時の流れを考えさせられる 「独自時間軸」手帳
自由すぎる個性派手帳(3)
江戸時代の自由な遊び心を満載
特定ジャンルのファンに向けた手帳は面白いものが多くて、「歴史手帳」や「吉本手帳」などを紹介してきた。また、「妖怪手帳」なんかもあったし、2016年には「名画座手帳」も登場していて、好きなジャンルの情報を自分のスケジュールに重ね合わせる楽しさも、手帳ならではといえよう。
「江戸帖」は、ジャンルというよりひとつの時代を現代に重ねてみようという試みなので、ファン向けよりも汎用性は高い。手帳カバーに凝って趣味性を出すスタイルに似ているのかもしれない。
見開き1カ月の月間スケジュールを書き込む欄に、当たり前のように旧暦や節気、節句、月齢、季節の行事が書かれている。それだけでも複数の角度から現実を俯瞰できるわけで、そういう意味ではこの手帳は極めて現代ビジネス的な手帳ともいえるのではないだろうか。
江戸時代の人々は楽しむことに関して現代人よりも明らかに得意だったようなので、その暮らしぶりや考え方を生活に取り入れられる江戸帖は、かなり役に立ちそうだ。
そのうえで、手帳としては見開き1週間のバーチカル型と、ビジネス向きの設計。そこに月齢や二十四節気、七十二候などの暦データや、浮世絵、豆知識などを合わせるレイアウトが新鮮。また全国の祭りなどの有名な伝統行事のスケジュールが併記されているのだが、これがアイデアを生み出すヒントにもなる。江戸と現代の距離の近さを感じられる手帳でもあるわけだ。
365日を"分"で換算。砂時計でときの流れを実感
リプラグの「Life Moments」は、商品カテゴリーでいえば手帳ではなくデスクカレンダーだ。しかし、1年を52万5600分に換算し、1ページ1週間のカレンダーに、常に経過時間を砂時計が落ちていくデザインで表示されているのが手帳っぽい発想に思える。
そもそも、1ページ1週間のデスクカレンダーという時点ですでに手帳的な考え。1週間は1万80分。52万5600分から、1枚めくるごとに1万80分だけ引かれていく。しかし、最初の2カ月くらいは、砂時計部分を見てもそれほどの違いが分からない。それでも、砂時計の下のほうには確実に時間が積み重なっていく。3月くらいになると、その積み重ねがハッキリと見えてきて、時間経過をズッシリと実感する。
通常のデスクカレンダーの大きさで週間カレンダーなので、筆記スペースも手帳のマンスリーページサイズはある。つまり、予定をしっかり書き込めるカレンダーでもあるのだ。
モノクロでデザインされたクールなルックスは、職場の机に置いても違和感がない。予定を書き込むたびに目に入る時間経過の砂時計は、時間をムダにできないと心を引き締めることもあれば、「まだ25万3440分も残っている」とホッとすることもある。砂時計部分が広いので、そこに覚え書きを書いておくのもよいだろう。時間の流れや積み重ねがつかみにくいデジタルでのスケジュール管理を補完するモノとして、机の上に置いておきたい。
1週間を円グラフにした手帳
「1/7」も、時間の使い方を考えさせられるカレンダーだ。1日というのは1週間の7分の1。これを身もふたもなく視覚化したデザインは、1週間を単位にして働いている人には、ブロック型やバーチカル型よりも、1日のサイズをはるかに実感しやすいのではないだろうか。
また、余白がやたらと広いので、週間単位のタスクリストやある1日の重要度など、さまざまな情報を週単位、日単位で書き込める。そういった情報を書き込むことでデザインが完成するように作られているのだ。円グラフが浮遊しているような紙面に文字情報が入ることで何かの図面のような絵柄が仕上がり、その濃淡でもラクな週、キツイ週が一目瞭然(りょうぜん)。
今日を表すためにダーツの矢を刺してもいいし、円グラフ的なデザインなので、画びょうやシールなども貼りやすいし見やすい。スクエアな枠線ではなく、数字もきっちり並んでいるわけではないので、適当に書いてもさまになるし、書きやすい。
さらに、とじられていないので、1枚単位のシートとしてラックに差して使ったり、複数枚並べたり、二つ折りにしてファイルに挟んで持ち歩いたりすることも可能。W297mm×H374mmというB4より少し大きいサイズが絶妙だ。
(ライター 納富廉邦)
[日経トレンディネット 2016年11月21日付の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界