無料で楽しめる観光スポット 1位はJAL工場見学
この充実度で無料なんて信じられない――。旅行情報サイトのトリップアドバイザーは11月、ユーザーが過去1年間に投稿した口コミをもとに選んだ「行ってよかった!無料観光スポットランキング2016 トップ20」を発表した。6年目となる今年の特徴は、大人も楽しめる工場見学・社会科見学が8つランクインしたこと。子どもを連れて大人も楽しめるしかけが、人気を集めているようだ。1位となった「JAL工場見学 SkyMuseum」(東京・大田)に参加してきた。
目の前で離着陸が見られるJAL工場見学
「JAL工場見学 SkyMuseum」は、羽田空港に向かう東京モノレールに乗り、新整備場駅で下りるとすぐの場所にある。10年ほど前に、整備工場に隣接するオフィスの一部を改装し、「SkyMuseum」に生まれ変わった。完全予約制で、約1時間40分のコースが1日4回準備されている。特に親子連れに人気で、すでに12月の土日は満席、となっている。
毎回、ツアー開始の30分以上前から、会場入り口となるJALメインテナンスセンター前にカメラを抱えた親子連れが列を作る。ツアーでは、「航空教室」で飛行機の飛ぶしくみや羽田空港の役割などを40分ほど学んだのち、SkyMuseum内を歩く。ここでは、歴代のキャビンアテンダントの制服や、皇族を乗せたフライトや争乱時の救援チャーター便などの紹介が見られる。客室乗務員などの制服を着て航空機の大型パネルを背景に撮影できる「制服体験」をする女性も多い。実際に使われていたコックピット(操縦室)に座れる体験は、子どもたちに人気だ。
隣接する2つの格納庫では、実際に整備士が機体を修理する様子が見学できる。機体のロゴマークの塗装風景などはここでしか見られないものだろう。メーンイベントは、飛行機の離着陸だ。整備工場は滑走路に隣接しているため、目の前で飛行機が離着陸する様子が見られる。「飛行機は着陸する瞬間に5度から6度、一度頭を上げます。見ていてくださいね――」。シャッターチャンスとばかりに見学者はカメラを構える。SkyMuseum内は原則、撮影は自由だがインターネットでの掲載については細かな注意がある。SNSにアップする前に、問い合わせをしよう。
大人に人気の社会科見学
「JAL工場見学」だけでなく、今回のランキングでは社会科見学や工場見学ができる施設が8つもランクインした。特にビール工場やウイスキーの蒸留所が目立つ。人気の秘密はやはり試飲がたっぷり楽しめることだろう。「ビールが3杯飲めた」という声もあり、満足度が高い。4位のアサヒビール博多工場(福岡市)は、博多駅から1駅、駅から徒歩3分というアクセスのよさも人気の理由のようだ。せっかくのできたてビール、できれば帰りの運転を考えず思い切り味わいたいもの。ほかにも、ビール工場は比較的、都市圏から電車でのアクセスが便利な場所が多い。ちょっとした日帰りスポットでも楽しめそうだ。
根強い人気「航空基地」
もう一つ目立ったのが14位の鹿屋航空基地史料館(鹿児島県鹿屋市)、15位の海上自衛隊呉史料館(広島県呉市)、20位のエアパーク(浜松市)など、「軍事施設」への熱視線だ。鹿屋航空基地資料館は、第2次世界大戦の特攻隊にまつわる遺品や、戦闘機、零戦の実機も展示されている。トリップアドバイザー上には、「ぜひ一度訪れてほしい」と強いメッセージが並ぶ。施設内は戦前、旧海軍の歴史から現在の海上自衛隊にいたるまでの歩みがわかる充実したつくりになっており、「1日で回りきれなかった」という人もいるようだ。
景観の美しさを求める声も多かった。晴れた日は富士山、スカイツリーや東京タワーも見ることができる東京都庁舎(東京・新宿)の展望室は、前回の10位に続き安定した人気を誇る。最寄り駅から徒歩20分というアクセスの不便さと受付開始後すぐに満席、という予約のとりづらさから圏外となっていた桂離宮(京都市)も今年、5位にランクインした。
当日枠もあり、諦めずに向かう観光客が増えているという。苔(こけ)むした庭園のなかにいると、別世界にいる気分になりそうだ。
どこのスポットも、「無料とは思えない」満足感が人気を集める。事前予約が必要な場合も多く、1カ月以上の予約待ちのスポットも多くあるが、「好評を受けて、回数を増やしています」(日本航空広報室)というコメントがある場所も。ぜひ、週末のおでかけの際に、無料で楽しめる隠れた名所も訪れてみてほしい。
(松本千恵)
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