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ももいろトラディショナル

ももクロ有安杏果 笠間焼に挑戦 絶対崩れちゃいそう ももクロVS伝統工芸/有安杏果、「笠間焼」に挑戦(1)

2016/12/2

ももいろトラディショナル第4シーズンは、有安杏果さんが笠間焼を学びます

 「テレビで見たことある、あれ、ですよね?」 そう言って、ろくろで形作るポーズをするのは、ももクロの有安杏果(ありやす・ももか)さん。今回は、関東有数のやきものの産地で陶芸に初挑戦! 回転台の上で生き物のように形を変える土を、小さな手でコントロールできるのでしょうか? 「気持ちいい。クセになりそう!」と感想をもらし、完成した作品とは? アイドルグループ『ももいろクローバーZ』が、日本の伝統工芸に挑戦する連載、第4シーズンの開幕です。

■日本有数の陶芸学校に一日入学

 小さな体でキレキレなダンスと安定感のある歌声を繰り出し、「ももクロの小さな巨人」と称される、有安杏果さん。ももクロとしての活動だけでなく11月26日には大分県別府市で2度目のソロコンサートも成功させました。

11月26日、大分県・ビーコンプラザで2度目のソロライブを行った有安杏果さん。全国から別府市に駆けつけた5021人の“杏果推し”が会場を緑に染めました(写真 小境勝己)

 今回、有安さんが訪れたのは茨城県立笠間陶芸大学校。陶芸学科(2年制)と研究科(1年制)からなり、一線で活躍する陶芸家やアーティストに、陶芸の基礎から芸術性まで学ぶことができる、日本屈指の施設を誇る陶芸学校です。

笠間市にある「笠間芸術の森公園」の中にある笠間陶芸大学校。今回、有安さんはここで陶芸を学びます

「有安杏果です。よろしくお願いします」

 作業のためにジャージー姿でやってきた有安さんを迎えてくれたのは、有安さんと同じ平成生まれで、地元・茨城県出身の生徒さん3人です。この3人が有安さんに笠間焼について説明してくれます。

写真左から大和田さん、有安さん、弓野さん、そして石川くん

 「大和田友香です。よろしくお願いします」

 ホンワカとした優しい雰囲気を持つ大和田さんは、平成3年(1991年)生まれの25歳。都内の大学を卒業後、アパレル会社に就職したのち、陶芸を志して茨城に戻ってきたそうです。

 「弓野しおりです。よろしくお願いします」

 発想が独特で、周りから一目置かれる存在の弓野さんは、平成9年生まれの19歳。高校で美術を学んだあと、陶芸大学校に入学しました。

 「石川晃平です。お願いします」

 ちょっと恥ずかしそうにあいさつする石川くんは、弓野さんと同じ平成9年生まれの19歳。高校卒業後、江戸切子などの伝統芸能を体験し、陶芸に興味を持って大学校へ入ってきました。

 ちなみに有安さんは平成7年生まれ。大和田さんは4歳年上、弓野さんと石川さんは2歳年下となります。平成一ケタ生まれのほぼ同世代ということで、初対面の時から、和やかな雰囲気です。

■「不器用だから絶対に崩れちゃいそう」

 まず有安さんに、陶芸についてのイメージを聞いてみます。実は有安さん、陶芸に詳しかったりします?

 「いや、全然。テレビで、こういうの(ろくろで成形するポーズ)は見たことがありますけど、やったことはないです。でも1回はやってみたいと思いますよね」

 これからろくろに挑戦してみましょう。

 「本当に? いやー絶対にやると崩れちゃいそう。不器用だから」

 そういって笑いながら、少し心配そう。そんな有安さんに、まずはきょうの先生3人の作品を見てもらうことにしました。

展示ホールには学生たちが薪(まき)窯で焼いて作った「薪窯焼成実習作品」が並べられていました

■器がゆがんでいるところがいいな

 陶芸大学校の2階は一般の人も見学可能な展示ホール。訪ねた日は、そこに学生たちの作品が並んでいました。

 まずは、大和田さんの作品のもとへ。大和田さんは「うつわ」に興味があるそうで、作品は食器としても使えるものが並びます。

有安さん かわいいー!

大和田さん 火の関係で、けっこう形がゆがんじゃって……。

有安さん いや、このゆがんでるのがいいなって思う。

大和田さんの作品を見る有安さん。「ゆがんでいるのがいい」とのこと

 それを聞いて「うれしい。やった!」と喜ぶ大和田さん。色に興味を持った有安さんが、大和田さんに質問します。

大和田友香さんの作品「焼き締め器」

有安さん このグラデーションになっている色って、どうやって出すんですか?

大和田さん 色は特に付けてなくて。火の当たり具合で色が変わるんです。

有安さん それでこういう色になるんだ~。いいなぁ。もう、買いたいくらいです(笑)。

 ちなみに学校で学んでいる間、学生は作品を販売することはできないそうです。

■想像上の生き物も焼き物で

 次に弓野さんの作品の前へ。弓野さんはオブジェを制作しています。

弓野さんのオブジェに「こういうのも作っていいんだ」

有安さん これは何なの?

