目利きが選ぶふるさと納税 コスパ高い、牛肉・カニ…
ふるさと納税の返礼品の中でも定番が食料品。人気の高い牛肉、魚介類、米、日本酒、ワインの中から、その道のプロに狙い目を探してもらった。
うまみを堪能できる赤身の希少牛が有力
ふるさと納税で最も人気の返礼品の一つが国産和牛の肉。なかでも狙い目は、黒毛和牛以外の品種で一般に流通しにくい褐毛和種、日本短角種、無角和種の3種だ。肉質はサシ(脂肪)の入り方が適度で、うまみが豊富な赤身が多いのが特徴。国内の肉牛生産量の僅か1%にすぎない希少性の高い肉で、近年の赤身肉ブームをけん引する。
なかでもプロが太鼓判を押す品種が、「赤身肉の王者」と呼ばれる日本短角種。岩手県久慈市は日本短角種の産地で唯一、国産飼料100%で飼育している。「一般に流通することがあまりないため希少」(農産物流通コンサルタントの山本謙治氏)という。
国産和牛の大半を占める黒毛和牛を選ぶなら、1万円の寄付額で1kg以上の量があれば「かなり得といえる」(山本氏)。最近は子牛の供給が少ないため、全国的に肉牛の価格が高騰しているからだ。また、子牛を産んだ経産牛を再肥育した肉も狙い目。「経産牛のほうが処女牛や去勢牛より味わいも香りも深く、おいしいというのが多くの"肉通"の共通見解」と山本氏は話す。
500g 寄付額1万円以上
赤身とサシのバランスが良い土佐あかうしは1800頭しかいない希少種。「提供する松田精肉店はあかうしの目利きで自社生産もする。品質は折り紙付き」(山本氏)
500g 寄付額1万円以上
1~2頭を出産した経産牛を、ビタミンやミネラルを含む特別な餌で再肥育。色が濃く味がしっかりとした赤身肉ながら、低脂肪であっさりしている。
450g 寄付額1万円以上
赤身肉の王者と呼ばれる短角牛。国産飼料を100%使い、夏は山に放牧、冬は牛舎で肥育している。ロース、赤身スライス、バラスライスが150gずつのセット。
600g 寄付額1万円以上
子牛を1頭産んだ経産牛をハーブ入りの餌で再肥育。「長期肥育と経産により肉は深い味わいに。部位はウチモモなのでローストビーフに最適」(山本氏)
一般には流通しない松葉ガニも選べる
牛肉に次ぐ人気を誇る魚介では、冬の味覚であるカニに注目したい。プロのイチ推しは「松葉ガニ」。ズワイガニのなかでも最高級とされる山陰地方の名物だ。「ほとんどが料亭や旅館などに流れ、一般には流通することが少ない。ふるさと納税向けに業者が特別に提供しているのだろう」(おさかなマイスターの三柴幸男氏)。
この時期ならではの味覚として味わいたいのがタラバガニ。特に今年は不漁で流通量が非常に少なく、小売店でも手に入りにくいという。2~3万円の寄付額でタラバガニの姿やむき身が1.5~2kg入手できる返礼品を選べば、コスパが高い。
2kg 寄付額3万円以上
活きタラバガニを水槽で管理し、朝ゆでてすぐに冷蔵で出荷する。冷蔵なので身がプリプリでとても甘い。多いときで1日70杯も出荷する大人気商品。
500g 寄付額1万円以上
活き海老が寄付額1万円で500g(10~25尾)も届く。クルマエビは身の部分が多いので、食べ応えがある。
2杯 寄付額2万5000円以上
一般にはほぼ流通せず、高級旅館や料亭でしか味わえないズワイガニの最高峰「松葉がに」が2杯届く。ボイルの他、同じ寄付額で生も提供。生は刺し身にできる。
セットなら風味の違いや自家製ブレンドも楽しめる
米の返礼品は内容量争いが過熱しており、今や1万円の寄付で15~20kgのブランド米を選べることも珍しくはない。そうしたなかプロが薦めるのは、数種類のブランド米を食べ比べられ、量も多いセットだ。
