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「睡眠不足」悪事の数々 免疫低下、無力感、体重増も アリアナ・ハフィントン流 最高の結果を残すための「睡眠革命」(2)

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2016/12/7

6時間睡眠を2週間続けるだけで、私たちの能力は24時間眠っていないのと同じくらい低下するそう(c)pixinoo -123rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

睡眠は、ほかのどんな方法よりもプラス効果がきわめて高い「究極の健康法」だ。睡眠を犠牲にして何かしようとするのは、「愚の骨頂」。人生を豊かにする「睡眠革命」に今すぐ取りかかろう!……こう主張するのは、「ハフィントンポスト」の創設者として知られるアリアナ・ハフィントン氏だ。現在は睡眠の伝道師ともいえる活動に取り組むハフィントン氏が、睡眠がいかに健康に深刻な影響を及ぼすのかを語る。

■あなたの睡眠不足の原因は、本当に時間がないから?

「ハフィントンポスト」の創設者で、今は睡眠の伝道師として活動するアリアナ・ハフィントン氏(c)Peter Yang

睡眠は万人共通だが、「十分な睡眠を取る時間がない」という思い込みもまた万人共通だ。しかし実際には、私たちは自分の裁量で使える時間を、思うよりずっと多く手にしている。鍵は、その使い方を正直に見つめることにある。

例として、マサチューセッツ工科大学で科学技術社会論の教授を務めるシェリー・タークルに登場してもらおう。テレビを自分への褒美にしていた彼女は、本の執筆を終えた後に「マッドメン」や「ホームランド」「ジ・アメリカンズ」といったドラマを見るのが常だった。彼女は私にこう言った。

「すばらしいご褒美だと思っていたわ。『友情』の章を書き終えたら『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』を見よう、『ロマンス』を仕上げたら『ハウス・オブ・カード』って独り言を言ってね。私は『テレビドラマを優先する』なんて言っていたわけじゃない。でも自分が『睡眠を優先する』と言ったことがないことに気づいて、ショックだった」

世界中で何百万もの人々が彼女と同じことをしているが、睡眠不足の代償は非常に大きい。一晩の睡眠時間が5時間以下になると、すべての死因を合計した死亡率は15%上昇する。米国睡眠医学会による発表をもとにCNN.comが2015年に掲載した記事では、「眠るか、さもなくば死すか」という挑発的なタイトルのもと、心臓発作・脳卒中・糖尿病・肥満のリスク上昇と睡眠不足との関連性が紹介された。十分な睡眠を取るかどうかは、実際に生死にかかわることなのだ。

■1週間の睡眠時間を1時間減らすだけで心臓発作リスクUP

睡眠障害がある男性は心臓発作のリスクが2~2.6倍高く、脳卒中のリスクも1.5~4倍高いという報告も(c)Kladej Voravongsuk -123rf

死には至らない場合でも、睡眠不足が招く健康の悪化は危険きわまりない。睡眠医学の専門医キャロル・アシュによれば、1週間の睡眠時間を1時間減らすだけでも(多くの人がためらいもなくしていることだ)、心臓発作のリスクが高まる可能性があるという。また、サマータイムの切り替えだけでも私たちの睡眠パターンは一時的に乱される。

警告ベルはまだまだある。ロシアの研究では、心臓発作を起こした男性の63%弱に睡眠障害もあったことが見いだされた。そして睡眠障害があった男性は心臓発作のリスクが2~2.6倍高く、脳卒中のリスクも1.5~4倍高かった。ノルウェーの研究によれば寝つきに問題を抱える人は交通死亡事故の34%に関与しており、不眠の症状がある人は事故のけがで死亡する確率が3倍近くも高かったという。また、睡眠覚醒サイクルの制御ホルモンであるメラトニンの不足は、乳がん・卵巣がん・前立腺がんのリスク上昇との関連性が見いだされている。

睡眠不足は免疫系を弱らせるので、風邪などのありふれた病気にもかかりやすくなる。職場では、従業員が疲れているときは、少し長めに眠って遅刻してもらうほうが、後になって数日病欠されるよりは会社にとってもいいかもしれない。ましてや、その従業員が無理に出勤してくれば、他の人に病気をうつす可能性だってある。

■6時間睡眠×5日で「しわ」「しみ」「赤み」が増加

睡眠不足は体重コントロールにも大きな影響を及ぼす。メイヨークリニックが1週間かけて行った実験では、睡眠を制限された被験者はそうでない被験者に比べて1日当たりの摂取カロリーが559キロカロリー多く、体重増加も大きかった。また、一晩当たりの睡眠時間が6時間の人は体重超過のリスクが23%高い。そして4時間以下になると、リスク上昇は73%にも達する。

理由の一つはグレリンというホルモンにある。食欲を増進させるこの「空腹ホルモン」は、睡眠が多い人のほうが分泌量が少ないからだ。同じ研究において、睡眠不足のグループは、食欲を低下させる「満腹ホルモン」、レプチンの量が少なかったとも報告された。睡眠を削ることは太るための理想的な方法といえるほどだ。別の研究では睡眠と神経伝達物質オレキシンとの関連性も指摘されている。オレキシンは身体活動とエネルギー消費を促す働きがあるが、睡眠不足になると減少する。

