年金・老後

定年楽園への扉

老後孤独にならない「居場所」づくりのコツ 経済コラムニスト 大江英樹

2016/12/15

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 サラリーマン生活も終盤に入る50歳代以降は、考えておくべき大切なことがあります。それは会社を離れたときに自分がいろいろな人と交流できる場、すなわち「自分の居場所」をつくっておくということです。現役時代はおそらく、そんなことは考えたこともないでしょう。

 私自身、50歳代は日々の仕事に追いまくられ、将来の自分の居場所などということは考えたこともありませんでした。ところが実際に退職してみると、いかに自分がそれまで会社の人間としか付き合ってこなかったかということを実感します。会社を退職した後は特に親しい人でもない限り、それまで付き合っていた会社の人たちとの縁はほとんどなくなります。つまり、退職してから「孤独」を実感する日々が始まるのです。

 従って在職中、特に退職が近づく前に、会社以外で自分の居場所をつくっておくことは本当に大切です。会社以外の居場所といっても、実に様々です。趣味の集まりや地域の人たちとの交流など、いろんな活動の場はありますが、新しい仲間をつくるのはそれほど簡単なことではありません。まず自分がその新しいコミュニティーの中で何かその人たちの役に立つことをしてあげようという気持ちがないと、なかなか入り込むことはできないからです。個人の性格にもよるとはいえ、新しいことを始めるのは意外にハードルが高いのです。

 そんな中、比較的手軽に交流ができるのが昔の学生時代の仲間です。小学校から大学まで様々な時代の仲間がいますが、多くは何年かに一度のクラス会などで会うだけで、何十年も会っていないという場合もあるでしょう。会った瞬間は「お互い、年をとったなあ」と感じるものの、30分も話していると学生時代の感覚に逆戻りするから不思議です。

 私も大学時代のクラブの同期生とは毎年のように集まって食事をしたり、旅行をしたりしています。最近は中学校時代の仲間とも再会する機会が増えました。

 今はフェイスブック(Facebook)などの交流サイト(SNS)のおかげで、何十年も会っていなくても比較的簡単につながりを復活させることができます。特に同級生は人生におけるステージが共通だから良いのです。退職間際になると子育てが終わり、会社でも第一線を退いている人が多いでしょう。それだけ時間に余裕ができ始めます。私は会社以外の人との交流なら、まずはこういった昔の友人とのつながりを復活させるべきだろうと思います。

 ただし、その場合に一つ大切なことがあります。それは集まるにせよ旅行に行くにせよ、できるだけ自分が音頭をとって、世話役を買って出たほうが良いということです。これこそ個人の性格の問題なので難しいと思われるかもしれませんが、それでもあえて取り組むべきだと私は思います。

 それは一体どうしてなのか? 気のおけない仲間たちと交流するときですら受け身でしか参加できないのだとしたら、新しい居場所をつくることなど、到底できないからです。前述したように退職後に自分の新しい居場所をつくるのはそれほど簡単なことではありません。新しいコミュニティーに打ち解ける努力が必要だからです。

 ところが、旧知の友人たちであればすぐに打ち解けることができます。そうしたときこそ、自らが世話役を買って出ることでみんなの役に立つ姿勢が求められます。自分の居場所づくりの準備の一つとしてそういうことを積極的にやっていくのです。そしてそれは退職後の生き方に必ずプラスになるはずです。

 何も準備をしていなければ、現役時代には考えもしなかった「老後の孤独」に襲われるリスクがあります。老後資金をしっかりつくっていても、このリスクからは逃れられません。別に「おせっかいおじさん・おばさん」になる必要はありませんが、年をとればとるほど「誰かの役に立とう」という心構えを持つことが老後の人生を豊かにしてくれる秘訣だと思います。

 「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は12月29日付の予定です。
大江英樹(おおえ・ひでき) 野村証券で個人の資産運用や確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。行動経済学会の会員で、行動ファイナンスからみた個人消費や投資行動に詳しい。著書に「定年楽園」(きんざい)など。近著は「投資賢者の心理学」(日本経済新聞出版社)。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。
オフィス・リベルタス ホームページhttp://www.officelibertas.co.jp/
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