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宇多田ヒカル CMでも圧倒的なカリスマ性、発揮する

2016年10月 CM好感度月間ランキング

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NIKKEI STYLE

6年ぶりに音楽活動を再開して、9月に出したニューアルバムは50万枚を超える(オリコン調べ)ヒットを記録、年末には「NHK紅白歌合戦」へ出場と話題が続く宇多田ヒカル。「サントリー天然水」では6年ぶりにCM出演。10月度の銘柄別CM好感度ランキングで総合7位に入り、同銘柄の自己最高順位を記録する人気CMとなっている。

■調査対象期間:2016年9月20日~10月19日(東京キー5局)
■当月オンエアCM:全2749銘柄
■東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象に、関東在住の男女モニター3000人に、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに自己記述してもらい、その得票数を足し上げたもの
■同商品の複数作品にオンエア・好感反応がある場合、代表作品は最もCM好感度の高い作品
■企業・銘柄名・作品名はCM総合研究所の登録名称であり、正式名称と異なる場合がある

サントリー天然水「水の山行ってきた 南アルプス」編のCMは、宇多田自身が南アルプスに足を運び、自らの新曲「道」をBGMに、山道や渓谷を歩き、雨に降られたり、急斜面を登ったりしながら、甲斐駒ケ岳を望む絶景スポットを目指す姿をドキュメンタリータッチで描く。途中、画面には「#うぉぉぉ」「#うわまじか」といったSNSのつぶやきのような文字が表れ、彼女の心情を表現している。

サントリー食品インターナショナルが、今回4年ぶりに天然水のブランド広告をスタートさせるにあたり、コンセプトとしたのは「水源の素晴らしさや、水の清らかなおいしさや空気感を表現すること」(食品事業本部コミュニケーションデザイン部の高橋夏苗さん)。「天然水の魅力は、ただ飲むだけではなく、水源の澄んだ空気ごと体に取り入れることだと考えているので、現地での撮影やナチュラル感にはこだわりました」(同)と言う。

宇多田の久しぶりのCM出演や、初めてのロケーション撮影のインパクトは大きく、視聴者からは様々な反響がある。「宇多田さんご自身が山に登られて実際に水源を経験したことに驚いたという声や、宇多田さんの素の様子が水の透明感を感じさせて良かったという感想などが多く寄せられています」(同)。

サントリー天然水では自己最高順位

実際、このCMは放送回数が多くないにもかかわらず、印象に残る度合いが非常に強いのがランキングの特徴。1位のauや2位のSoftBankといった上位銘柄が期間中に1300回を超える放送回数があるのに、サントリー天然水は173回ながら7位に入るCM好感度を得た。同銘柄では自己最高順位である。CM総合研究所の関根心太郎代表は、「CMの投入効率が非常に高い作品といえます。オンエアする番組とCM内容を連動させる試みが成功しているのも、目を引きます」と言う。

キーになった番組は「ミュージックステーション」と「世界の果てまでイッテQ」。

まず9月19日、8年ぶりの本人出演が話題となった「ミュージックステーション」で、「水の山行ってくるわ」編のCMが流れた。これは宇多田がバス停にたたずんでいるだけの15秒の映像で、地上波でのオンエアはこの1回だけ。

そして、9月25日からいよいよ「水の山行ってきた」編がスタート。最初は60秒バージョンが「世界の果てまでイッテQ」で流れた。イモトアヤコが、スイスの名峰アイガーに挑んだ回である。60秒バージョンでは、CMのラストに宇多田が目の前に広がる山々に向かって「ありがとー」と叫ぶが、これは台本にあったセリフではなく、その場で本人の口から自然と出た言葉だという。そのリアルな感情や映像が、多くの視聴者の心をとらえた。

番組でイモトが登頂した後のCMタイムで流れた映像を見て、関根代表は「同じ山という自然の光景が、自分の中にスーッと入ってきた。番組との親和性が高く、視聴質ということにこだわったCMではないか」と感じたという。60秒バージョンの後は、30秒バージョンに切り替え、現在もオンエアを続けている。

9月は、アルバム発売を控えて、宇多田の話題が一番盛り上がった時期。そこで本人が出演する音楽番組や、ファミリー層が見る高視聴率番組をターゲットに、象徴的なCMをうまくシンクロさせた手法が、高い好感度に結びついたようだ。

CM総合研究所によると、支持層は宇多田と同世代の30代以上の男女が中心。好感要因では、1位が音楽・サウンド、2位が出演者・キャラクター、3位が映像・画像。CMのBGMで流れる新曲が大きなフックとなっており、やはりアルバムのプロモーションとのシンクロが効いていることがわかる。

最近のCMのヒットパターンは、有名なタレントを複数起用してキャラクターを演じさせて、ストーリー性をもたせる作りだ。それに対してサントリー天然水の場合は、宇多田ヒカルという1人の人間にスポットを当て、その素を引き出すドキュメンタリー的な手法。今の時流と正反対ともいえる作りだが、天然水という商品の特性とマッチしたことで最大限の効果を生んだ。

音楽活動再開が大きな話題となり、アーティストとしてのスター性をあらためて見せつけた今年の宇多田だが、CMタレントとしても、変わらぬ圧倒的なカリスマ性を発揮したのが、今回のサントリー天然水だといえるだろう。

(日経エンタテインメント!小川仁志)

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