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ふるさと納税と住宅ローン 効果大きい税額控除

2016/12/11

 税金の控除をテーマに議論してきた筧ゼミ。最終回は屋久仁達夫さんが身近な税額控除である住宅ローン減税とふるさと納税について発表します。所得控除に比べて節税メリットが大きいだけに、ゼミ生たちも興味津々のようです。

筧花子(かけい・はなこ、50=上)経済大学院教授。家計の経済行動や資産形成、金融リテラシーが専門。 岡根知恵(おかね・ちえ、38=中)パート主婦。将来の家計に不安を覚え、金融知識を身に付けようと大学院に。 屋久仁達夫(やくに・たつお、54)大手製造業の技術職。定年を控え年金・介護など老後資金に関心。

 屋久仁 控除には主に2つの方法があります。まず所得控除は控除される分の所得に税率をかけた金額だけ税金が安くなります。一方、税額控除は一定の金額を税金からそのまま差し引くので、節税メリットが大きいのです。

 岡根 税額控除はややこしい税率の計算がないので分かりやすいと聞きましたが、どんな仕組みですか。

 屋久仁 まず代表格の住宅ローン減税から説明します。これは年末のローン残高の1%をその年の所得税から差し引く仕組みで、ローン残高が2500万円なら所得税が25万円だけ安くなります。しかも税額控除の期間は10年間なので、節税額は合計で100万円単位になるわけです。

 岡根 それは大きいですね。例えば住宅ローンを組んで1億円の高級マンションを買ったとして、その年末のローン残高が9000万円だったら、所得税から90万円も差し引いてもらえるのですか。

 屋久仁 いいえ。税額控除の対象になるローン残高は、一般的な性能の住宅なら4000万円が上限ですから、控除は最大でも年40万円までです。その年の合計所得が3000万円を超える高所得者も対象になりません。

  それほど所得が多くない人も気をつけたいことがありますね。

 屋久仁 はい。年末のローン残高が4000万円あっても、所得があまり多くなくて所得税が例えば10万円の人は、40万円の控除を引き切れません。引き切れない分は住民税から控除する仕組みがありますが、控除額は消費税率8%で購入した住宅の場合で最大13万6500円です。つまり節税額は合計で23万6500円にとどまります。

  シングル向けマンションなどを買うときも注意する点がありますね。コンパクトな間取りだと「床面積が50平方メートル以上」という住宅ローン控除の条件を満たさないことがあるのです。物件の購入価格が少し高くなっても、50平方メートル以上の物件を探した方が住宅ローン控除を含めた実質的な費用は少なくなるかもしれません。

 屋久仁 買い替えも要注意です。東京都心のマンションなどは購入価格を上回るような高値で売れることがあります。売却して1000万円の利益が出たとすると、不動産の譲渡所得として課税されるのが原則です。保有期間が5年超10年以下なら税率は20.315%で、200万円余りを納税しなくてはなりません。ただし自宅を売るときは3000万円の特別控除がありますから、これが適用されれば税金を払わなくてすむようになります。

 岡根 それと住宅ローン控除はどんな関係があるのですか。

 屋久仁 実は自宅を売るときの譲渡所得の特別控除と住宅ローン減税は原則として併用できない仕組みになっています。つまり新居の住宅ローン減税で200万円を超えるようなメリットが見込めるなら、あえて譲渡所得の特別控除を受けないという選択肢があるのです。

 岡根 なるほど。ところでパート先でふるさと納税が話題になっているのですが、どんな仕組みですか。

 屋久仁 所得のある人がどこかの自治体に寄付をすると、2000円を超えた分が一定の限度額まで所得税と住民税から税額控除される仕組みです。税制の趣旨はその自治体を応援することですが、寄付をしてもらった返礼として地元の特産品などを贈る自治体が増えました。そのため2000円の持ち出しで特産品がもらえるお得な制度として注目され、2015年度のふるさと納税額は1652億円と前年度の4倍強に急増しました。

 岡根 一定の限度額とはどのくらいですか。

 屋久仁 寄付をする人の年収や家族構成などによって変わります。計算がやや複雑なので、総務省は会社員など給与所得者の上限の目安を示しています。例えば年収800万円、妻が専業主婦、子どもが中学生以下の会社員なら12万円です。このうち11万8000円を所得税と住民税から控除してもらえます。医療費など他の控除があると、上限の目安が下がります。

  税額控除の手続きはどうなっていますか。

 屋久仁 かつては確定申告が必要だったのですが、昨年4月から寄付先が5自治体までなら申告が要らない「ワンストップ特例制度」が始まりました。寄付先の自治体に特例の申請書を提出しておけば、自分の住んでいる自治体に連絡され、税額控除の手続きをしてもらえます。この場合は所得税からの控除はなく、その分も含めて全額が住民税から控除されます。

 岡根 我が家もやってみようかしら。

 屋久仁 インターネット上には自治体の窓口となる、ふるさと納税の情報サイトが複数あります。どの自治体にいくら寄付すると、どんな返礼品をもらえるのかの情報が掲載されているほか、一部サイトには収入や家族構成、住宅ローン控除などを入力して上限の目安を試算する機能も付いています。

■ふるさと納税、上限に注意
 アンカー税理士法人代表社員税理士 今田隆幸さん
 ふるさと納税による控除の上限の目安は総務省サイトなどで確認できますが、医療費などの控除がない前提で試算したものです。多額の医療費がかかる入院などは予測が難しいので、ふるさと納税の控除枠は年末に課税所得の見通しがついてから使い切るのが一案です。このほか、住宅ローン控除を引き切れない人も、上限の目安が下がります。
 会社員は昨年からワンストップ特例制度で確定申告が不要になりました。ただし住宅ローン控除の初年度や医療費控除は確定申告をしなければならず、特例制度は利用できません。高所得者は自治体からの返礼品の価値が多額になることがありますが、これは税務上は一時所得とみなされます。50万円を超えた額の2分の1が、給与など他の所得と合わせて総合課税されます。(聞き手は表悟志)

[日本経済新聞朝刊2016年12月3日付]

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