話題の炊飯器 ツヤツヤごはん、おかず調理機能に驚き
VERMICULAR RICEPOTを実際に使ってみた
2015年夏に開発が公表され、家電好き、ごはん好きの間で話題になった「VERMICULAR RICEPOT(バーミキュラ・ライスポット)」。機能はシンプルだが、ごはんがおいしく炊けるということで注目された炊飯器だ。12月1日に発売された実機を試してみたが、炊飯器としての実力以上に、おかずを作る調理道具として魅力を感じる結果となった。
「VERMICULAR RICEPOT」とは
普通の炊飯器以上にごはんがおいしく炊けると発売前から話題になっていた炊飯器「VERMICULAR RICEPOT」が、2016年12月1日、正式発売された。この炊飯器は、従来の炊飯器と比べて、よりごはんがおいしく炊けるという。
機能的にみると、VERMICULAR RICEPOTは非常にシンプルな炊飯器だ。水分調整以外の、ごはんの食感調整機能は搭載しない。最近、炊飯器でトレンドになっている圧力機能はもちろん、保温機能さえ搭載しない。
開発担当者は「保温機能があると、炊飯鍋はいつまでも温かく、冷めることがない。それによって、米の味の劣化が起きる」と語る。また、圧力をかけないため、お米の表面に必要以上に傷が入らず、粒感をキープできるという。
VERMICULAR RICEPOTは「専用鍋」と「ポットヒーター」で構成される。鋳物ホーロー鍋で作られた専用鍋と、IH技術を駆使し最適に加熱調理ができるポットヒーターは、どちらも独自開発だ。
同社Webサイトから注文ができるが、すでに12月分の出荷分は売り切れ。これからの注文分は2017年1月以降の発送となる。
ホーロー鍋「VERMICULAR」から誕生
製品名にある「VERMICULAR」とは、名古屋市にある愛知ドビーが製造・販売する鋳物ホーロー鍋の総称だ。
愛知ドビーは創業80年を超える町工場。ホーロー技術を自社開発し、2010年に密閉性に優れた独自の鋳物ホーロー鍋であるVERMICULARを発売した。鋳物ホーロー鍋は現在、「Oven Pot Round」という商品名で展開され、直径14cmから、18cm、22cm、26cm、26cm SUKIYAKIの5種類をラインアップしている。
SNSでは、愛用者から「VERMICULARでごはんを炊くとおいしい」という声が数多く上がっていた。この声が、今回のRICEPOT開発へとつながっていく。愛知ドビーでも以前からVERMICULARに適した熱源を開発したいという思いがあったという。
お米がおいしく炊ける仕組みとは?
VERMICULAR RICEPOTの鋳物ホーロー鍋は、これまでのOven Pot Roundとは異なるシルエットとなっている。また、鍋底のリブや蓋の形状も異なっていた。鍋底のカーブは、よりごはんをおいしく炊くために、炊飯時にごはんがよりかくはんできるように最適化されている。
蓋を見ると、Oven Pot Roundに付いていたつまみがなくなっており、蓋裏には2つのリング上の突起による「ダブルリッドリング」が配置されている。これにより、炊飯時の蒸気が水に戻った際、鍋肌を伝うことなくごはん全体に降り注ぐことになる。
開発に長い時間をかけたのが、ポットヒーターだ。ガス火でVERMICULARを使った際、温められた空気が鍋を包むような温度変化を起こすという現象を再現するため、底面にハイパワーIHコイルを採用した。さらに、側面にアルミヒーターを配置し、側面からも加熱、保温ができるようになっている。
仕組みは分かったが、実際の使い勝手はどうなのか。実機を使う機会を得たので、自宅で試してみた。
実際にごはんを炊いてみた
VERMICULAR RICEPOTの最大炊飯量は5合で、炊飯時に0.5合単位で設定する仕組みだ。お米をとぐときは、しっかりと水を切ってから適した水量を設定する必要がある。しかしRICEPOTの鍋は重い上、水位線がないため、水切りがやりにくい。自宅でいろいろと工夫してみた結果、別途ボウルとザルなどを使ってといだほうが効率的というのが結論だった。
お米と水をセットしたら、電源ボタンをタッチ。炊飯モードを選び、炊飯量を設定してから炊飯をスタートする。炊飯モードでは、白米、玄米それぞれで普通、おこげが選べるほか、白米でおかゆコースが選択できる。
炊飯をスタートすると、そこから30分かけて浸水を行い、その後30分で炊飯を行う。そのため、トータルの炊飯時間は60分かかる。ただし、別途浸水している場合などは、タイマー機能をつかい、炊き上がり時間を30分後に調整することで、すぐに炊飯をスタートすることができる。
