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大株主情報に注目 株価の動きに影響も

2016/12/4

 4~9月期の決算発表が一巡した。株式投資の対象となる銘柄を改めて吟味する人も多いだろう。銘柄選びでは業績や株価に関する指標のほか、大株主の情報にも注目したい。株価の傾向や経営のリスクなどを把握する手掛かりになる。新規の投資先だけでなく、すでに保有する銘柄についても有効だ。

 11月初め、カプコン株が約半年ぶりの高値を付けた。このところの株価上昇が目立つが、長期的にみれば上昇基調のスタートは2013年の初めともいえる。2つのファンドが大株主になったときだ。

 「ハリス・アソシエイツ」と「テンプルトン・インベストメント・カウンセル」。割安株の発掘で知られる両者は、13年1~2月にそれぞれ5%超のカプコン株を保有することが判明した。カプコンはその後の決算を底にオンラインゲームの好調などで業績が回復。13年初めに1300円台だった株価は15年夏には2倍に上昇した。両者は株の売買を繰り返した後、保有比率を5%未満に下げた。

■IRサイトから

 大株主は保有する期間や売買のタイミングなど、それぞれのクセがある。株の取引や経営への関与などが株価に影響を及ぼすことも少なくない。大株主の情報は企業の投資家向けサイトなどで入手できるため「個人投資家も投資先の情報を把握しておくべきだ」と専門家は口をそろえる。

 株主の中で影響が比較的分かりやすいのが「プロ投資家」の動向だ。例えば投資ファンドが大株主になったと伝わると、プロが株価に上昇余地があると判断したとみなされ、買いを集めやすい。逆にファンドが売却に動けば需給の悪化要因になる。

 投資ファンドが配当の積み増しや事業再編を提案することもある。ヤマダ電機は16年3月期に実質5年ぶりの増配に踏み切ったが「大株主のファンドの働きかけがあったのでは」とみる市場関係者は多い。

 プロが運用する資金は「信託口」として大株主に名を連ねるケースもある。信託口は簡単にいうと、信託銀行の名義のこと。年金基金や投資信託など「一般的には中長期の保有志向が強い投資家」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹氏)が実質的な保有者で、信託銀行の名義を借りているという訳だ。

 大和住銀投信投資顧問の門司総一郎氏は「オーナーの有無を重視すべきだ」と指摘する。特に経営者が大株主の場合、株価を意識した経営をしがちという。リーダーの意向を経営に反映しやすく、経営にスピード感がある会社も多い。楽天やファーストリテイリング、日本電産などが代表例といえる。経営者の手腕を評価するなら、積極的に手掛けやすいだろう。

 一方で創業者一族などのオーナーが経営に直接関与していないケースは少し複雑だ。平時では安定した大株主の存在が買い安心感につながりやすい。だが、創業者と経営陣が衝突すれば、株価に重荷となる。出光興産では大株主である創業家側が昭和シェル石油との合併に反対。経営の混乱が嫌気され、株価は一時、大きく下落した。

 同じオーナーでも過半の株式を保有する「親会社」では異なる傾向がある。「PER(株価収益率)といった一般的な指標でみて、株価が低い水準にとどまりやすい」(楽天証券経済研究所の窪田真之氏)。議決権行使などでほかの株主の権利が小さくなるためだ。

■個人比率も有用

 大株主の名簿だけが有用な株主情報ではない。野村インベスター・リレーションズの井田佳宏氏は「個人の保有割合に注目するのも一案」と指摘する。例えば日本マクドナルドホールディングスは個人投資家の割合が4割と高い。株主優待などを目当てに「業績が悪化しても、下値で買いが入りやすい」特徴がある。

 既に保有している株については短期的な株主の変化にも気をつけたい。企業のサイトなどで調べられる株主の情報は半期決算ごとといった更新が多いが、実際の株主の状況は毎日変化しているためだ。最新の情報の手掛かりになるのは「大量保有報告書」だ。

 大量保有報告書は、新たに誰かが5%を超える株式を保有したり、その株主が持ち分を変化させた場合などに提出が義務付けられている。金融庁の電子開示システムで閲覧できるほか、株価に影響を与える可能性がある内容については報道されることも多い。

 企業の株主の組み合わせは様々で、株価への影響は単純ではない。だが、あらかじめ特徴を把握しておけば、株価が大きく動くような事態に適切な判断ができる。平時にこそ、目当ての企業の情報を確認しておきたい。(真鍋和也)

[日本経済新聞朝刊2016年11月26日付]

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