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転ばぬ先の不動産学

中古マンション、都心部戦線に異状あり 不動産コンサルタント 田中歩

2016/12/7

中古マンションの市場価格は調整局面入りしたという見方もある(東京都中央区)

2013年初から上昇を続けてきた中古マンション価格ですが、どうやら最近になって状況が変わってきたようです。「東京23区内の中古マンション価格の上昇が止まった」「一部では価格が下がっているマンションもある」という声が現場のあちこちから聞こえてきます。

■13年以降の金利低下が価格に影響

23区内の中古マンションの成約価格はこのようになっています(グラフA)。08年1月から上下動を繰り返しながらも、13年以降は上昇傾向をたどり、今年7月から10月の平均成約価格は約71万円/平方メートル程度で横ばいとなっています。

在庫推移と成約価格の関係を見ると、在庫の減少が進むと価格が上昇し始め、在庫の上昇が始まってしばらくすると価格が下がるということが分かります。ただ、15年5月以降については、在庫は急上昇しているものの、価格は上昇から横ばいという状況になっています。

これは、13年以降の住宅ローン金利の低下が一つの要因です。金利の低下によりローンで借りられる金額が上昇し、それがマンション価格の上昇に寄与したと考えられます。

■成約日数は長期化の傾向

では、23区のうち利便性や資産性が高い地域とされる都心7区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、目黒区、品川区)についても、23区内全体と同様の状況になっているのでしょうか。これを調べるため、実際の取引事例を使って、都心7区に存在する中古マンションの動向を見てみることにしました。

グラフBは都心7区で取引された中古マンションの平均成約単価(万円/平方メートル)と成約日数の推移です。それぞれ直近6カ月の数値の平均値をその月の値とした6カ月移動平均でグラフ化しました。

平均成約単価は13年以降上昇を続けてきましたが、15年4月ころから価格上昇ペースが低下し、現在は90万円/平方メートル程度で横ばいとなっていることがわかります。一方、成約日数(売り出した日から成約した日までの期間)は15年夏ごろの50日程度から現在は65日超と上昇傾向にあります。

価格帯がより高い水準にある都心7区の中古タワーマンションについても見てみましょう(グラフC)。なお、ここでいうタワーマンションとは「地上20階建て以上の高層マンション」のこととしています。

都心7区の中古タワーマンション価格は、昨年夏の約120万円/平方メートルをピークに下落傾向です。成約日数も60日から80日を超える日数へと大きく上昇していることがわかります。

■インバウンド投資が減少

在庫が急増したにもかかわらず、価格が横ばい傾向となっている要因の一つは、金利低下であるとお話ししましたが、金融機関の体力消耗の状況からみて、今後、さらに住宅ローン金利が低下する余地は極めて少ないでしょう。

また、都心部の中古タワーマンション価格が下落傾向にある要因の一つは、インバウンド投資の減少です。円高の影響で海外からの投資が少なくなったのです。

昨年夏は120円台だったドル円為替レートは、今年のはじめから急騰し100円前半まで上昇したわけですから、海外からの投資家からすれば、日本の不動産に手を出しにくくなったのは間違いないでしょう。

為替レートは先の米大統領選挙後、円安に振れていますが、これは一時的なものではないかと思っています。12月のイタリア国民投票を皮切りに、来年のオランダ総選挙、フランス大統領選挙、ドイツ総選挙が控えています。これらの動向次第では、ヨーロッパの金融や政情不安定が想起され、円高となる可能性のほうが高いのではないかと思っているからです。

為替がこのまま円安水準にあるとは思えないこと、金利のさらなる低下が見込めないこと、在庫調整に一定の時間がかかることから考えると、今後、都心部の中古マンション価格はダウントレンドに転換していくと考えざるをえません。都心部の中古マンションを売る予定がある場合は、早め早めの対応が肝要でしょう。

■ストライクゾーンを見極める

ダウントレンドとなることが予想される中で不動産を売る場合のポイントは、「絶妙な価格設定」です。野球でいえばストライクゾーンにボールを投げないと、誰も手を出してくれない状況といえるでしょう。しかも市場動向に伴ってストライクゾーンが変化することも加味しなければなりません。

こうした状況下では、成約価格・成約日数・競合物件の販売状況などを踏まえ、その時々の的確なストライクゾーンを見極めることが必要です。あなたのマンションを他の競合物件よりも高く売却するためには、その作戦を立てることができる不動産コンサルタントを見つけ出すことも重要なポイントとなりそうです。

田中歩(たなか・あゆみ) 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション付き住宅売買コンサルティング仲介など、ユーザー目線のサービスを提供。2014年11月から「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」執行役員として、総合不動産コンサルティング事業の企画運営を担う。

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