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えぞ菊・談志・永源遙… ラーメンあれこれ

立川談笑

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NIKKEI STYLE

テーマは「ラーメン」。とはいえ、これは専門的なグルメレポでも食べ歩きコラムでもありません。落語家の散漫なマクラ話ですよ。気楽にお付き合いくださいね。

【天下一品】

まずは「天下一品」の話から。先週、吉笑がこのコラムで扱っていたので奇遇に驚きました。というのも、十数年ぶり(!)に「天下一品」でラーメンを食べたばかりだったからです。場所はラーメン激戦区の都内、西早稲田。目指していた味噌ラーメンの老舗「えぞ菊」があまりに混んでいて、お隣の天下一品に滑り込んだのです。券売機の前で、選べるスープとして「こってり」「あっさり」があって更に「ハーフ」があって3種類。「あれれ? どういうこと?」と当惑したときの記憶を、あの文章はさらに混乱させてくれました。やるじゃないか、弟子。

【談志とラーメン】

あれは8年も前になるでしょうか。もはや衰弱がいちじるしかった談志は、本当に今日明日にも倒れてしまいそうな姿でした(その後入院をしてずいぶん元気になるのですが、その前の話です)。東海道新幹線を降りたのは浜松駅。落語会のホールに向かう車まで歩きながら、

「……ぎ、う。……あ。……」

出ない声を振り絞るように師匠が何ごとかをつぶやきました。ひとりごと?と思ったら再び同じ調子でつぶやいています。慌てて師匠の口元に耳を近づけると。

「ギトギトした、ラーメンを、ひとくちだけ、食べたい……」

「ははっ!」

この瞬間、弟子たちも迎えに来た関係者もヨーイドン! ばらばらばらっと四方八方に全力疾走しました。いい年をしたおじさんたちが息を切らせながら、あちこちで

「はぁ、はぁ。すみません! このあたりにギトギトしたラーメンはありませんか?」

必死の形相で謎の言葉を吐き散らすおじさんたちを目撃した人は、さぞ気味が悪かったことでしょう。

【談志とラーメン その2】

談志のラーメンエピソードをもう一つ。二日酔いの朝、インスタントラーメンを作ることがありました。たっぷりのお湯に「サッポロ一番塩らーめん」を入れて、煮ること約20分。くったくたに伸びた、ラーメンというよりもおじやのようなものを食べてましたっけ。

「二日酔いにはこれが一番なんだ」

と言ったときのうれしそうな表情を思い出します。一見とてもまずそうなのに、じわじわとおいしそうに見えてくるのが不思議。ちょっとまねしたくなります。どう見ても「粋(いき)」な食べ物じゃあないんですけど。

【夜鳴きそば】

夜になるとやってくる中華そばの屋台は、近年めっきり見かけなくなりました。チャルメラの音色もあのメロディも、遠い昔。今の若者なんかは思い出にすらないのかもしれませんね。小学校のとき、リコーダーを吹いて遊んだものです。「♪ソラシーラソ、ソラシラソラー♪」

夜が更けると近所の同じ場所に姿をあらわす屋台のラーメンが大好きでした。中細の縮れ麺で、スープは当時珍しい背脂チャッチャッ系のしょうゆ味。豚バラチャーシュー、メンマ、焼きのり、ナルトが基本で、味付きゆで卵はオプション。長ネギを切る時はまな板を使わずに、丼の上から包丁でそぎ落とす。いわゆる空中切りです。当時私は高校生。父親に連れられてその場で食べるのはもちろん、我が家の丼を持って行ってテークアウトして家で食べたりもしました。うまかったなあ。