狙い目は岡山県瀬戸内市。東京では入手困難な「朝日」に加え、「ヒノヒカリ」「にこまる」を加えた3種のブランド米をセットにした返礼品を用意している。「朝日はあっさり、にこまるはふっくら、ヒノヒカリはもっちり軟らかと、それぞれ食味が違う。朝食は朝日、夕食はにこまるなど、シーンに合わせて食べるのもいい」と、米や農産物に詳しいライターの柏木智帆氏は話す。
15kg 寄付額1万円以上
3種類のうち「朝日」はコシヒカリなど有名銘柄の"祖先"ともいわれ、岡山県を代表する品種。「あっさりとして和食によく合う」(柏木氏)
15kg 寄付額1万円以上
人気銘柄「ななつぼし」15kgを5kgごとに真空パック。精米後の米が劣化しにくいので、単身者や夫婦二人が時間をかけて消費するのに向く。
人気上昇の純米酒は個性を味わう
日本酒やワインといった酒類の返礼品は、肉や魚介類と違って保存が利くのがメリット。日本酒は最近の傾向として、香りが強い酵母を加えた"香り系"の日本酒より、米本来の味が残る"純米系"の日本酒の人気が上昇している。「純米酒は料理とのマリアージュ(相性)が良く、食中酒として最適」と、人気酒販店「横浜君嶋屋」社長の君嶋哲至氏は言う。
なかでも君嶋氏がイチ推しなのは、兵庫県丹波市の「小鼓 純米大吟醸 路上有花 葵」(実勢価格5400円)。1万円の寄付で入手できるコスパの高さもさることながら、その香りと味が絶品という。「日本の梨に似た上品な香りで、米を磨いた大吟醸なのにさらっとした風味で飲みやすい。白身魚の上質な刺し身によく合う」(君嶋氏)。蔵の個性が際立つ純米酒のセットも満足度が高い。
実勢価格3719円 寄付額1万円以上
竹原市にある3つの蔵から、熟成した琥珀色の「竹鶴」、うまみと酸味の調和が良い「龍勢」、フルーティな「誠鏡」と、全く異なる味の日本酒を提供。
実勢価格5400円 寄付額1万円以上
世界的に著名なワイン評論家ロバート・パーカー氏が、「ワインを超えた日本酒」と絶賛。デザイン性の高い瓶は、飲んだ後に花瓶として使っても映える。
世界水準のご当地ワインを"発掘"
日本のワインも、選ぶ価値が高いブランドが返礼品に増えている。「この10年で日本のワイナリーの実力が上がり、世界で認められるワインが格段に増えた。各地のワイナリーがブドウ作りから真剣に取り組み、個性を出せるようになったことが大きい」と、日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザーの遠藤誠氏は指摘する。
個性と品質を重視して選ぶなら、青森県むつ市の「下北ワインRyoクラシック無濾過」(16年12月2日時点では品切れになっている)。日本ワインコンクールで、ピノ・ノワール種のブドウから造られたワインとして初めて金賞を取った。このコンクールの審査員だった遠藤氏は、「ラズベリーの華やかな香りが特徴。東京の小売店では入手が難しい」と話す。同梱の「下北ワインArt」も高価で、還元率40%とコスパが高めだ。他にも山形県朝日町、岩手県葛巻町、北海道小樽市など全国各地の自治体が、個性と品質を兼ね備えたワインを返礼品として用意している。複数取り寄せて違いを堪能するのも、ふるさと納税を活用した新しいワインの楽しみ方といえそうだ。
実勢価格3300円 寄付額1万円以上
日本ワインコンクール最高賞受賞のロゼは、十分に熟すのを待って収穫する遅摘みのブドウを使用。「完熟すると香りは複雑になり、飽きの来ないワインに仕上がる」(遠藤氏)
(ライター 高橋学)
[日経トレンディ2016年12月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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