炊飯開始から15分ほどすると、蓋の一部から蒸気が漏れ始める。VERMICULARはもともと密閉性が高い作りになっているが、ごはんを炊くときに蒸気が漏れるのは避けられない。そこでVERMICULAR RICEPOTの鍋蓋のフチの一部に「フローティンググリッド」というへこみを配置。これにより、蒸気が決まった位置から吹き出るように調整している。
60分経過すると、炊飯が完了する。蓋を取ると一気に蒸気が広がり、その下にツヤツヤに光るごはんが炊けていた。ごはんをほぐし、お茶わんによそうと、一般的な炊飯器で炊いたごはんとの違いがわかる。ごはん一粒一粒がしっかりとしているのだ。
口にすると、みずみずしさを感じるのにべたつきがなく、ごはんの粒感が感じられた。食感はしゃっきりとしているが、固いという印象はなかった。みずみずしさとしゃっきり感のバランスの良さを感じる。筆者は比較的柔らかめのごはんが好みなのだが、それでも、VERMICULAR RICEPOTで炊いたごはんは非常においしく感じた。それも、しゃっきりでありながらもしっかりと吸水しているからだろう。
玄米も上手に炊けた!
次に、玄米ごはんも炊いてみた。VERMICULAR RICEPOTでは炊飯時に圧力をかけないため、玄米の場合は事前に6時間以上の浸水が必要となる。炊飯時間は30分の浸水を含めて、白米と同じ60分だ。また炊飯容量は最大4合となる。
炊きあがった玄米は、白米同様にぱらっとした食感。圧力鍋や、圧力方式の炊飯器で炊いた玄米とは異なり、べちゃっとしていない。また、ぬか層などが含まれているため、白米と比べると食感はボソッとはした部分はあるが、それでも米粒がつぶれていないため、食べやすかった。おにぎりを握ってみると、まとまりがよかった。
ホットヒーター機能でおかず調理も可能
VERMICULAR RICEPOTという名前のため、どうしても、炊飯器というイメージが強いが、おかず調理もできる。ポットヒーターには調理モードも搭載しており、中火、弱火、極弱火、保温の4段階での調理が可能だ。保温モードでは、30度~95度に温度を調整して加熱する。この機能を利用することで、ローストビーフや、コンフィといった低温調理ができるのだ。
中火設定では、食材の焼き調理も可能。例えば、ローストビーフの表面を焼き、そのまま、低温調理に移行するといった使い方もできる。この低温調理機能を使って、鶏もも肉のコンフィとローストビーフを作ってみたが、非常に簡単に、そしておいしくできた。
一番の魅力と感じたのは、VERMICULARだからこそできる無水調理だ。たとえば肉じゃがやポトフを作るときは、水を入れずに具のまま煮込めばできあがる。VERMICULARは、同社の持つ精密加工技術を活かし、本体とふたを0.01mmレベルの精度で密着させることが可能。そのため、たまねぎなどから出てくる水分だけで煮込み料理を完成させることができるのだ。
実際、VERMICULAR RICEPOTを使っていくつかのおかず調理をしてみたが、非常に簡単だった。もちろん、VERMICULARとガス火でも調理はできる。ただし、ガスの火の場合は、火かげんの調整を失敗すると料理の完成度に影響が出るほか、火を使うため、その場を離れることはできない。しかし、VERMICULAR RICEPOTを使えば、おかず調理にもIH加熱が可能で、かつタイマー機能が使えるため、キッチンを離れても問題ない。
ごはんもおかずもおいしいVERMICULAR RICEPOT
製品発表直後から、しばらくVERMICULAR RICEPOTを使っているが、炊きたてのごはんの完成度はダントツだ。これは最高級炊飯器と比べてもおいしいといえるレベルにある。保温機能などを使わないスタイルならVERMICULAR RICEPOTはおすすめだ。
しかし、それ以上にインパクトを受けたのは、おかず調理機能の便利さだった。これを使えば、無水調理や低温調理が失敗なくできる。ほかに電気炊飯器があったとしても、そこにVERMICULAR RICEPOTを追加することで、平日はおかず調理に使える上、土日は最高においしいごはんを楽しむといった使い分けもできる。
(ライター コヤマタカヒロ/編集協力 井上真花)
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