藤岡重慶みたいな風貌のおやじさんはねじり鉢巻きで、いつも不機嫌そうな雰囲気でした。ところが、ある日を境に私だけが特別待遇になったのです。

「お兄ちゃん、大学受験するんだ。どこ受けるの?」

「できれば国立大学で、ひょっとしたら防衛大学校なんかも受けてみようかと」

「おお! 防衛大か。がんばれよ!」

こちらはちょっとだけ意識しているくらいのつもりだったのに、防衛大という言葉にやたら食いついたおやじさんは、それ以来私の顔を見るたびに満面の笑みで

「勉強してっか? 防衛大!」

「いざとなったら、おじさんたちを守ってくれよ!」

「日本を頼んだぞ!」

なんだか日本の国防を背負わされたかのように大げさなことになってしまいました。数カ月して、防衛大どころか国立大学の受験をしないことを告白すると、

「ちぇっ。なぁんだよ」

とあからさまに失望した顔を少しこちらに向けると、それっきり。私とは二度と口をきいてくれなくなりました。そうなると、私はまるで日本を捨てた、国を裏切ったみたいな気分です。気まずいから屋台からは私だけ足が遠のきました。その後しばらくして、ラーメン屋台は道端からすぐ近くに引っ越しをして、店舗内での屋台営業という不思議な形態になったと噂を聞きました。そろそろ忘れてるかな、と思い切って行ってみようとも思うのですが、いざとなると踏ん切りがつきません。早いもので、あれから30年。さすがに忘れてるだろう。行ってみようかな。というかそれ以前に営業してるのかなあ?

【ラーメンあれこれ】

渋谷の「鬼そば藤谷」は評判の名店なのに、とても場所が分かりづらいのです。センター街の真ん中なのに分かりづらいとはどうしたことでしょう。入り口を間違って別のラーメン屋さんに着席してしまう人もいるらしい。わざとなのか?

東京のとんこつラーメンの草分け、三軒茶屋にあった「永源ラーメン」の話を書くつもりでいました。店の外にあふれるとんこつ臭、店内の壁に張り巡らされたプロレスラーの生写真と、とことん強烈なインパクトの店でした。お身内が経営されていたのだとか。元プロレスラーの永源遥さんが先日、急逝されました。ご冥福をお祈りします。

青森県五所川原市にある、大好きなラーメン店を紹介しようと思ったら、今年の8月いっぱいで閉店と知りました。ショック。店名は「手打ち中華そば まるみ」。選べる麺が2種類あって、細縮れ麺が好きでした。煮干し系スープのすっきりしょうゆ味。店主が高齢のため、最近では営業時間が不安定で。だから、いくら食べたくても店が開いているかどうかは運次第ってのも面白かった。熱烈な巨人ファンで、

「きょうはデーゲームだから、試合中だけ店を開けてるんだ」

と、ありついたのが最後でした。残念。

そして気まずい屋台のその後の情報を調べました。店主のおやじさんはお亡くなりになって、やはり閉店でした。ところがその味を受け継いだ方が、奇遇にもこの11月から同じ場所で営業を開始したそうです。東京都江東区北砂にある「丸八ラーメン」。あの味に再会できそうです。楽しみ。

【今回のケツロン】

ラーメンは一期一会。目の前に立ちはだかる気まずさにもカロリーにも目をつぶって、食えるときに食っとけ! でないと後悔するぞ。

☆     ☆     ☆

次回のテーマは、「師走」。年の瀬の忙しい間をぬって、ちゃちゃっと楽しい原稿を書いておくれ。お弟子さんたち、頼んだよ!

(次回12月11日は立川笑二さんの予定です)

立川談笑(たてかわ・だんしょう) 1965年、東京都江東区で生まれる。海城高校から早稲田大学法学部へ。高校時代は柔道で体を鍛え、大学時代は六法全書で知識を蓄える。予備校講師など様々なアルバイトを経験し、93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。テレビの情報番組でリポーターを務めながら芸を磨く。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名。05年に真打昇進。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評がある。十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
<今後の予定>独演会は12月17日の予定。吉笑(二ツ目)、笑二(同)、笑坊(前座)の弟子らとともに武蔵野公会堂(東京都武蔵野市)で開く一門会は12月25日の予定。
立川談笑HP http://www.danshou.jp/

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