弓野さん 自然界の蜂の巣みたいなものをイメージしてます。

有安さん なるほどねぇ。え、これは?

弓野さん これは想像上の生き物を、自分で勝手に考えて作っていて……。

有安さん すごーい! こういうのも作っていいんだ。みんな、この色がいいね。

弓野しおりさんの作品「D」

■このつぼ、割ったら金貨が入っていそう(笑)

 最後は石川くんの作品。石川くんは「つぼマスター」の異名をとっているそうですが……。

自分の作品について照れながら説明する石川くん

有安さん つぼだ。割ったら金貨とか入ってそう(笑)。これは制作秘話とかあるの?

石川くん 最初、照明スタンドみたいな感じにしたくて傘を付けてたんですけど、傘が割れちゃって。これだけになっちゃったんです。

有安さん そうなんだ。私、やっぱりグラデーションが付いてるものが好きだな。ひとつひとつ、模様が違うから。

石川晃平くんの作品「焼き締め壷」

 さらにほかの生徒さんたちの作品も見て回る有安さん。やはり自分のイメージカラーが気になったのか、緑っぽい作品をじっと見つめている時間が長いような……。

■茨城県の伝統工芸「笠間焼」とは?

 次にホールの別の展示コーナーに移動します。ここでは笠間焼の歴史について知ることができます。

展示コーナーには笠間焼の歴史がわかるディスプレーが

弓野さん 笠間焼は、江戸時代に信楽(滋賀県)からやってきた陶工から伝わったものなんです。

大和田さん たとえば湯たんぽのように、日用品として使うものからどんどん発展していって、今ではオブジェとかも作るようになっています。

 このコーナーに並ぶのは、戦前まで作られていた日用品。ここで有安さんにクイズです。これは何でしょう?

さて、これは何に使う陶器でしょうか

 答えは、鳥の水飲み。笠間陶芸大学校の人材育成部門長でもある、尾形尚子先生が教えてくれます。

尾形先生 ヘルメットみたいな形のところに水をいっぱい入れると、水と空気の圧力の関係で、常に受け口のギリギリのところまでしか水が出てこないんです。その水を、鳥が飲むんです。

有安さん え? 鳥?

尾形先生 そう。鳥が水を飲んで、受け口の水が減りますよね? でも水は常に受け口に一定になるように出てくるという仕組みです。

有安さん へぇーすごい!

「受け口の水が常に一定になる」という仕組みに驚く有安さん

 江戸時代の安永年間(1772~1781年)に、信楽の陶工・長右衛門の指導を受け、笠間藩の名手・久野半右衛門が窯を築いたのが「笠間焼」の始まり。明治時代には水戸線の開通を契機に販路を広げ、すり鉢や茶つぼをメインに、とっくり、火鉢、植木鉢、湯たんぽ、さらには鳥の水飲みまで手広く生活陶器を生産し、隆盛を迎えました。ところが戦後、プラスチック製品の流入などにより、陶器の需要が減少します。

「そこで地元の窯元さんたちが、笠間焼を研究する場所と、人を育てる場所を作ってくださいと県にお願いをして、できたのがこの学校の前身・県立窯業指導所なんです」(尾形先生)

 そうして、笠間焼は産業として徐々に息を吹き返し、現在は陶芸作家約300名が在住。通称「やきもの通り」と呼ばれる国道355号線沿いには、窯元や焼きもの店が軒を連ねます。また地元の陶芸家・窯元・販売店が集まって行われる「笠間の陶炎祭(ひまつり)」は、2016年に過去最高となる55万人の来場者でにぎわいました。

■笠間焼の特徴は「多様多種」

 最後に、そんな現代の笠間焼を代表する作家の作品コーナーへ。ショーケースの中には、つぼや皿など、多彩な個性を持った作品が並んでいます。中には金太郎あめのように割っても割っても同じ模様が出てくるユニークな作品も。この作家・松井康成さんは笠間が誇る人間国宝だそうです。

人間国宝・松井康生氏の作品「萃瓷練上壷」。金太郎飴のように割っても割っても同じ模様がでてくる技法を「練上(ねりあげ)技法」というそうです

尾形先生 笠間焼の作風は「自由」。ルールが特にないです。昔は笠間の土を使って作られていましたが、今は使う人もいれば、使わない人もいます。最近は全国どこからでも土を取り寄せられるので、作品に合わせて土をブレンドして使ったりもしていますね。ここに通うみんなも、自由に作品が作れるように、いろんな技法を勉強しています。

 自由で多種多様なのが特徴。だからこそ陶器の見本市のように、「欲しい焼きものが見つかる焼きものの里」として人気の笠間焼。今回はそのイロハを校内を巡りながら学びつつ、有安さんに「陶芸体験」をしてもらいます。

ずらりと並ぶさまざまな名陶芸家の作品を見ると、笠間焼の自由さも感じられます
佐藤雅之特任教授作「水の骨」。水の形をイメージしているそうです

■陶芸は「土を作る」ことから始まる

 陶器を作る「作陶」はおおまかに、以下の工程で行われます。

1 土練り(粘土を作る)
2 成形(ろくろなどで形を作る)
3 乾燥させて素焼き(焼いて粘土を軽く焼き固める)
4 釉(ゆう)がけ(焼くとガラス質の皮膜になる釉薬<ゆうやく>を付ける)
5 本焼き~完成

 笠間陶芸大学校では、この1より前のゼロ地点から学ぶことができます。それが「土を作る」です。

有安さん 土を作る? 土を作るって?

