控除って? 給与天引きの税金が決まるしくみを知ろう

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みなさんの給料から、当たり前のように天引きされている税金。「たくさん稼ぐ人は、税金もたくさん納めている」ということは、なんとなくご存じだと思いますが、税金は収入の高さだけでは決まりません。

今回は、誰も教えてくれない「税金(所得税)の決まりかた」について解説します。

年収400万円・独身 Aさんの場合

次の図は、給与収入400万円(30歳、独身、生命保険等の加入はなし)のAさんの所得税が決まる過程です。上から順に見てください。

年収400万円・独身 Aさんの所得税が決まる過程

年収から様々な段階を経て、私たちが最後に納める「納税額」が決まりますが、その間に「給与所得控除」「所得控除」「税額控除」と、「控除」という言葉が3カ所出てきます。

「控除」とは、「差し引く」ということ。つまり、控除が多ければ多いほど、税金は安くなるのです。

自分がどんな控除を利用できるのかを知らないと、もしかしたら、必要以上に税金を納めることになっているかもしれません。この機会に、税金が計算される仕組みを知りましょう。

【税金が決まるしくみ】

(1)年収から給与所得控除を除いて給与所得を算出する

税金は、年収に対してはかかりません。会社に行くためには、仕事に適した洋服や靴を買うので、それら必要経費は「給与所得控除」と呼びます。

つまり、年収から給与所得控除の必要経費を除いたものを「給与所得」と呼びます。ここまでは、同じ年収の人はみんな同じ所得になります。

給与所得控除の速算表

年収400万円のAさんの給与所得控除は、400万円×20%+54万円=134万円となり、400万円の収入から134万円を差し引いた金額が給与所得になるのです。

(2)個人の事情を考慮して、給与所得からいろいろ差し引く

同じ年収400万円だからといって、独身のAさんも、年老いた両親を養いつつ高校生と大学生の子どもがいるBさんも同じ税金がかかったら……Bさんの身になるとやりきれないですよね。

そこで、給与所得控除という会社員の必要経費を除いた後は「国に納めている社会保険料や、養っている家族の人数や年齢、生命保険や地震保険の加入の有無などの個人の事情を考慮して、税金を計算しましょう」というルールになっています。

この個人の事情は、給与「所得」から差し引くものなので、「所得控除」といいます。

主な所得控除

上の図の「所得控除」を見てください。Aさんの場合、給料天引きで納めている社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料)の1年分・58万1040円と、働くAさんの生活費相当分という決まった基礎控除額38万円の合計96万1040円を差し引きます。

「保険に入ったら税金が安くなる」「個人型確定拠出年金をすると税金が安くなる」と聞いたことがある人もいると思いますが、これらは所得控除の一つです。

この「所得控除」が多ければ多いほど、納める税金は少なくなります。

こうして、「給料から必要経費となる給与所得控除も差し引いたし、給料天引きで納める社会保険料などの個人の事情による所得控除を差し引いたんだから、そろそろ税金をかけても文句ないでしょ?」ということで、税率をかける元となる「課税所得」が決まります。

(3)課税所得が決まる

税金は「課税所得」を元にした税率によって計算するので、この「課税所得」が高いと税率は高くなりますし、低いと税率も低くなります。

所得税の税率は、5%~45%と7段階になっていますが、Aさんの課税所得は169万8000円なので、所得税率は5%です。

所得税の速算表

そこで、課税所得169万8000円(1000円未満切捨)に税率5%をかけて、税額を計算すると、8万4900円になります。

本来ならここで納める税額が決まるのですが、3つ目の控除、住宅ローン控除などの出番です。

(4)税額から、住宅ローンの控除額が差し引かれる

マイホームを買った人が申告する住宅ローン控除は、ここで求めた税額から一定金額を差し引きます。そのため、本来納める所得税よりも住宅ローン控除のほうが多い人は、所得税がゼロ円になります。ゼロ円になった人は、次の復興特別所得税を納める必要がないので、納税額はゼロ円で終了です。

(5)復興特別所得税を納める

所得税を納める人の所得税には「復興特別所得税2.1%」がかかります。これは、2011年の東日本大震災の復興にあてるための税金です。Aさんの場合は、8万4900円×2.1%なので、1782円です。

(6)(4)で算出した税額と復興特別所得税を合計した金額が納税額となる

課税所得を元に所得税の速算表から計算した金額と復興特別所得税を合計した金額が、実際に納める税額です。この計算により、年収400万円の独身のAさんの税額は8万6600円になるのです。

昨年の源泉徴収票が手元にある方は、それを見ながら、自分の所得税が決まる仕組みを確認してみてくださいね。

余談ですが、実はこうしたしくみを知っていたからこそ、私はパートナーのへそくりを発見することができました。

パートナーのへそくりを発見!

そのからくりは、カンタンです。

源泉徴収票の「支払金額」、いわゆる年収は、会社が給与として支払った金額です。それなら、毎月の給与明細とボーナス明細を合計すると、年収金額と一致するはず。それなのに……パートナーの場合は、一致しなかったのです。

パートナーの勤務先では、たまに会社から現金でもらえるお金があったのですが、それをコッソリ自分のお小遣いにしていたのです! 振込額だけを見ているときには気づかなかったのですが、わたしがファイナンシャル・プランナーの資格を取る際に勉強したことが生きて、「へそくり」が発覚しました(笑)。

実は、相談に来られる方の中にも、振込口座を2カ所指定できる企業にお勤めの方がいて、たまに2~3万円を別口座に振り込むようにしている人の「へそくり」が発覚することがあります。お金の知恵ってすごいですね!

前野彩(まえの・あや)
Cras代表取締役。FPオフィス will代表。大阪在住のファイナンシャル・プランナー。中学校・高校の保健室の先生を経て、結婚、退職、住宅購入、加入保険会社の破たんを経てFPに転身。自らの住宅ローンで800万円、生命保険で1000万円の見直しを行った実績を持つ。「お金の安心と可能性をかたちにし、心の自立と輝く明日をつくる」ことを理念に「知れば得トク、知らなきゃソンするお金の知恵」を働く女性や子育て世帯に伝えている。講演やテレビでも活躍中。著書多数。新著に『本気で家計を変えたいあなたへ ―書き込む“お金のワークブック”』(日本経済新聞出版社)。

[nikkei WOMAN Online 2016年11月14日付記事を再構成]

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