要するに、十分に休んでいなければ、健康ではいられない。そしてそれは外見にも表れる。スウェーデンでは、睡眠不足の人とよく休んだ人の写真を見比べるという研究が行われた。研究に協力した一般の人々は、睡眠不足のグループのほうが「不健康・疲れている・魅力が少ない」と答えた。英国では、女性30人を対象に睡眠不足の影響を調べる実験が行われた。8時間眠った後に皮膚の撮影と分析を行い、次に5日間連続で6時間睡眠にして、結果を比較するというものだ。すると、しわは45%、しみは13%、赤みは8%増加していた。睡眠不足は特殊メイクのようなものといえるだろう。

■睡眠不足の人は「無力感」「孤独感」を感じやすい

睡眠は脳機能の維持にも重要な役割を果たすことが明らかになってきている。脳は私たちが眠っている間にさまざまな毒素を処理する。アルツハイマー病との関連性が指摘されているたんぱく質もその一つだ。この仕事をこなす時間を脳に与えてやらないと、その代償は非常に高くつく可能性がある。

睡眠は体の健康と同じくらい心の健康にも影響する。知られているほぼすべての心の病気について、睡眠不足との強い関連性が見いだされているほどで、その代表格がうつと不安だ。デラウェア大学の心理学者ブラッド・ウォルガストは「うつや不安がある人を少し詳しく診察すると、8割から9割に睡眠障害が見られる」と言う。

2012年に行われた英国睡眠調査では、睡眠不足の人はそうでない人に比べて無力感を7倍、孤独感を5倍感じやすいと報告された。健康的な食生活を勧めるウェブサイト「スキニー・キッチン」を運営するナンシー・フォックスは、彼女自身の経験についてこう書いている。

「睡眠不足だった頃の私は『ストレスのコップ』が常にいっぱいのような状態だった。ストレスがほんの少し増えるだけであふれてしまう。ある日、経営するレストランの駐車場で車の座席に座っていたら、電話がかかってきた。私がその日の相乗り通勤の運転当番だという連絡だった。しかし私は、先に子どもを迎えに行くのを忘れていた。(中略)私はそれだけのことで打ちのめされてしまった!(中略)寝不足のせいで感情が不安定になっていて、(中略)ささいなことが大問題に感じられた」

睡眠不足は私たちの知的能力も奪う。ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン校の教授ティル・ローエンバーグは次のように話している。「認知能力が大幅に低下する。記憶力も低下する。対人関係の対応能力も低下する。あらゆる能力が影響を受け、意思決定の仕方も変わってしまう」

■4時間睡眠による能力低下は48時間の不眠に匹敵

あの人のイライラも睡眠不足のせい?(c)imtmphoto -123rf

6時間睡眠を2週間続けるだけで、私たちの能力は24時間眠っていないのと同じくらい低下する。4時間睡眠による能力低下は48時間の不眠に匹敵する。情報番組「トゥデイ」の調査によれば、睡眠不足の副作用として、集中力が低下する(29%)、趣味やレジャーへの関心がなくなる(19%)、日中の不適切な時間に眠ってしまう(16%)、怒りっぽくなったり、子どもやパートナーに対して振る舞いが不適切になる(16%)、職場での振る舞いが不適切になる(13%)、といった回答が寄せられた。

もし友人からずっとこんな状態だと聞かされたら、あなたはその友人に飲酒か薬物の問題があるのではと心配して、治療を受けるよう勧めるのではないだろうか。睡眠不足も同じくらい緊急かつ深刻な問題なのに、落差はあまりにも大きい。

これらの「副作用」は時に重大な結果を招く。ワシントンDC在住のコンサルタント、ナリニ・マニは、30代を平均2.5~3時間の睡眠で過ごした。彼女は体がついに悲鳴を上げたときのことをこう記している。

「ラガーディア空港からのシャトル便を下りて歩き、午後10時に帰宅した。家に入って靴を脱ぎ、ほんのしばらくのつもりでカウチに座った。その後のことはよく覚えていない。気づいたら翌朝の9時半で、服を着たまま、カウチの同じ場所に同じ姿勢で座っていた。体がシャットダウンしてしまって動けなかったのだ」

アリアナ・ハフィントンさん
「ハフィントンポスト」創設者、スライブ・グローバル社の創設者・CEO。2005年5月にスタートした『ハフィントンポスト』はたちまち評判になり、多数の読者を獲得。2012年にはピューリッツァー賞(国内報道部門)を受賞した。2016年8月に設立した新会社スライブ・グローバルは、人々の健康と生産性向上のため、最新の科学的知見にもとづくトレーニング、セミナー、eラーニング講座、コーチング、継続的サポートなどを世界各地の企業および個人に提供すると発表している。近著に『Thrive』(邦題『サード・メトリック しなやかにつかみとる持続可能な成功』CCCメディアハウス)。最新刊『The Sleep Revolution』(邦題『スリープ・レボリューション』日経BP社)は米国で15万部のヒットに。

(訳 本間徳子)

[書籍『スリープ・レボリューション 最高の結果を残すための「睡眠革命」』を再構成]

スリープ・レボリューション

著者 : アリアナ・ハフィントン
出版 : 日経BP社
価格 : 1,944円 (税込み)

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