 導かれるまま有安さんがやってきたのは、校舎外の広いスペース。壁沿いには、いくつかの土の山があります。

尾形先生 何年もこうやって寝かせて、陶芸用の土を作ります。寝かせれば寝かせるほど、いい土になる。

 見ると、草だけでなく、木まで生えています。前には「笠間土」のプレートが。

陶器を作るための土は何年も寝かせているそうです

尾形先生 これが笠間の原土です。このままでは使いにくかったり、問題がある場合には、ほかの土をブレンドして使ったりします。

有安さん 手入れとかはしなくていいんですか?

尾形先生 ほったらかしです。寝かせている間に、こんなふうに草が生えても問題ないです(笑)。

 笠間の土は粒子が細かくて粘りがあり、硬くて丈夫な焼き上がりになる。そのため生活陶器に向いていたのだとか。

 陶芸家の中には、理想の土を確保しようと、自宅に山のような土を保管している人もいるそうです。

■土をブレンドして、好みの粘土に

 次にやってきたのは、不純物を取り除いて土を粘土にしたり、土のブレンドを行ったりする「原料処理室」。天井の高い倉庫のような建物に、コンクリートミキサーのような大きな機械。その前に、乾燥した土の塊が積み上げられた場所があります。

有安さん じゃあ次は、晃平くんね。解説、お願いします!

 そう言って、石川くんに説明をうながす有安さん。石川くんがとつとつと話します。

失敗した陶器などは細かく砕いて再び土に戻します

石川くん このかけらは、ろくろで削り取った余りや、失敗したりしたもの。これらを大きな機械に入れて、さっきの土と水を入れて混ぜます。そうしたらまた粘土ができて、再生して使えるようになるんです。

弓野さん かけらはもっと小さく砕いて入れるんですけど、それはみんなで、手作業でやるんですよ。

有安さん え、手で? 大変~!

 そしてここで最初の「体験」です。有安さんに木づちを持ってもらい、かけらを砕いてもらいます。

有安さん これは、どれくらい砕けばいいの?

石川くん これくらいで。

 見本を見せる石川くん。「それぐらいでいいんだ」とまた木づちを振り下ろす有安さん。その手には、どんどん力が入っていきます。何か、ストレス発散をしているかのようにも……。

有安さん おもしろーい! でも、ずっとやると思うと途方に暮れそう(笑)。

土を細かく砕く有安さん。ももクロで一番小柄な彼女が持つと木づちが大きく見えます

 こうして小さくした土と水を一緒にドラム缶の中に入れ、もともと入れておいたすりつぶすための石とかくはんします。すると粉々になり、ふるいで余計なゴミを取り除くと、粘土ができるそうです。

有安さん なるほど、粘土ってこうやって作るんですね。

 陶芸のもととなる粘土の作り方を学んだところで、次回はいよいよ有安さんがろくろを使った成形に挑戦します。お楽しみに。【有安さんがろくろに挑む第2回はコチラから】

次回は有安さんがろくろに挑戦します
さて、器はできるのでしょうか
ももいろクローバーZ
百田夏菜子、玉井詩織、高城れに、有安杏果、佐々木彩夏で構成されるアイドルグループ。2008年5月に結成(当時のグループ名は「ももいろクローバー」)。観客数十人の路上ライブからスタートし、わずか6年で国立競技場ライブを実現。大会場のコンサートと並行して、小さな会場でのライブやユニークなイベントなども積極的に企画、ファンを驚かせ、楽しませている。12月23日、24日は恒例の『ももいろクリスマス2016 ~真冬のサンサンサマータイム~』を幕張メッセ(千葉市)で開催する。

有安杏果
1995年3月15日生まれ。埼玉県出身。幼少期から子どもタレント、キッズダンサーとして活躍。2008年、中学1年生のときにスターダストプロモーションにスカウトされる。09年に、ももいろクローバーへ加入し、現在に至る。イメージカラーは緑。2016年には横浜アリーナで1万人規模のソロ・コンサートを成功させ、楽曲制作にも携わったミニアルバムも発表した。来年の6月から7月には東名阪3会場で初のツアーを行う予定。
ももいろトラディショナル
デビュー当時のコンセプトが実は「和をモチーフにしたアイドル」だった彼女たちが、日本の伝統工芸を学ぶ連載。メンバーが伝統工芸の仕事現場を訪れ、作る過程を勉強し、実際にもの作りを体験。さらにその道で頑張っている同世代の若者と夢や目標を語り合うという詰め込みすぎな企画です。

(文 泊貴洋/写真 中川真理子/ヘアメイク 谷川一志=kind/企画協力 佐々木健二=ジェイクランプ)

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