年ぐらいはかかる」

(聞き手は山根昭)

さきた・ゆうこ 1974年立教大社会卒。集英社で雑誌の編集を手掛けた後、フリージャーナリストに。NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長などを務め、生活者の視点から環境・エネルギー問題に取り組む。講演・執筆活動のほか、環境カウンセラーとして環境学習の推進にも注力する。環境省の中央環境審議会委員、国土交通省の国土審議会委員、2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の街づくり・持続可能性委員会委員などを務め、持続可能な社会づくりへの提言を続ける。

日経からのお知らせ 日本経済新聞社と産業環境管理協会が主催する「エコプロ2016~環境とエネルギーの未来展」(12月8~10日)で、プロフィギアスケーター、鈴木明子氏と崎田裕子氏によるパネルセッション「東京オリンピック・パラリンピックを契機にした環境・持続可能性の進化に向けて」を10日午後1時に開きます。会場は東京・有明の東京ビッグサイト・東ホール。

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