疲れ目? いやいや初期老眼かも 早い人は30代から

日経ヘルス

2017/1/1
イラスト:sino
イラスト:sino
日経ヘルス

疲れ目とともに頭痛や肩こりに悩まされる眼精疲労は、目のピント調節力が低下したサイン。背景にあるのは、加齢とともに明らかになってくる“初期老眼”や“かくれ遠視”だ。老眼や疲れ目対策について3回に分けて解説する。まずは加齢に伴う目の変化についてみていこう。

調節力とは、近くを見るときにピントを合わせる力のこと。通常、遠くを見るときには働かず、視線を近くに移すと瞬時に毛様体筋が収縮し、水晶体が自らの弾力で膨らむことで発揮される(下図)。

近くを見ると水晶体周囲の毛様体筋が収縮し、水晶体が自身の弾性で膨らみ調節が起こる。近見作業で毛様体筋が緊張したり、加齢により水晶体が硬くなると調節力が低下する(イラスト:三弓素青)

このシステムがうまく機能しなくなると、目の疲れを感じるようになる。その要因として、エイジング(加齢)に伴う調節力の低下、すなわち“初期老眼”がある。「老眼は近くがぼやけることで気づくが、それ以前の初期老眼では、近くを見続けたあとに毛様体筋の緊張により遠くにピントが合いにくくなるのがサイン」と梶田眼科の梶田雅義院長は話す。

調節力は加齢とともに低下し、ピントを合わせられる最も近い距離である「近点」が次第に遠くなる。10歳の子どもの調節力は一般に14D(ジオプトリー)で近点距離は7cmだが、30歳で7D(14 cm)、60歳で1D(100 cm)となる(下グラフ)。近点距離が読書距離である33 cm(3D)を超え、手元が見づらくなった状態が老眼だ。

19~20世紀に行われた加齢による調節力の変化を追跡した4つの研究をプロット。研究ごとにわずかな差はあるものの、調節力は加齢とともに低下し、55歳以降、ほぼゼロに近づく点では一致している。(データ:Ophthalmic Physiol Opt;34,8-29,2014)

調節力の低下スピードは個人差が大きい。米国検眼協会はリスク要因として年齢のほかに、(1)遠視(2)近見作業(3)女性――を挙げている。遠くから近くまでよく見える「正視」だと、調節力が老眼レベルになるのは40代半ば。「近視」はより遅い。

だが、もともと、どの距離を見るにも調節に大きな負荷が必要な「遠視」の人では30代でも老眼になりやすい(下グラフ)。軽い遠視は自覚していない人も多い。眼精疲労や老眼のサインが出てやっと“かくれ遠視”があることに気づく人が少なくない。

調節力が低下すると、ピントの合う最も近い距離である「近点」が遠くなる。老眼を意識するのは約30cmを超えた時点。正視では40代半ばだが遠視の人はもっと早く、近視は遅い。(データ:視覚の科学;29,3:99-102,2008)

エイジングにはもう1つ、乱視を増やす側面もある。「水晶体は加齢で徐々に縦が長く、横幅が小さい形態へと変化する。その結果、倒乱視というタイプの乱視が生じ、年齢とともにそれが強くなっていく」と北海道医療大学個体差医療科学センターの北市伸義教授は話す。

遠視や乱視、老眼は適切なメガネやコンタクトレンズの装用が根本治療になる。一時的な眼精疲労の緩和にはサプリ成分も有効だ。

1つでも当てはまれば調節力低下が疑われる。頭痛や肩こりを伴う疲れ目が慢性化していたら眼精疲労。もし単純な老眼なら眼前30cmほどの距離にピントが合わなくなるのみ。だが、それをケアせず頑張って見る日々を続けると「老眼+眼精疲労」状態となる

■この人たちに聞きました

北市伸義さん
北海道医療大学個体差医療科学センター眼科学系教授。専門は炎症性眼疾患。アスタキサンチンやビルベリーエキスの眼精疲労に対する効果を検証する基礎研究、臨床研究を行う。北海道大学医学部卒業。2000年、同大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。北海道大学病院客員臨床教授も務める
梶田雅義さん
梶田眼科(東京都港区)院長。パソコン作業や老視の放置などによる目の調節異常に詳しい。眼精疲労の原因を特定する調節機能解析装置の開発に携わる。1983年、福島県立医科大学卒業。同大学眼科講師などを経て2003年から現職。医学博士。日本コンタクトレンズ学会理事

(ライター 小林真美子 構成:日経ヘルス 太田留奈)

[日経ヘルス2017年1月号の記事を再構成]

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